うんちの発起人と畳み人
ワールドカップに先駆け、6月26日のお披露目会で見事なゴールを放ったUN_CHAプロジェクト。
前田デザイン室のピッチで声を張り上げ、盛り上げ役に徹した小田垣鈴鹿リーダー。絶妙なメンバー編成と守備でチームを勝利に導いた重光風歌マネージャー。大活躍したお2人へのヒーローインタビューで明らかになったさらなる裏話を谷下がレポートします!
前回のお話はこちらから。
正反対の2人のリーダー誕生秘話
まれに見ぬ盛り上がりを見せたUN_CHAプロジェクト。
その裏には、笑いに命をかけた「愛されリーダー」と戦略的にプロジェクトを編み上げた「天才マネージャー」の存在が。UN_CHAを語るうえで欠かせないこの2人。どのようにして、誕生したのでしょうか。
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谷下:鈴鹿さんがリーダーになった経緯を教えていただけますか?うんちへの熱い想いを、と室長に直訴(笑)されたと聞いております。
鈴鹿:ZOOMの座談会で「ブランド人になろう」って話しをしてた時に、前田さんが「コピーライティングとはうんこである」って言う話をされたんです。前田知巳さんと言うコピーライターさんの講座を受けた時、その言葉がとても衝撃的だったって。
カレー味のうんこが出来て、そして、食べられるうんこを目指すことがコピーライトであるっていう話をされて。そこから「うんこ祭り」が始まったんです。
谷下:なかなか破壊力のある表現ですね。
鈴鹿:「うんこドリルいいよね」とか「UN高とコラボしたい」とか、そんな話をずっとしてて。すごく楽しそうで、やりたいなって思って。でも、待ってるだけだとうんこ流れちゃうかもしれないから、自分からアピールしていった方が良いだろうと。
谷下:流れる(笑)。それで、室長に直訴したと。
鈴鹿:はい、三都市交流会で、初めて会った前田さんに「うんこやりましょうよ」ってずっとアピールして。「次のプロジェクトどうしようか」って話のときにも、「うんこはどうなったんですか?」って。さらに、その場のノリだけで言ってるわけじゃないことを伝えたくて、スレにあの絵を描いて投稿したんです。
そしたら、その日のうちにプロジェクトリーダーに任命されて。
「ええっ!」となったという次第です。
谷下:ちなみに、風歌さんがマネージャー兼サブリーダーにになったのは、鈴鹿さんの熱いリクエストがあったからだとか。
鈴鹿:最初のプロジェクト会議で進め方を相談している時に、重光さんがたくさんアドバイスしてくれて。それで、前田さんと浜田さんに「誰サブリーダーにしたい?」って聞かれたときに、「し・げ・み・つ・さんです…!!」って。
谷下:絞り出すように言ったわけですね(笑)。
鈴鹿:重光さんって「一番ちゃんと子供を見守ってくれる大人だ」って思って。
谷下:めっちゃ空気読んでくれるし、絶妙なタイミングで的確なアドバイスを投げてくれる方ですよね。
鈴鹿:本当に、重光さんがたくさん動いて下さって。それで私は、盛り上げ役に徹することが出来たんです。
自分が安心して楽しめる企画を作りたかった
前田デザイン室で、実はなかなかプロジェクトに飛び込めなかったという鈴鹿さん。そんな彼女は「「うんち」がテーマなら、自分もみんな楽しんで参加できるはず」と考え周囲をお祭り状態に盛り上げていきます。
自然の流れで決まったと思われていた「うんち」の裏には、こんなにも熱い想いと優しさが隠されていたのです。
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谷下:「うんち」にこだわった理由って何かあります?
鈴鹿: その頃、ちょうど前田デザイン室に入ったばかりだったんです。
実を言うと、クリエイターとして入ったものの、その時あったプロジェクトは、私的にちょっと敷居が高い感じがして。でも「うんち」がテーマだったら参加しやすいな、と思ったんです。
もし、私と同じようになかなか入り込めないメンバーがいたとしたら
その方たちの気持ち的なハードルも下がるかなと。
谷下:参加を促すためにメンバー向けに鈴鹿さんが作ったプロジェクトの概要表、とても楽しいデザインで。内部資料に留めておくのがもったいないくらい。
鈴鹿:「どないしたら、みんなに楽しんでもらえるやろう」「入りやすいって思ってもらえるんやろう」ってことを一番に考えていたんです。それで、一生懸命うんちのこと考えて、とにかく描きました(笑)。
谷下:そんな鈴鹿さんの想いが、前田デザイン室史上、一番盛り上がったプロジェクトを創り上げたんですね。
自走する「最高のチーム」を
このプロジェクトに関わったメンバー達が、口を揃えて言うことがあります。それは、「本当に最高のチーム」だったと言うこと。家で言う土台となる部分が、このチーム編成だと言う風歌さん。
プロジェクトの成功を左右する、最も難しい部分だったと彼女は語ります。
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谷下:今回、風歌さんがチーム編成をされたと言うことですが、普段からそのようなお仕事をされているんですか?
風歌:私はどっちかと言うと、制作進行や統括が得意でして。普段から単行本の編集者をやっているので、デザイナーさんやライターさんと一緒にお仕事することがよくあるんです。立場的に企業側にいながら、わりとモノづくりの人たちと話が合うというか。例えるならこう…コウモリみたいな感じ。
谷下:コウモリ?
風歌:イソップ童話にコウモリの物語があって。コウモリって、鳥の仲間でも獣の仲間でもない。どっちでもないんだけど、どっちの味方にもなれる。互いに争いが起きないように、上手く立ち回ることができる。
同じように、私はクリエイターでもないし、かといって普通のビジネスパーソンでもない。どっちでもないんだけど、どっちとも話が通じるんですよ。だから、その橋渡しになれる。
企業側は「クリエイターに伝わらない」、クリエイターは「企業が何を言いたいのか分からない」ってなることが結構あるから。
谷下:それで「自分が何者か」って突き詰めたときに…。
風歌:「ああ、コウモリだ」と。
谷下:それが、今回のチーム編成やマネジメントでも活かされた。
風歌:そうですね。プロジェクトに関しても「この人はここまでできる」って言うのを結構読むので、チーム編成とか結構得意なんですよ。例えば今回のUN_CHAのWEBディレクション、シンさんにお願いしたんですけど、シンさんの仕事ぶりとか、作品とかをトータルで見て、シンさんはこういう要素があるから、こういうことを任せられる、みたいな感じで。
<ちなみに、WEBチームではこのような仕組みも作っています>
谷下:自分の限界のちょっと上くらいに挑戦するのが、一番アドレナリン出るって言いますもんね。
風歌:そうそう。だからこれはできるはずとか言うのを、UN_CHAのスケジュール見ながらシンさんにお願いした場合こうでこうでこうでって考える。
谷下:ええ、そこまで考えて…?なんかもう私の想像の域を超えてる…。
風歌:今回のUN_CHAのプロジェクトって言うのは、そこが一番難しい。やるよりも。でもいったん完璧にメンバーがはまると、勝手にチームが自走し始めるんですよ。みんな自分で考えて動ける人達だから。それからは、私一切触ってないです。
最後の入稿だけ、かなりの業務量だったので、様子見ながら作業を単純化してチームにおろしたりとか、そういうのはありましたけど。
本当に良いチームで。パッと「じゃあ、これやります」「これやります」って。私の合いの手も入れやすかったし、やり取りとかもすごい痛快な感じで。みんなで仕事しながら「気持ちい~」って(笑)。
谷下:ははっ(笑)。
風歌:「息合うね~」って(笑)。
谷下:室長が「みんな嫉妬するくらい仲が良い」っておっしゃられてましたけど、そういうのもあって、絆が深まっていったんですね。
初めてのプロジェクト、こんな苦労も
「どうすればガチャガチャって作れるの?」からスタートしたこのプロジェクト。未知のプロジェクトを切り開き、畳んでいく過程ではこんな苦労があったようです。
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風歌:実は最初、何をやっていいのかよく分からなかったんですよ。全体が見えなくて。みんなそういう、缶バッチとか作ったことないし、って言うので。
谷下:ああ、全部初めてだったんですね。
風歌:だけど徐々に決められるとこはもう強制的に決めていくしかないって。それで「まず仕様を決めよう」と。これはもう機械だと。
ガチャガチャの機械の情報をとにかく集めて。とにかく室長に見てもらって。で、絞ってもらったんですよ。それで、「ガチャコップLしかないだろう」ってなった。
機械の選定って縛りが多くて結構大変なんです。予算もあるし、何が出来る出来ないとか、この玉しか入らないとか。これが良いって決めたものの、次は入手が大変で。「入荷待ち」「品切れ」とか。
谷下:ああ、昔ながらのレトロなやつだから、あまり出回ってなかったのか。
風歌:でも、これ放置して入手できなかったら、このプロジェクト自体が破綻するなと。早々に問い合わせの電話をしたら「はい、1台だけありました」って。
谷下:おおーっ。
風歌:で、相手のお姉さんに「どうしますか?これ、売れちゃうかもしれないです」って言われて。「じゃあ押さえて下さい!」って。その場でもう「買うんで押さえて下さい!」って伝えた。そしたら次は、「アタッチメントないから使えません」て言われてびっくりして。
谷下:アタッチメントって1個買ったら終わりなんですか?
風歌:1個買って機械の下にはめ込むんだけど、それが故障の原因になることもあるらしくて、積極的には売られてなくて。見つけるの大変だったみたい。
谷下:で、そのお姉さんが倉庫で探してきてくれた。
風歌:そうそう、お姉さんが見つけてきてくれて、社内で掛け合ってくれて。それで送ってもらったんです。
谷下:ほんと、大変でしたね。そのお姉さんにも感謝ですね。
風歌:その後も、送ってもらう段階ですったもんだあって。結構ヒヤヒヤしましたね。でも、本当に間に合ってよかった。
谷下:鈴鹿さんは、初めてのリーダーどうでしたか?
鈴鹿:プロジェクトをやった経験とかも全くない状態だったので、自信なくて。知識不足やぁ!って思って。最初から最後まで結構凹んでましたね。
でも、これだけ周りの方が動いて下さって。重光さんがそうやってまとめて下さって。ホントにみなさん。優しくて、仲良くて。
私はとにかく盛り上げようって。
谷下:正直、カラ元気だしたこともありますか?
鈴鹿:ないです!
谷下:凹むこともあったけど、普通にずっと楽しかった?
鈴鹿:うんちに絡めようとした瞬間、何かが降りてくるんですよね(笑)。
だから、ほんとうんこ元気るわぁ~って(笑)。
谷下:盛り上げ役として、大成功じゃないですか。
鈴鹿:次のプロジェクトでも、ふざけ役っていうのぜひ担当したいですね。
谷下:おお!期待してます!
リーダー達のイチオシUN_CHA
全部で105個集まった今回のUN_CHAたち。
気になる2人の注目作品は…?
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風歌:絵本風の、踏まれるやつが好きでしたね。ちょっと絵本作家のせなけいこさんみたいな。あと、薬用うんち。漢方みたいな。
<佐藤祐亮さん作「Don’t step on me !!」>
<水上肇子さん作「毎日快便」>
鈴鹿:全部良いですよね。もうどれって言われたら…そうだな、特に粘土で作ってくれたのは感動しましたね。田中優里さんのやつ。
<田中優里さん作「ウンスタ映え」>
谷下:え、これ手作りだったんですか??
鈴鹿:これ、リアル作品なんですよ。コメント欄に「粘土捏ねるの楽しかったです」って書いてあって、「本物なのーーーーーーっ!?!?」って(笑)。「この熱意は凄いっ!!!」って、一番思いました(笑)。
みんなこれは可愛いで済ませちゃだめだよって。この愛は。
谷下:ほんと、鈴鹿さんからは全ての作品への愛が伝わってきますね。鈴鹿さん自身も、みんなから愛されるわけだ。
まだWEBガチャのリリースも控えてますし、盛り上げリーダーとして、引き続き活躍を期待しています!
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聞き手、テキスト、編集
タニシタユカ
編集長
浜田綾
バナー画像
前田高志
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