プロジェクトを自走させた「うんち」の力
「永遠の童心」をクリエイティブテーマとする前田デザイン室。異彩を放つクリエイターたちが今回芽吹かせた“アイディアの種”はなんと…。「うんちのガチャガチャ」その名も「UN_CHA」!!
プロ達が本気で「うんち」をアートするとこうなる!
アートボードに持てる全てを出し切った大人達。春風と共に巻き起こった「うんち」缶バッジガチャプロジェクトの舞台裏を私、谷下がお届けします。
すべてはアトリエから始まった
4月7日、深夜のアトリエ(ZOOM)雑談。
そこでは、最先端クリエイター集団の熱い議論が交わされていたという。
当日のいきさつを詳しく覚えている人はいない。
手がかりは、GOくんが残したメモのみ。
「ポートフォリオ」に「ブランド人」。新鋭クリエイターらしい熱量が伝わるメモだ。しかし注目すべきは右半分。
「丸いうんこ」「一周まわる」「人間のうんこ」「うんこ話」
なぜ、今をときめく高校生クリエイターGOくんのメモにこんなに「うんこ」の文字が…。そもそも、なぜ「うんこ」なのか。
ここからどうやってUN_CHAプロジェクトは生まれたのだろう。
前田室長と同席していた運営の浜田さんに、話を聞いてみた。
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UN_CHAプロジェクト誕生のきっかけ
谷下:「うんち」がテーマのプロジェクトってすごく面白いなって思ったんですけど、これはどうやって決まったんですか?
前田:僕と親睦を図ろうってZOOMで雑談してた時かな。そこで、「うんちのグラフィック作るのどう?」って話になって。
そこは、ただ盛り上がっただけで終わって。
で、次のクリエイター企画会議で、ガチャガチャ作りたいって話になった気がする。
コストのこと考えると、ガチャガチャの中身は缶バッチがいいなって。
それで絵とかデザインで、色んな種類が出て来たら良いなと思ってね。
で、最終的に「あ、うんち言うてたよな」って思い出して、自然と「うんち」になっていった。
ちょうどその頃、前田デザイン室のオフ会として東京で焼き印パーティ(懇親会)をしたことがあって。そこにCAMPFIREの前田デザイン室を担当してくれている村田さんも来てくれていたの。で、村田さんに、「CAMPFIREにはコミュニティで作ったものを展示出来ますんで、また何かあったら言ってくださいね」って言ってくれていて、その情報もミックスされたのかなぁ。
ガチャガチャ作ってCAMPFIREにおいて、しかもそれが「うんち」っていうテーマで、みんなの作品集みたいになればいいな、と思って。それで、「うんちガチャ」っていうのが出来ていった。一気に出来て行ったんじゃなくて、色んな情報を足して出来て行ったって感じ。
「安全・安心」が担保された「うんち」の成長
こうしてスレ立てからわずか2カ月弱でコメント1000件を突破したUN_CHAプロジェクト。
この異常な盛り上がりは、なぜ起こり得たのだろう。
生き物のごとく膨らみ始めたプロジェクト。
「うんち」というテーマが秘めた力について、前田室長はこう話す。
前田:前にコルクの佐渡島庸平さんに会った時に、「うんち」ってテーマのプロジェクトと、「ダサT」っていうのを今やっていて、みんな凄い盛り上がってやってるんですって話をしたの。そしたら佐渡島さんが「「うんち」と「ダサT」は安全・安心を確保してますね」って言ってくれてね。
佐渡島さんの『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』という 本にも書いてる「コミュニティは安全・安心を確保すると自走する」ってやつ。太鼓判を押してもらったって感じやね。
谷下:「うんち」がテーマだと、みんながハードル低くて入りやすいっていうことですかね?絵に自信がなくても。
前田:あー、そうそう。みんな参加できるしね。
浜田:めちゃめちゃ盛り上がりましたよね、どっちも。
前田:うん、びっくりするくらいめちゃめちゃ盛り上がった。
浜田:コミュニティの運営という立場上、スレッドの動きは毎日見ているので、「こんなに書き込みあったっけ!?今まで!?」って驚きました(笑)ばばばばばばーって投稿もコメントもすごい増えるんです。「みんな好きやなー、うんちばっかり描いてる。面白いなぁ。」と感じました(笑)
谷下:今回のプロジェクトは、どんぴしゃでみんなを巻き込めるようなテーマだったんですね。
前田:うん。たまたまね。最初からみんなが参加できやすいようにっていう考えでは、発想してないかな。前田デザイン室の「永遠の童心」ってテーマも、「うんち」が決まった後から出て来たからね。
『結局僕らが今やろうとしてることって「永遠の童心」だよね』って後から言語化されて。やっぱなんかあったんだよね、こういうちょっとバカっぽいことをやっていきたいって言うのは。
谷下:前田さん、うんちのデザイン募集するときに「ライターだったら言葉で、税理士だったら数字で表現してください」って言うコメント書いてくれてたじゃないですか。「あなたの特技でやってください」って。あの言葉、私はかなりの「安心・安全」を感じることが出来たんですよね。
前田:前田デザイン室には、こんなに幅広いクリエイターがいるんだぞっていうのを見せたかったんだよね。ドラえもん展みたいな感じで。色んなクリエイターが作る「アート展」「クリエイター図巻」にしたかった。
谷下:それもあってものすごい勢いでアイディア出てきましたよね。室長として特にハンドリングとかは意識しなかったですか?
前田:してないね。一応ポイントで「これはアート展なんだよ」って言うのを伝えただけで、あとは何かもう勝手に動いてるって感じだったよね。
「クリエイター畳み力」でチームをまとめた2人の存在
小さい頃、誰もが持っていた「童心」に再び火を付けることで、「自走するコミュニティ」を見事に体現したUN_CHA。
「安心・安全」を確保したことで拡大し続けたこのプロジェクトの裏には
、初めての挑戦に果敢に挑んだプロジェクトリーダーと裏方としてチームを支えるプロジェクトマネージャーの存在があった。
谷下:今回、UN_CHAのスレ自体がすごいドラマチックに思えてきて。
浜田:うん、ドラマチックだよね!ドキュメンタリーみたいんなってる。
谷下:例えばガチャガチャマシーンの発注一つとっても、ものすごい議論を重ねているんですよね。これだけでも何かストーリー1個何か作れるんじゃないかって。
浜田:そうそう、前田さんはああいう流れを見ていて、どう感じましたか?
前田:いや、みんな凄いなーって。すずかちゃんとか、初めてのプロジェクトリーダーに挑戦してくれたりしてね。もうそれだけで嬉しいもん。
谷下:緊張しているすずかさんに前田さん、「実践でゆっくり成長していったらいいから」ってコメントされてましたよね。
前田:ほんとにそう思うから。「やりたいです!」って手をあげる時点ですごいことなんだよ。彼女は大阪のオフ会で話をした時に、このプロジェクトのリーダーやってくれるって言ったんだけど、最初はぼくが声をかけたのかな。なんで声をかけたかっていうと、そのオフ会の数日前に前田デザイン室の「らくがきスレッド」というところにこういう投稿をしてくれていてね。
ものすごい熱意を感じたから!
谷下:すずかさん、プロジェクトリーダーをやるのは初めてだったとのことでしたね。
前田:そうやねー。いきなり大物って言うか、大きなプロジェクトやったもんね。これって大きな経験になったと思う。プロジェクトマネージャーやってくれた重光さんが知識豊富やから、その辺も勉強になったんじゃないかな。
谷下:ほんと、物を作るってデザインするだけじゃないんだなって今回思いました。ガチャガチャマシーンのPOP入れる部分のサイズを巻き尺持って行って測ったりとか、ガチャガチャのボールが何cmだから入るとか入らないとかって。
前田:そうそうそう。
谷下:クリエイターって絵描くだけじゃないんだなって、私自身スレッドを見ていて勉強になりました。
前田:うん、まさに。やっぱ印刷会社の交渉とかぼくもやってたもんね。紙をこうするとか、大きさをこうしたら面付けがどうかとか。あ、面付けっていうのは、紙を効率的に使うためのデータ作りのことなんだけどね。
浜田:あー、なるほど。「クリエイター畳み力」ですね。
前田:そうそう。それもクリエイターに必要な力。プロジェクト通してそういうのも経験できるから良いよね。
谷下:まさに経験ですよね。私、全然知らない世界だったんで、「ああ、そうなんや」って思いました。(重光)風歌さんが、「自分は裏方仕事しかしてない」て言うておられたけど、それがあってこそ、デザインが世に出るんですよね。
前田:ほんとそう。ただぼくとしては、デザイナーにもそういう経験してもらいたいね。若いデザイナーは特に。デザイン変わってくるしね。仕様がどうとかで。紙がこうとか。
データ上だけで考えてるとやっぱり、考え方の幅が狭くなったりするから。「この紙だからこのデザイン」とかも出てくるしね。
前田室長イチオシうんち
最後にみんなが気になる、前田室長が印象に残ったうんちを聞いてみました。
谷下:前田さん的に、特に「これいいな」って思ったうんちはありますか
前田:ああ、めっちゃ覚えてんのが、えっと、水上さんのレトロなやつと、
片山由貴ちゃんのシュクベンのやつ。ばちっと、「こんなかっこよくなるねんや」って。
浜田:あーシュクベン!あれ、めっちゃかっこいい!おもしろ系もいいんだけど、ああいうかっこいいのいいですね。
前田:うん。ほんといいのばっかりやったね。もう半永久的にやってもいいかも。(笑)
浜田:もう、年1回うんち祭りみたいな(笑)!
前田:もっとあるかもしれんしね。「おっぱい」とかいいかもしれんし。「お尻」とか。
<ちなみに先ほど話に登場したプロジェクトリーダーすずかちゃんからは、こんなイラレの裏技も>
谷下:(笑)今後、UN_CHAの発展形とか、新しいものとかがまた生まれてくるかもしれませんね。そういう動きもあるようですし。メンバー同士でどんな化学反応が起こるか、楽しみです。
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さて次回はUN_CHAのプロジェクトリーダーの小田垣鈴鹿さんと、プロジェクトマネージャーの重光風歌にお話を伺いたいと思います。
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聞き手、テキスト、編集
タニシタユカ
編集長
浜田綾
バナー画像
前田高志
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