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前デが銭湯に、鏡広告を出してみた!


皆さんは、「鏡広告」というものをご存じですか?

鏡!?
広告!?

この言葉になじみのない方には、ひと言ではイメージしづらいかもしれません。

鏡広告(かがみこうこく)とは、こんなものです。

銭湯の浴室や脱衣所の壁面の鏡に貼られた広告のことです。

一見、昭和レトロ感のある広告ですが、ここ数年、テレビやネットなどのメディアで取り上げられ、注目を集めています。

2019年には、インターネット広告費がテレビ広告費を抜くというニュースが話題になりましたが、近年、インターネット広告の勢いが増してきていることは、皆さんも身近に感じておられることではないでしょうか。

こんな時代に、なぜ、手書きで手作りされた広告が注目されているのでしょうか?

これに着目した前田デザイン室の前田高志 室長は、私たち前田デザイン室のメンバーに、鏡広告を出してみよう!と呼びかけました。
すると…

銭湯マニアとしては、そそられる企画です!
行きたいお風呂が増えた!

などなど、様々な反応があり、すぐに鏡広告の制作プロジェクトがスタートすることになりました。

このレポートでは、プロジェクトのスタートから、鏡広告を銭湯に設置するゴールまでの約9か月にわたる道のりを、全三回に分けてお届けします。

それでは第一回のレポート、スタートです!




すべては、千鳥温泉さんから始まった!


前田室長は、「これは、おもしろそう!」と思ったら、すぐに動きます。

鏡広告制作について、前田デザイン室のメンバーに、さっそく「この指と~まれ!」と呼びかけました。


前田室長が広告枠を買ったという銭湯は、大阪市此花区にある千鳥温泉さんです。そして、この広告募集を仕掛けた方こそ、千鳥温泉の店主 桂秀明さんです。

かつて大手企業に勤める会社員だった桂さんは、昔から馴染みのある千鳥温泉に継ぎ手がないため、このままではなくなるかもしれないことを知ると、脱サラして経営を受け継がれました。

こんな大きな覚悟を必要とする決断ができる方は、なかなかおられないのではないでしょうか。

銭湯の経営経験ゼロからスタートされた桂さんは、独自のアイデアとSNSなどを積極的に活用することにより、昭和風情が漂う歴史ある千鳥温泉と鏡広告を、メディアから注目されるまでに盛り上げてこられました。

伝統的でアナログな鏡広告を、インターネットの力を起点にして、これまでの状況から少しずつ変えてこられたのです。これは、インターネット広告と既存の広告が連携できる、一つの形を示されたのではないでしょうか。

落ち着いた印象の口調で話される桂さんの言葉からは、千鳥温泉と銭湯を、盛り上げていきたい!という気持ちが伝わってきます。

こんな千鳥温泉と桂さんに、前田デザイン室(以降:前デ)がどうやってコラボレーションできるのか? 前デ内では、かつてない経験へのワクワク感が高まってきます。



10日で16案!? 前デの妄想が炸裂する!


2020年12月28日、暮れの押し迫った日に前田室長が呼びかけてから、年をまたいで約10日程度で、鏡広告の案出しが締め切られました。

世間がお正月気分のまっただ中に、多くの案が集まりました!


どーーーん!


どーーーん!


どーーーん!
広告案だけでなく、キャッチコピーだけでも、全然オッケーです。

キャッチコピーを含めたデザイン案が15点、キャッチコピーやアイデア出しのみの案を含めると、30案以上のアイデアが集まりました!

勢いがスゴ過ぎるといいますか……

前デのみんな、正月から何やってんの!
ちゃんと休んでたの!?

……と、心配しちゃいそうなぐらいの勢いでアイデアが集まりました。



広告案が決定!
だが、ここからが終わりなき旅!?


集まった多くの案の中から選ばれたのは、この案でした!

広告案が決まったからと言っても、まったく安心できません。
ここから広告の最終原稿を千鳥温泉さんに提出するまでの残り日数が、約5日ほどしかないのです。

かなり、ヤバいです!

早急に、原稿のブラッシュアップを進めねばなりません。
さっそく作業にとりかかり、作っては修正を繰り返し、また繰り返す日々が始まります。


まず、広告案をいったん形にしてみます。

いろいろ朱書きを入れて、試行錯誤が始まります。


こんな感じかな? あんな感じかな?
いろんな可能性を考えて、調整していきます。

いろいろなデザインを試して比較し、方向性を探ります。

このように幾度も検証を重ねても、前田室長と前デのメンバーには、まだ決め手が見つかりません。


すると前田室長が……


なるほど!

広告づくりに注力するあまり、前デの良さである遊び心を忘れていたのかもしれません。

ここから出てきたデザイン案がこちらです。

図中の「●」に何が入るかは、ご想像におまかせします。


あれ!?
あれれ?

これまでよりも、見た目の印象が変わってきました。


これを受けての前田室長のコメントが決め手でした。

図中の「●」に何が入るかは、ご想像におまかせします。


さらに調整してみると、このようになりました。


そして、職人さんに手書きで描いていただくイメージも見えてきました。


「童心返り…」から始まる五箇条に「発想力増大」を追加し六箇条として、こちらが決定稿となりました。


これで広告の内容は完成しました。
急ぎ、千鳥温泉さんに提出しました。



思いを託す職人さんを求めて。


広告の原稿を千鳥温泉さんに提出した後は、以下(1~3)の段取りになります。

1.提出した原稿を見本に、手書きの職人さんの手により広告が描かれる
     ↓
2.広告の仕上げ職人さんの手により仕上げを行う
     ↓
3.広告を設置する


そして、次の工程のために、千鳥温泉さんからご連絡を心待ちにしていた矢先、思いもよらぬお知らせをいただきました。


亡くなられた松井さんは、長年、鏡広告を手書きされてきた大ベテランで、前デの広告もこの方の手によって描かれる予定になっていました。

これには千鳥温泉さんは言うまでもなく、前デのメンバーにも衝撃が走り、大きなショックを受けました。


関係者一同、失意にかられた数週間後、千鳥温泉さんからご連絡をいただきました。松井さんに代わる新たな職人さんが見つかったそうです。


しかし、このような技術を求められる仕事は専門性が高いため、仕事の特徴によって職人さんの向き不向きがあるようです。


専門性が高い職人の世界では、私たちが思うように簡単に事は運びません。
本当に厳しい世界だと痛感しました。


それから1か月程度が過ぎた頃、千鳥温泉さんからご連絡をいただきました。



やったぁああああ!


いろいろ心苦しいことはありましたが、ここまでの経験があったからこそ、喜びも倍増です! ようやく前デの広告を、千鳥温泉さんに設置できるめどが立ってきました。

新たに見つかった新しい職人さんは、サインズシュウさん!
広告や看板を手がけるベテランの職人さんです。

どんな職人さんで、どんな技術を目にすることができるでしょうか?
ワクワクして、妄想もふくらんできます。


今後、このリポートは、第二回で広告づくりの現場を、第三回で広告の仕上げと設置の現場の模様をお届けします。

続きはこちら:
前デの妄想が現実に。看板職人歴35年のサインズシュウさんが広告に命を吹き込む



お知らせ その1
千鳥温泉では、2022年4月からの鏡広告を募集されているようです。気になった方は、ぜひ!

お知らせ その2
前田デザイン室では、メンバーを募集しています。遊び心のあるものづくりに興味がある方は、こちらからお待ちしております。




テキスト: 中本宏樹浅生秀明
編集: 浅生秀明浜田綾
撮影: 前田高志
レタッチ: 只野千尋
バナーデザイン: 小野幸裕

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