「僕だからできるロゴデザイン」に辿り着くまで。さとうコージィ×前田高志 対談レポート
こんばんわ。前田デザイン室28期のせいこです。
今回は3月に行われた、さとうコージィさんをお招きしてのオンライン定例会レポートをお届けします!
さとうコージィさん
宝塚造形芸術大学(現:宝塚大学)ビジュアルデザインコース卒業後、広告代理店勤務を経て2001年1月にコージィデザインスタジオ設立。
2015年1月に株式会社コージィデザインとして法人化。
企業のCI/VI、店舗や商品のロゴ・ブランディングの分野が専門。
主な仕事にソフマップVI、オリコンVI、滋賀医科大学VIなど。
共著書に「ロゴデザインの現場(MdN)」「デザインのプロセス(MdN)」。
ロゴデザインに関するセミナーや、企業での講演なども行う。
大阪芸術大学 非常勤講師/大阪芸術大学短期大学部 客員准教授。
twitter: @cosydesign
コージィさんがロゴデザイン専門にシフトされたきっかけから、デザイナーとしてご自身を高めてこられた方法まで、成長したいデザイナー必聴のお話をたくさんお聞きできました。
前田デザイン室の室長である、前田高志(以下前田さん)との対談の様子の一部をお届けします。
「僕じゃなくてもできる仕事」より「僕だからできる仕事」へ
前田さん:コージィさんといえば「ロゴデザインの人」の印象です。なぜロゴデザインにシフトしていったんですか?
コージィさん:僕は今JAGDA(※)に所属しているわけですが、そこに入るきっかけとなったのは、あるデザイナーさんのホームページを見た時に感じたことなんです。その方の実績には、ロゴもあるし、ポスターもあるし、ショップやバーのデザインもありました。一方で僕はPOPや販促物のデザインばかりだなと。
(※公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会)
「そもそもグラフィックデザイナーを目指した時にやりたかったことはなんだったっけ?このままだとちょっと違うな」という気がしてきたんです。
元々、グラフィックデザイナーという職業を知ったのも、あるロゴのデザインを見たことがきっかけでした。
それから、大学四年生の時に、宝塚の市制40周年のロゴを公募していて、応募したらグランプリを獲れたんです。
宝塚歌劇の式典に来た人が、みんな僕のデザインのしたロゴが入ったショッパーをぶら下げているのを見ました。
デザインしたものがたくさん量産されて出回るという状況を、大学四年生の時に体験したんですよね。
それがすごく嬉しかった。
(画像はコージィさんのHPからお借りしました)
前田さん:原体験があったんですね。
コージィさん:ロゴが好きだなというのは薄々思っていたけど、実際入った仕事ではロゴデザインはありませんでした。
JAGDAに入る前くらいのタイミングで、もっとロゴの仕事を広げていきたいなと思うようになりました。
前田さん:デザイナーになったきっかけに立ち戻れたんですね。
コージィさん:はい。独立して最初のころは、印刷物をデザインさせてもらう機会が多くて。
パンフレットをデザインすることは嫌いではないけど、僕じゃなくてもできる人がいっぱいいそうでした。
だったら、パンフレットに載ってる、商品パッケージの方のデザインや、ロゴを作れる人になりたいなと。
ロゴは長く使ってもらえて、いろんな所に展開されて、いろんな人に使ってもらえる。
それってすごいなと思うようになっていたんです。
前田さん:ロゴの仕事を増やすのは、ガラッとかえたんですか?徐々にシフトしていったんですか??
コージィさん:ガラッとですね。
JAGDAのポスター展に誘われて、仕事の合間中ずっとポスターをつくっていたんですけど、四六時中にらめっこしていても大してどこが良くなったかわからないレベルで作業していて。
それを見ていた妻が「またポスターやってるの?あなたはそういうデザインをするタイプじゃないでしょ」と言うわけですよ。
「そういうのに首突っ込んでないで自分が得意なもの一本に決めたら」って。
前田さん:めちゃくちゃいい奥さんですね。
コージィさん:ずっとやっていて楽しいのはロゴかな、それで食べていけるならめっちゃいいけどな。だったらロゴに絞ってみようか。というのが元々のきっかけです。
本来やりたかったこと、ご自身の原体験、そして奥様の一言から、ロゴデザインに絞る!と決断されたという素敵なお話をお聞きしました。
続いて、印象に残った、デザイナーとしてのモチベーションの上げ方や成長の仕方のお話をご紹介します。
OKレベルを引き上げる
コージィさん:タイポグラフィー年鑑に応募して、最初の2年、落ちたんです。悔しいけど、落選したときの年鑑を15000円出して買うわけです。
今までだったら「これくらいやったら俺でも入選するんちゃうかな」という見方をしていたんですけど、それらに負けているという現実があるので、見方が変わってくる。
掲載されているデザインにはあって、僕に足りていないものって何だろうという見方をすると色んな発見がありました。
そこから入ってくる仕事は、来年応募できるものにしたいと思って、「ここで完成した」と思う合格ラインをどんどん引き上げていくようにしました。
今までだったらここでやめていたけど、このまま年鑑に出した時に果たして通るのか?と自問自答する。
完成したと思ってから、どれだけ粘れるかを毎回やるようにしました。
そうしたら、その年、1個入選したんです。
それがJAGDAとタイポグラフィー年鑑と同じものが両方通ったんです。めちゃくちゃ嬉しくて。
前田さん:やっぱりいいものは両方通るんですね。
コージィさん:JAGDA年鑑をめくると、僕の作品が、佐藤可士和さんと、佐藤卓さんに、はさまれているんです。
50音順に並んでいたからなんですけどね。
前田さん:あ~!めちゃくちゃ熱いですね!!
コージィさん:こういうところに載るのは楽しいし気持ちいいな。来年も頑張ろう。できれば大きく載りたい、みたいな感じでモチベーションを上げていました。
前田さん:モチベーションを協会のコンペにするってめっちゃいいですね。
特に一人でやっていると、目標がないとしんどくなっていっちゃうから。
今ってそういう空気が薄まってる気がする。
この後、ADCの審査会の話や、デザイナー集団「D+」のお話など、コージィさんが周りのデザイナーと競いながらご自身を高めてこられたお話をお聞きしました。
前田さん曰く「幕末みたい」な、熱いお話でした!!
最後に、コージィさんの専門であるロゴデザインのお話をご紹介します。
ロゴデザインの高め方
前田さん:文字の書体設計をどうやって勉強されていったのかを聞きたいです。
コージィさん:文字の錯視を調整していくのは、ソフマップさんの仕事の中で試行錯誤した経験が大きいです。
(画像はコージィさんのHPからお借りしました)
「フ」という文字は直線があってそこからカーブになっているんです。
角からいきなりカーブにするのは難しくないんですけど、いったん直線を残したうえで柔らかくカーブさせる形にしたくて。
それが「どうしてもカーブが外側に膨らんで見える」という意見がソフマップさんの販促部の方の中から意見が出てきたんです。
前田さん:へ~すごいですね!ソフマップさん。
コージィさん:ソフマップさんも、企業のロゴだから、本当にこれでいいのかと、気になったことを細かいことでもいいから上げなさい、ということをやっていたと思うんです。
「角がふくらんでみえる」とか「フだけが右によって見える」とか、感じたことを全部言ってもらっていました。
実際のデータ上はそろっているから錯視なんですが、そう見えるのはなんでだろうということにすごく悩みました。
コージィさん:そこで当時好きだったNECのロゴを参考にしました。
同じようなブルーで、曲線と直線の融合が綺麗。
硬い企業なのにおおらかさを感じる、ゆったりどっしりした感じはどうやったら出るんだろうということをずっと思っていました。
NECのロゴをひたすら細かいところまで研究した結果、Eの下の横線が直線ではなく少し曲線になっていることに気付いたんです。
僕の中ではこれは大発見でした。
そんな感じで、ちょっとしたことで変わることをソフマップさんの仕事で学びました。
そこから、気にして大手の企業ロゴを分析すると、気が付かないようなちょっとした調整をされていることに気付くようになりました。
ロゴをデザインするうえで完成度を高めるために意識していることが、コージィさんのTwitterでも紹介されています。↓
★「ロゴデザインのクオリティをグッと高める、ブラッシュアップのコツ」まとめ
https://twitter.com/i/events/1249853946148966400
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これまでの積み重ねや自己研鑽、情報発信力、細部へのこだわり…
すごいお話をたくさんお聞きできました。
定例会後のTwitterでも熱い感想が!
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本当にいいお話をたくさんお聞かせいただいて、レポートに書ききれず、グラレコも描いてみました。よかったらこちらもご覧ください~!
(およその時間も書いたのでアーカイブ視聴される方は参考にどうぞ!)
また、レポートではご紹介しきれませんでしたが、コージィさんが常にGIVEの精神で、ご自身の知見や情報を全出ししてくださっている姿勢に、なんてすごいんだぁぁ!!!と感銘を受けました。
(コージィさんのイベント前のツイート。素敵すぎやしませんか!涙)
本当に惜しみなくたくさんお話してくださり、ありがとうございました!!
コージィさんの共著「ロゴデザインの現場」はこちら。
前田デザイン室のメンバーは、定例会のアーカイブも見れますよ~。
レポートに書ききれなかったお話もぜひ視聴していただきたいです。
気になる方はぜひ前田デザイン室をのぞいてみてくださいね。