「漫画はひとりで描くものじゃねぇ!」漫画家あんじゅ先生×デザイナー前田高志 オンラインサロンオーナー対談
2024年1月14日、マエデ(前田デザイン室)1月定例会が大阪で開催されました。
ゲストは漫画家であり、オンラインサロン「あんマンサロン(あんじゅ先生マンガ家サロン)」のオーナーであるあんじゅ先生です!
今回のイベントでは、同じくオンラインサロンのオーナーである「マエデ」の前田高志室長と「それでも、オンラインサロンを続ける理由」をテーマに対談いただきました。
漫画『バクマン』を読んで
前田高志 室長(以下、前田)
今日のゲストはあんじゅ先生です!
会場
(伯手)
前田
ようやく出てくれましたね(笑)
あんじゅ先生
満を持してね!
前田
(ゲストとして)ずっと頭の中にあんじゅ先生がいて。だって、僕たちの出会いが2018年(9月)のCAMPFIRE コミュフェス。あれがもう6年前ぐらい。
その時はまだ、あんマンサロンを始めてなかった?
あんじゅ先生
そう。始めたのは2018年11月から。
前田
そもそもなんでオンラインサロンを始めたの?
あんじゅ先生
色々あるんですけど、そのころ『フリーランス税本』という本に掲載する漫画を描いてたんですよ。
前田
めちゃくちゃ売れてるやつ!
あんじゅ先生
27万部突破してるんですけど、当時はこんなに売れるとは思ってなかったんですよ。
(著者の)大河内さんと編集さんとアシスタントさんと私の4人で作っていて、もう本当に毎日毎日連絡を取り合って…。それで思ったのが、漫画ってひとりで描くものじゃないんだってこと。それまではずっとひとりで描いてたけど、今回4人で書いて、友達と一緒に描くのって面白いなと思って。
ちょうどその時、漫画の『バクマン』を読んでたんです。
前田
漫画の。うんうん!
あんじゅ先生
『バクマン』ってご存知の方も多いと思いますが、漫画家を描いた漫画で。アイデアを出したら500円、 採用されたら1000円、みたいなシーンがあって。それを読んで、「やっぱり漫画はひとりで描くものじゃねぇ!」「コミュニティを作ろう」と。
前田
『バクマン』の影響なのね。
あんじゅ先生
それと、編集者の目線で漫画家を集めるんじゃなくて、友達感覚でいっぱい人が集まる、情報が集まるような場所がいいんじゃないと思って。当時はそういうオンラインサロンがなかったので。
前田
なるほど!それで作ったのが…。
あんじゅ先生
そう、それが「あんマンサロン(あんじゅ先生漫画サロン)」
前田
マエデ(前田デザイン室)の場合は、僕がもともと箕輪編集室(幻冬舎の編集者 箕輪厚介氏が主宰するサロン)に所属していて。箕輪さんやメンバーの誰かが作りたいものや依頼されたものを僕がパッと作って、見せて、褒められるっていうレスポンスが気持ちよくて楽しくて。
あんじゅ先生
うんうん。
前田
で、箕輪編集室の中でガンガン行動した後、箕輪さんに「自分のコミュニティを作ってもいいですか?」って聞いたら、「いいよ」って言ってくださったのでマエデを作りました。
あんじゅ先生
へー!
前田
僕もひとりじゃ何もできないから。アイデアを思いついても、形にできないっていう。土日もゲームとか映画とか漫画とか見て過ごして、夜、自己嫌悪するみたいな。
あんじゅ先生
(笑)
前田
「あ、もう10時や!なんもやってねえわ……」みたいな。よくあるじゃん、悶々としていて。そういうのを解消できる場所がほしくて。みんなと一緒だったら作れたのよ。
あんじゅ先生
自分ひとりじゃできないから人を集めて作ったと。
前田
そうそう。それで今、6年ぐらいになるんだけど、ずっと自分のやりたいこと、変なことをやってるっていう(笑)。それが「マエデ(前田デザイン室)」
ここでしかできないことが明確にある
前田
あんじゅ先生がオンラインサロンを続ける理由はなんですか?
あんじゅ先生
理由は2つあるんですよ。
1つはビジネス面で、ニーズがあるから。
前田
必要とされてるってこと? あんじゅ先生が。
あんじゅ先生
そう、あんマンサロンに入ってよかった!っていう声がある。
それから、YouTubeとか、インスタライブ、X(Twitter)とかSNSのコンテンツは色々ありますけど、そこでできないことっていうのが、オンラインサロンにあるような気がして。
前田
ああ!
あんじゅ先生
みんなで企画して一緒に何かやったりとか。私は3ヶ月に1回ぐらい、1対1のZoomの面談をやっていて。それって普通のインスタライブではできないので。
前田
もう本当に1対1でやるんだ。
あんじゅ先生
そう! オンラインサロンでしかできないことが明確にある。
一人一人の成長というのか、友人ががんばってる姿って素敵じゃないですか。そういうのを見られるのがすごくいいと思うし。
もう1つの理由は私の個人的な想いから。
クリエイターって、前田さんも言ってましたけど、ひとりなんですよ。基本的に孤独だから、シェアオフィスみたいな場所にも行くんですけども、結局、 一生懸命がんばってくれる仲間とか友達っていないなって感じることがすごくあって。
前田
うんうん。
あんじゅ先生
それで、あんマンサロンも最初は"漫画家のための"という括りでやってましたけど、今は動画編集される方とか、小説を書かれる方とか、クリエイティブをやる・やらないに関係なくたくさんの人が(あんマンサロンに)集まってくれて。
前田
あ、漫画家だけじゃないんだ?
あんじゅ先生
漫画家だけではなくなってきました。漫画家を支えたいみたいな人も現れて、どんどん居場所というか、そういったものがすごく広がって。寂しさを埋めてくれる、すごく素敵な空間になったなと。
あんじゅ先生
前田さんがオンラインサロンを続ける理由は?
前田
だいたい一緒かな。ニーズがあって、声や感想がうれしいというのは共通していて。それと、僕は自分が作りたいものを作って、知ってもらえるっていうのが人生の一番の喜びで。
あんじゅ先生
うんうん。
前田
仕事じゃなくて、依頼されたものでもなくて、自分たちで尖った変なものを作ってそれを知ってもらえる。反応をもらうことができるってのはもうマエデしかない。
あと、僕は代表作を作りたいという想いがずっとあって。今のところ、マエデというコミュニティ自体が一番の代表作になっているかな。
あんじゅ先生
(あんマンサロンとマエデとで)一つ違うところは、あんマンサロンは個人主義で、個人個人がやりたいことをやればいいみたいな。
前田
個が立っているってことね。
あんじゅ先生
そう。マエデの場合は、チームで一つのものを作っているというか…。なんか面白いですよね! 同じクリエイターのオンラインサロンですけど全く違う方向に行っている。
前田
確かに!(笑)
フリーランス1年目の人でも
前田
オンラインサロンの運営ってコスパ悪いよね、計算したら。
あんじゅ先生
あんマンサロンは今150人ぐらいメンバーがいるので、コスパ悪いとは全く思わないけど、じゃあ会員が1人・2人だったら? 100人でも1人でも、 同じ労力かけないといけないっていうのがオンラインサロンだと私は思うので、今から始める人にとっては、コスパはすごく悪いと思います。
前田
うんうん。
あんじゅ先生
で、それはオーナー側の話で。じゃあ、オンラインサロンに参加する側のコスパってどうなのか? あんマンサロンは、月額3,300円(税込)なんですよ。メンバーにはその3,300円の元を取ってもらうっていうか、安いって思ってほしいなって思って。
前田
なるほど!
あんじゅ先生
メンバーの中で(あんマンサロンに)一番価値を感じてない人でも、「安い!」と思ってほしいんですよ。"いるだけでいいな"って思ってほしいというか。ROM専(見るだけ)の人でも、楽しくなるように。
前田
まさに! "いるだけでいい"にしたいんだよね。マエデでもそれが課題で。
色々なイベントに参加している人に比べて、自分は忙しくて行けなかったとなったら、損してるって感じてしまう。それで退会しよう、みたいになるんで。
だから、偶然見たコンテンツが面白かったとか感じてもらえるような情報も出そうと思って、マエデメンバーだけが読める「前田デザイン日記」をサロン内で毎週公開してる。
あんじゅ先生
そういうのは必要だよね! 最初からいる人と後から入ってきた人の差をどうすればいいかとか、長く継続していると考えなきゃいけないよね。
(質問)
会費はどのように決めていますか?
前田
僕が所属していた箕輪編集室の会費が5,980円だったんですよ。マエデはそこから派生したサロンなので、それより高いのはちょっとどうかなと思って。でも、価値と比べて安すぎてもということで、マエデは月額5,500円にしています。
あんじゅ先生
私は、"フリーランス1年目の私"が払えるだろうなっていう金額に。(あんマンサロンは月額3,300円)
前田
明快。そうなんや!
あんじゅ先生
4,000円は高いなって当時思ったので。
前田
なるほど。4,000円台と3,000円台だとイメージ違うもんね。
あんじゅ先生
そういうことで、フリーランス1年目の人でも入れる感じでやってます!
社会福祉でいいやん!
前田
マエデは今、メンバーの毎月募集はやめて、4ヶ月に1回の募集にしてるのね。
あんじゅ先生
4ヶ月に1回。へー!
前田
多い時で80人ぐらい新メンバーが入ってきて。でも僕も全員覚えられへんし、やっぱ辞めていく人が多くて、申し訳ないなって。
あんじゅ先生
そうなんだ。
前田
だから、今期(2024年1月入会)は30人と決めて。あまり増やさない方がいいなと思って。
あんじゅ先生
私も増やせない。毎月10人くらいかな。
前田
それぐらいがいいと思う。
あんじゅ先生
(それ以上は)覚えられない。サロンオーナーがメンバー全員を覚える必要は必ずしもないと思うけど、我々は覚えたい派ってことですね。
前田
そもそもサロンオーナーがメンバーとやり取りするオンラインサロンがなくなってきてるから。
あんじゅ先生
うん。
前田
ありがちなのは、有名人がオーナーでその人がお得情報をメルマガで配信して、メンバー同士はちょっとゆるく繋がれば、みたいな。
あんマンサロンやマエデみたいにオーナーとメンバー同士がっつり関わるっていうのは、やっぱりコスパ悪くて減ってきてる。
あんじゅ先生
よく言われます! 経営者の友人とかにも「社会福祉」って言われます。ボランティアレベルでがんばってるから偉いよ!みたいな。たぶん経営者からしたら、超コスパ悪い。
けど、「別にいいやん!社会福祉で」って思う。楽しくみんなでやってるんで(笑)
前田
うん、楽しいってのが一番かなっていう(笑)
一番得しちゃってすみません
あんじゅ先生
オンラインサロンで一番得するのって誰だと思います?
前田
え、いい質問! 考えたことなかったな…。オーナーなのか、メンバーなのかってことね。
あんじゅ先生
そうそう。
前田
僕の立場で言うと…うん。自分(オーナーの前田)は得してると思う。
あんじゅ先生
私もそう思う。オンラインサロンはオーナーの私が一番得してる。
なぜかというと、誰よりもメンバーと喋れるし、誰よりもみんなと一緒の時間が取れたりするし、みんなの事情とか環境を把握できるし、いろんな経験を一番積めるじゃないですか。
前田
確かに!
あんじゅ先生
私、前職は大学の職員もやってたんですけど、企業だと年齢上がっていくと後輩を育てるじゃないですか。でも、フリーランスのクリエイター1本でやってると、後輩ができないんですよ。
それが、オンラインサロンっていうのを作ると、なんか後輩ができるイメージ。別に私が上とは思ってなくて、漫画家歴30年みたいな人もいるし、年上の人もいるし。年齢とか仕事歴とかの層が厚くてすごく面白い。
前田
僕も若いデザイナーがどんな風に考えてるとかも聞きたいし、そういうのっていいよね。
あんじゅ先生
いろんなケーススタディができて、自分のキャパシティや考えがめっちゃ広がっていくような気がして。そうするとやっぱりね、仕事が来ますよ。「漫画を頼みたいんですけど」って。私にも来るし、サロンのメンバーでやりたい方いらっしゃいますか、みたいな感じでも。
で、そういう風になってると、オンラインサロン自体にもお仕事が来るようになるので。まあ、私が一番得しちゃってすいませんっていう感じです(笑)
会場
(笑)
目の前で踊ってほしい
(質問)
色々なコミュニティに入るものの、 続かないで辞めてしまうことが多いです。どうしたら続けられると思いますか?
前田
使っているプラットフォームによるんですけど、例えばDiscordだったら、スタンプを押すだけでいい。
あんじゅ先生
ああ!
前田
もう、1ヶ月ぐらいひたすらスタンプ押して、2ヶ月目はスタンププラスちょっとコメントしてみる。で、3ヶ月目はなんかのオフ会に参加してみる。これで続けられると思います。
2ヶ月、スタンプとコメントのコミュニケーションで仲良くなってたら、リアルで会った時に一気に入っていけるんですよ。ずっとオンラインで見てきた人たちと実際リアルで会ったら、なんか芸能人にあったみたいな感覚で。そういうことが起こると、楽しくなる。
あんじゅ先生
うん!
前田
結局、人かなと。仲いい人を見つけること。
あんじゅ先生はどう?
あんじゅ先生
最初から話しかけてほしい、私に。
前田
あー、わかる!
あんじゅ先生
私に直接「みんなでオフ会やらないんですか?」みたいな感じで、話しかけるぐらいの距離感でやってくれれば、すごく嬉しいし。それで集まった人に対して「ここだけの話を披露してしんぜよう!」みたいなのもできるわけで(笑)
前田
(笑)
あんじゅ先生
近くに寄って損はないから。
でもまあ、恥ずかしがり屋さんだったら、スタンプとかから始めてもらえたらって思います。
前田
オーナーの目の前で目立ってくれたらと思う。例えば、あんマンサロンで写真が撮れる人がいるとして、あんじゅ先生が「この人めっちゃ写真上手いじゃん」ってなったら、なんかのタイミングで、「あの人写真上手かったな」って声がかかる。そういうことができる。
目の前で踊ってくれたら、もう絶対覚えてるんで。
やたらお菓子が好きとか、そんなんでもいいので。お菓子好きだったら「今のおすすめのお菓子教えて!」みたいなの聞けるじゃん。そういう繋がりが欲しいって思うかな。
今度あの人紹介するわ!
(質問)
私は専門学校でゲーム開発をしています。チームでリーダーシップをとる立場で、メンバーに最適な環境を作ることに重点を置いていますが、全員にとって居やすい場所を作るのは難しいと感じています。お二人がオンラインサロンで居場所を作る上で気を付けていることはありますか?
前田
いい質問!
あんじゅ先生
いい質問ですね!いかがですか?
前田
3つあります。
あんじゅ先生
おお、3つ!
前田
1つは、正直でいること。
ダメなものはダメって言うし、いいものはいいって言う。嘘が入ると、人ってやっぱり信じられなくなるので。
2つ目は、優しい言葉。
僕は端的にバンッて言っちゃうタイプなので、気をつけるようになりました。(身近にいる)コミュニティマネージャーの人たちを参考に、こういうとこ足りてないなと思って、アップデートして。
あんじゅ先生
うんうん。
前田
3つ目が、多面的に考える。
例えば、ある時の思い出話を、その場に参加できなかった人のことを考えずに、「あれ面白かったね」みたいな感じで言わない。
あんじゅ先生
ああー!
前田
ちゃんと参加できなかった人のことも考えて、「こういうことがあったんだよ」とか「なんでこのプロジェクトが生まれたのか」っていう背景を毎回丁寧にお話ししてます。置いてけぼりにしないように考えて。
前田
あんじゅ先生はどうですか?
あんじゅ先生
私だったらいっぱい質問をするかな。
「どんなゲームを作りたくて入ったの?」とか「兄弟いるの?」とか「大阪から来たの?」とか色々。チーム全体をバーッと見るんじゃなくて、一人一人に、たまたま隣になったときにでも。
ゲームのことでもいいし、全然関係ないことでもいいし、いろんな人にいろんな質問をいっぱいして、みんなのことをいっぱい知っている状態にする。
いきなり全体を見ると難しいけど、一人ずつ仲良くなっておけば、みんなで集まったときに…。
前田
繋げるみたいな。
あんじゅ先生
そうそう! 結局、好きなもの同士の集まりだから。好きなことを言い合える。
前田
なるほど。そうか、僕も割と訊くかも。「どういう仕事してんの?」とか、好きなものとか、基本的なところから。それで、好きなものが共通している人がいると分かったら、「今度あの人紹介するわ!」と。
あんじゅ先生
うんうん、繋ぎます!
最後に
今回のイベントはマエデメンバー以外の方にも開放し、たくさんの方にご参加・ご視聴いただきました。
ゲストのあんじゅ先生は、X、note、Voicyなどの媒体で繰り返しイベントの告知をしてくださり、おかげさまで現地参加枠は満席に…! 本当にありがとうございます!
イベントについて、X(Twitter)でもたくさんの感想を頂戴しておりますので、こちらで一部取り上げさせていただきます(すべてのポストを取り上げられず、すみません)。皆様、ありがとうございます!
改めまして、あんじゅ先生、前田さん、貴重なお話をありがとうございました!