「元カレを見返したい」23歳WEBディレクターが“変わりたい”と願う理由
オンラインコミュニティ・前田デザイン室(通称:前デ)では、現状に悩みや不満を持つメンバーがそれぞれのモヤモヤから「ぬけだす」ことを目的とした社会実験的プロジェクトを行っています。
プロジェクト名は「ぬけだ荘」。
モヤモヤを抱えたメンバーがバーチャルアパートメント「ぬけだ荘」の仮想住民となり、互いの現状や取り組みを曝け出しながら、一歩一歩、着実に「ぬけだし(=目的達成)」に近づいていく。そのプロセスをドキュメンタリーに追う、社会実験プロジェクトです。
“ぬけだし”のテーマをそれぞれに設定した住民たちには、日々どんな変化が起こっているのでしょうか。
この「ぬけだ荘通信」では、そんな住民たちにインタビューを敢行していきます。
今回、話を聞くのは、「夢に向かって努力できない自分から抜け出したい」というテーマを掲げた、WEB広告会社で働く23歳の女性。
失恋も、夢が定まっていない現状も、恥ずかしがらずさらけだしてくれました。まっすぐな若いクリエイターの「ぬけだしの現在地」を探ります。
(聞き手・原稿 郡司 しう)
〈話してくれた住民〉
くまさん 〈本名・大隅 絢加(おおすみ あやか)〉
WEBディレクター。
1997年、京都府生まれ。高校時代は囲碁部の団体戦主将、大学時代はよさこいサークルの演舞中MCの統括を務め、つねに目の前のことにまっすぐに取り組んできた。現在は、2020年4月から大手IT会社にてWEBサイト制作部署のWEBディレクターを務める。前田デザイン室には2021年1月(35期)から参加し、カードゲームPJ広報、ぬけだ荘PJ運営を中心に活動中
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挑戦しないと見えないものがある
——くまさんは、ぬけだしテーマを「夢に向かって努力できない自分から抜け出したい」としていますが、ご自身で思う「努力できていない」ときとは、どんなときですか。
くま やりたいことの優先順位を変えて先延ばししたり、あとは「やりたい」って言っただけになっているときですね。
最近だと、「副業でアフィリエイトをやりたいな」と思ってサーバーだけはつくったんです。でも、前デの活動が楽しくなってきて、ぬけだ荘のイベントとか、カードゲームのテストプレイに参加してしまっていたり。
前デでの活動もすごく勉強になるのですが、やりたいことがが増えすぎて、「あれ、もともと何やりたかったんだっけ?」って忘れちゃっていることがあります。
——前デは楽しいプロジェクトが多いですもんね。
優先順位を変えて別のことにシフトしてしまわないために、なにが必要なのでしょう?
くま そもそも私のぬけだし宣言「夢に向かって努力ができない自分」の“夢”を定めることかな、とは思います。
矛盾するようですけど、「努力したい」というよりも、まず「自分がやりたいことをはっきりさせたい」という思いもあって、このテーマにしたんです。
——「夢に向かって」と宣言したけれど、その“夢”がまだはっきりしていない部分があるんですね。“夢”を定めるためにしていることはありますか?
くま たくさん挑戦してみることです。ここ数カ月、いろいろなことに挑戦したからこそ「これは楽しい」「これがやりたいのかも」とか、逆に「やってみたけど面白くない」こともわかるんだなって気付けたんです。
「ぬけだ荘」の活動としてデザインもライティングも関わったことで、デザインよりはライティングの方が面白いかもしれない、とも思いました。
——そもそも向かうべき「夢」を見つける段階で、そのためにいろいろなことに挑戦してみる時期なんですね。
いまの原動力は「元カレを見返す」こと
——くまさんが書いた所信表明のnoteを読むと、前デに入ってから本当にいろいろなことに挑戦しているように見えます。そのモチベーションってどこから出るんですか?
くま じつはわたし、去年の10月くらいに彼氏にフラれたんですね。向こうは就活生で、大きな会社のインターンに行ってからすごく意識が高くなったんです。すると、「気持ちが冷めた」「張り合いがなくなった」みたいなことを言われてしまって。
——すごいこと言う方ですね。
くま すごいですよね。でも、とても引きずっているので、自分でもその理由を考えてみました。別れたあと元彼のSNSを見ると、まだ就活もは始まっていないのに、新しいことにたくさんチャレンジしていたんです。
それを見て「わたし、置いていかれてるな」って。
よりを戻したいわけではないんですが、いままで将来の仕事の話なんかもしながら一緒に頑張ってきたのに「自分は何もできていないな」って思ったんですね。それがすごく悔しくて。「夢に向かって努力できない自分から抜け出したい」というテーマも、じつはそこから生まれました。
——元彼を「見返したい」って気持ちもあるんですか?
くま 全部がそれではないんですけど、多分、ダメ押しになっているとは思います。もともと広告系の業界で有名になりたいという思いはあったので。
↑ 夢を探している最中ながら、第58回宣伝会議賞に応募したコピー「広告とは、恋をして愛をこめることである。」は協賛企業賞を受賞した
「もっと自分のことを好きになれる」
——くまさんが宣言している「夢に向かって努力できない自分」からぬけだしたあと、どんなふうに変わると思いますか?
くま いまよりも、世界の見方とか考え方を広げられるのかなって。たとえば、いま英語を勉強しているんですが、英語が読めるようになると得られる情報も増えるじゃないですか? 努力をし続けることで、自分が見える世界をどんどん広げていきたいです。
——気持ちにはどんな変化を期待していますか?
くま うーん……、もしかすると、自分のことをもっと好きになれるのかな。昔はぜんぜん自信がなくて、すぐに「自分なんて……」と口に出していたように思います。だけど最近は、ちょっとずつ自信を取り戻せるようになってきてる感覚があるんです。
ぬけだした先の自分は、いい意味でもっと自信に満ち溢れているのかな、って思ってます。
——そうなれたら、ぬけだす意味はすごく大きいですね。
先ほど、どんな「夢」にするか探している、と話していただきましたが、現時点で考えている夢の候補はありますか?
くま いまは漠然と、2つ考えています。1つ目は、世の中にある「WEB広告への嫌悪感」をなくすことです。
私は本業でWEB広告に関わっているんですが、WEB広告って結構嫌われていて、鬱陶しいと思われてしまっているケースが多い気がしているんです。
会社の方からは、「WEB広告は、そんなにクリエイティブな分野じゃないよ」って言われたんですけど、せっかくAIやディープラーニングを使った分析もできるツールなので、たとえばもっと人を感動させることに使えないのかと考えています。
私、電通の古川祐也さんがおっしゃっていた「不快にさせるものはクリエイティブが足りていない」って言葉が好きなんです。
だから、もっとクリエイティブに活用することで、WEB広告が持たれている嫌悪感をできる限りなくしたいです。
——すごく具体的ですね。もう1つは?
くま 挑戦できなくて困っている人たちを後押しできる、プロジェクトのようなものを創れたらいいなと思ってます。周りを気にして挑戦できないことってだれでもあるじゃないですか。
たとえば、私の会社の新入社員研修はzoomで行われたんですが、20〜30人もいると、質問でだれも手を挙げないんですよね。私は「新卒は、質問をするのも仕事よ」って上司に教わっていたのと、後の人も質問しやすくなるようにと思って、絶対に質問をするようにしていました。
それに近い形で、挑戦を見せることで、「自分も挑戦してみようか」と思ってもらえたらいいなって。
——2つとも、すごくやりがいがありそうです。
「ぬけだ荘」のプロジェクトは時間をかけて、自分の悩みからぬけだしていくわけですが、“夢”はいつ頃までに定めていたいですか?
くま 今年はいろいろなことに挑戦したいので、まずは焦らずに経験を増やしたいと思っています。その先で来年はどんなことを考えるのか、楽しみでもありますね。
ゆくゆく、20代後半にはなにか1つでも夢を叶えられたらいいなぁっていまは思っています。
(終)
ぬけだしとは、自分の弱さを認めて前にすすむことかもしれない
「自分は努力できていない」ということを発信することだってためらってしまう人はいます。今回話をしてくれたくまさんは、自分の弱い部分も、失恋の経験もすべてをさらけ出して、ぬけだしに向かって進んでいることを教えてくれました。
夢が定まっていないからこそ、いまはいろいろな挑戦ができる。
自分の状況を前向きにとらえる、まっすぐな姿勢に同じ社会人としてなにか背中を押されたような気がします。
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聞き手・原稿 郡司しう
編集 浜田綾、金藤良秀
撮影 そーじま あつし
書き起こし ふみよん、ちゃんりな、じゅんじゅん、金藤良秀、おざきなぎ、やまなかまさみ、郡司しう
バナーデザイン HAL、まいまい
Special Thanks 高野隼、まいまい、うえさま、カナ