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ぬけだ荘 住民座談会 〜逆境に向き合い、真摯に取り組むことで、前を向いて歩いていける〜

オンラインコミュニティ・前田デザイン室(通称:前デ)では、現状に悩みや不満を持つメンバーがそれぞれのモヤモヤから「ぬけだす」ことを目的とした社会実験的プロジェクトを行っています。

プロジェクト名は「ぬけだ荘」。

モヤモヤを抱えたメンバーがバーチャルアパートメント「ぬけだ荘」の仮想住民となり、互いの現状や取り組みを曝け出しながら、一歩一歩、着実に「ぬけだし(=目的達成)」に近づいていく。そのプロセスをドキュメンタリー的に追う、社会実験プロジェクトです。

今回は「仕事から抜け出したい」をテーマに4人の住人にお話を伺いました。

環境は違えど皆さんに共通しているのは、辛くて耐えられない逆境の中必死にもがいた結果、前を向いて歩いていたことである。そんな4人はいったいどのようにして逆境を抜け出せたのでしょうか?

4人のぬけだし方は、皆さんが状況打破できるいいヒントの宝庫でした。
(インタビュアー:ぴろ)

目標に向けて行動することに対する覚悟がなかった

ーーまずはさなえさんに、自分のぬけだし宣言をどうやって決めたのか、教えていただけないでしょうか?

さなえ 前デに入った当初はバナーなどを作ってましたが、だんだん幽霊会員みたいになってメンタルがネガティブになっていたんですよね。そのときにぬけだ荘プロジェクトを見て、ネガティブな自分をぬけだしたかったので、思い切ってぬけだ荘に入りました。

当時、「粘土とイラストをやりたい、仕事にしたい!」と思ってましたが、それが自分の本心かどうかまではわかっていませんでした。その原因を掘り下げてみると、自分に覚悟が足りないから行動できていないことに気づきました。

そこで、まずは打ち込んでみる、たくさん手を動かしてみたら、次の目標がなんなのか、見えて来るかなと思いました。ダラダラしない、目標に向かってトライする気持ちで、「時間浪費癖からぬけだしたい」ということを書きました。

ーなるほど。ぬけだし宣言を立てたとき、思い描く理想像はありましたか?

さなえ あまりなかったですね。とにかく自分がモヤモヤしつつも少ししか動いていない状況が続くと、目標にたどり着けないまま10〜20年くらいあっという間に過ぎると危機感を感じました。

なので、目標というより、自分の行動を早めたい、何かに注力したい、という感じです。

どんな辛い運命だろうとも、絶対に負けたくない

ーーうっきーさんの宣言は、とくに未来予想図がはっきりしているな、と感じますが、どうしてその宣言にされたんですか?

うっきー 2020年、スポーツクラブでは新型コロナウイルスのクラスターが発生していないにもかかわらず、政府が休業を発令したことで、スポーツクラブのほとんどが休業になる事態が訪れました。

そのときに、自分がインストラクターとして運動指導を18年やってきたのに、「フィットネスの良さが伝わっていないな」と痛感しました。

もっとフィットネスを広げるために、自分がフィットネス「しか」できないんじゃなくて、もう一つ何かできることがあったらいいなと思いました。
そこで、”デザインをやりたい”と思いました。目標を宣言をした時には、すでにデザインを勉強し始めていましたね。

ーーもう一つの武器をデザインにしよう、と思ったきっかけは何でしょうか?

うっきー 街中を歩いてて、パッと目につくものがデザインだったんですよね。電車の広告とかでもそうですけど、デザインの素晴らしいところは、一目見てデザインが良ければ「あ、これ気になる」と注目させられることだと思います。
僕らがふだんから発信していること、「いまさらその情報?」と思えるようなことでも、テレビでその情報が放送されたりすると、やっぱり影響力がぜんぜん違うですよ。だとしたら、僕らの伝え方が足りないのかなって。

デザインの力を使って、運動に興味がない人も少しでも興味を持ったり、運動や体を動かすことの大切さ、楽しさがちゃんと伝わって、一人でも多くの人が健康になってくれればいいなと思っています。

ーーフィットネス以外で伝える方法がないから、その手段として“デザインを学ぼう”ということでしょうか?

うっきー プロとしていちばん自信があって、自分らしくいられる場所が運動指導なんです。

”あなたの仕事は何ですか?”って聞かれたら、絶対に「フィットネスインストラクター、運動指導者」と答えます。なので、ベースは間違いなくそこです。

ーーありがとうございます。うっきーさん、ぬけだし宣言した時に描いていた理想像はなんとなくイメージしていましたか?

うっきー 「フィットネス業界の中でデザインと言ったらこの人」と言われるくらいの人になりたい。あとは、肩書に踊れるデザイナーって書きたいなっていう自己満もあります(笑)。この人の手にかかったら、フィットネスがおもしろく広がるかなって思ってもらえたらいいですね。

ーーありがとうございます。次にカヌカンさんは、実際にぬけだし宣言書いてもらったときの自分の感覚、状況だからこの目標を書いたりされたんですか?

カヌカン 私のぬけだし宣言は「障害を言い訳に挑戦しない自分からぬけだしたい」にしています。

私は、双極性障害と呼ばれる症状があって、やる気がすごくあってできる日と、まったくやる気が出なくて何もできない日があり、体調に波があるんです。その体調の波が激しさが理由で逃した案件もありました。

案件を逃したのがきっかけに、この障害であってもデザイナーとして活躍できるようになりたいと思い、この宣言にしました。

ーー自分では、体調の波が激しい原因を考えたりするんですか?

カヌカン そうですね。一つ大きな心配事があるという感じではなく、日々の小さなこと、ちょっとしたことがいろいろ積み重なって、しんどくなる感覚はあります。

ーーぬけだし宣言を書いたときにもいろいろ考えてたことがあると思いますけど、今後はどういう状態で働いていきたいですか?

カヌカン そうですね。独立してフリーランスとして自分で仕事量をコントロールできるような状態になりたいですね。

ぬけだ荘に入ったことで妥協し続けた生活にサヨナラできた

ーーおりさんのぬけだし宣言は「便利な社員から抜け出したい!​​」。当時を振り返っていただきながら、そのときの状況、心境などを教えていただきたいです。

おり 以前、勤めていたデザイン事務所は知人の紹介で入社しました。仕事内容は嫌ではありませんでしたが、心の奥底では「辞めたいな」と思いながら働いていました。その思いを積み重ねながらダラダラと10年も、働き続けてしまっていたんです。

ーーズルズル仕事している状況は具体的にどんな感じでしたか?

おり もともとは設計を本業に生きていきたいと思っていたんですが、札幌の地で設計事務所で食べていくのはけっこう大変なんです。そこで、設計以外で武器になるものを作りたいと思っていた時に知人の会社でデザイナーを探しているっていうので、イラストを描いたり、デザインをするのが好きだったので、その会社に就職しました。

当時、画家を志していた先輩社員が一人いて、夢を叶えて事務所を卒業していったんですが、その方が担当してた仕事を私が引き継ぐことになりました。それだけならよかったんですが、小さい会社で事務、営業、数店舗ある飲食店の備品管理を担当している女性社員が出産・育休に入ってしまったことで、その仕事も全部私に回ってくることになったんです。

とにかく業務量が多くて、日々それを回すだけで精一杯。だけど、代わりの方を見つけないと辞めることができない風潮の会社だったため、「忙しい、だけど仕方ない」と思いながら仕事をこなす日々でした。

ーーその日々にサヨナラするために「便利な社員からぬけだしたい」という宣言にしたんですね。その後、状況は変わりましたか?

おり 2020年の3月半ばにマエボン2の製作がひと段落して、ぬけだ荘が始まったときに「あ!これをきっかけに動かないと私、何も変わらないな」と思って3月末には、社長に「辞めます」と伝えたんです。4月上旬には、8月付で退職することが決まり、怒涛の勢いでした。行動に移せたのは、ぬけだ荘をきっかけに“どうして辞めたいと思いながら、ダラダラと会社に居続けたのか”ということなどを言語化して、その理由を一つずつ潰せたのが大きいと思います。ちなみに、ぬけだし宣言をする前から、自分のnoteでモヤモヤや日々感じていることをそのまま書いていたんですが、それがぬけだし宣言にかなり近かったので、ぬけだし宣言のnoteは、それをリライトしました。


とにかく手を動かすことで目標がハッキリ見えた

ーーみなさんのぬけだし宣言の背景がわかったところで、次に、各々のぬけだし活動についてお聞きしたいです。まずはカヌカンさん、ぬけだし活動をやってみてどうでしょうか?

カヌカン 目標を立てた4月はすごくよかったんですけど、いまは悩んでいる状態ですね。その理由は、5月に引っ越しをして環境が変わったことで、仕事に行けなくなったり、体調不良が続いたりして悪い方向に進んでいきました。

ーーいま、いちばん大きい悩みはなんですか?

カヌカン 会社に行けないことですね。朝起きたら無気力状態になってしまいます。なので、この状態からどのように会社に行くかが課題ですね。

ーーそのほかにやったことはありましたか?

カヌカン 鬼フィードバックを受けてみたり、noteの更新、自分の活動をポートフォリオにまとめるなど、いろいろ動いていました。

ーーぬけだし宣言した際いろいろ考えてたことがあると思いますけど、今後はどういう状態で働いていきたいですか?

カヌカン 持ってる障害を理由にすることなく、仕事がしたいです。今は仕事ができないのが辛いので、この状況をどうにか打破したいです。

ーーさなえさんはいかがですか?

さなえ ぬけだし活動につながったなぁと思うのは4月にやった「ぬけだし方を探る会」(ぬけだ荘住人が掲げたぬけだし宣言に対して他の住人からフィードバックをもらい深掘りすることで、ぬけだし活動をしやすくするイベント)です。そこで、登壇者として話したのがすごく良い刺激になりました。

4月上旬頃に「よし、何かやるぞ!」ってことで、粘土を使った作品を14日間作り続けて、そのメイキング動画を投稿したり、クレイアニメや、ストップモーションアニメを制作したり、イラストを2週間毎日描いたり、スイスイを再開してやったり、初めてデザ王のスレッドに投稿したりしました。

あとは、なるべく前デのZoomイベントへの参加率を高めるようにしました。自分から積極的に参加しようと意識したら、みんなから刺激を受けることが多くて、モチベーションが上がりました。

とにかく行動して、ぬけだし活動をやった結果、明確な目標がない状態から、少しずつ目標が定まってきたという感触があります。

今は目標がなくてダラダラ時間を過ごすのではなく、”粘土作家になるためにはどうしたらいいんだろう”という悩む時間が増えました。

ーー「ぬけだし方を探る会」に出ることで、やる気が出たとか、頑張ろうと思えたのは、何が大きいと思いますか?

さなえ それまで「やりたい」と思ってたことを、あんまり声に出して言っていなかったのかもしれません。「仕事を辞めて、これがやりたい」と職場の人に打ち明けられなかったのと、コロナ禍になってからも職場と家の往復みたいな生活が続いたことで、仕事以外の人や家族に何か話すことがほとんどなく、ずっと自分の思いを心の中に閉じ込めてしまっていました。

今まで妄想に留まっていた思いを前デの人に話したことで、自分の妄想ではなく現実として、”これをやりたいんだ! これをやるんだ!”と考え方が変わってきたと思います。

なので、自分の思いを話すことの重要性を痛感しました。

ーーそこからは、やりたいことが具体的になったり、どんどんやりたいことが出てくる、という感じでしょうか?

さなえ そうですね。とにかく手を動かしたのもありますし、あとはぬけだ荘のDiscordの住民部屋で、メンバーの自己分析をみて、「私ももう一回やらないと」と思ったりしています。自分に向き合うことを大事にしたら、自分のやりたいことが決まったと思います。

ーーなるほど。ありがとうございます。次にうっきーさん、ぬけだし活動をしての心境の変化などを教えてもらってもよろしいでしょうか?

うっきー 今年、コロナで休業になったとき「今がチャンスだ」と思って、デザインスクールに入校しました。そのおかげで、いまインストラクターのみなさんからバナー、ヘッダー、サムネイル制作の仕事を受けられるようになってます。

プラス、指導者という立場を活かして、同業者にデザインなども教えています。前デでは、をほかの方でも手軽に使えるよう無料ソフトのCanvaを使って、「鬼フィードバック」を受けています。

ぬけだし宣言をして、目標を明確にしたことでデザイン系のソフトが使えるようになり、学んだことも増え、デザインの仕事を依頼されるようになりました。

色んな価値観に触れたことで、フリーランスとしてやっていく自信がついた

ーーおりさんの場合、ぬけだし活動というか、ぬけだし宣言をしてから会社を辞めるまでの期間がすごく早いですよね。そのときにどんな変化があったんですか?

おり 私は10年間インハウスのデザイナーをやっていましたが、元々ベースが建築だったので、実を言うと全然デザインの勉強をしてなかったんです。先輩後輩もほとんどいない状態でいきなりデザイナーになったので、比較対象もいない。なので、”本当にこれで大丈夫? このデザインで大丈夫?”という不安を抱えながらずっと勤めてたんですよね。

その中で、「自分は世の中に通用するのか」という漠然とした不安がありました。だけど、前デに入っていろんなクリエイター、デザイナーさんと話したり、アウトプットしているうちに、「自分、大丈夫かも」って思えるようになりましたました。

比較対象として、というよりも「こうやって行動を積み上げていけば、会社辞めてもどうにかやっていける」という確信を持てたというか。

ー前デのメンバーと交流していく中で、考え方が変わったということですか?

おり そうですね。同じフリーランスでも、やり方が全然違ったり、会社員でも副業で面白いことを色々やってる方も結構いましたので、いろんなやり方を知れましたね。色んな方との出会いによって、辞めた後のイメージの輪郭がはっきり見えたのが大きかったですね。
(終)

一つ一つ一生懸命に取り組むことが、ぬけだしの最大の近道

今回の座談会に参加したメンバーの話を聞いていると、どんな状況にも真摯に向き合った姿勢には本当に尊敬しかありません。

現状を抜け出すために必要なのは、とにかく手を動かしたり、いろんな活動に参加したりするなど自分で行動することが大事だなと痛感しました。

さなえさん、うっきーさん、カヌカンさん、おりさん、ぬけだしのヒントになる話を聞かせていただき本当にありがとうございました。

聞き手 ぴろ
原稿 黒羽大河
編集 郡司しう
バナーデザイン HAL
Special Thanks 高野隼カナうえさま

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