「ゲームのワクワク感を、Tシャツを経てよみがえらせたい」エディットモード代表 江南匡晃さん
2023年5月27日、大阪で前田デザイン室の定例会が開催されました。
ゲストは株式会社エディットモード代表の江南匡晃さんです。
エディットモードさんが展開する「THE KING OF GAMES(ザ キング オブ ゲームズ)」は主に任天堂製ビデオゲームをモチーフにデザインを行う、日本初の任天堂公認アパレルブランドです。
そして、今年6月20日で21周年!おめでとうございます!!
長年に渡りゲームファンから愛されるブランドを育て続けてきた江南さん。その原点と秘訣を探るべく、今回は「ファンに愛されるTシャツブランドのデザイン」というテーマで前田デザイン室の前田高志室長と対談をしていただきました。
前田室長も江南さんとのお話を心待ちにされていたご様子…!
どうぞ最後までお楽しみください!
原点はキン消し集め!?すべては収集癖から始まった
前田高志室長(以下、前田):今年、THE KING OF GAMES 20周年の展示会をやってらっしゃったじゃないですか。あの時びっくりしたんですけど、クラブニンテンドー(※)でプラチナ会員が一体だけもらえる金のマリオをいっぱい持ってましたよね?
江南匡晃さん(以下、江南):108体持ってます(笑)
前田:煩悩の数で集めるのをやめたって聞いて(笑)。好きになったものをひたすら収集していくのは昔からなんですか?
江南:そうですね。昔からキン消し(キン肉マン消しゴム)集めたり、ビックリマンシール集めたり。そういう(収集)癖は持ってましたね。
金のマリオについては、初めは僕もプラチナ会員になって一体だけ持ってたんですよ。そしたらプラチナ会員じゃない友達も持っていて、なんで持ってんの?って聞いたら、オークションで売ってるよって教えてくれて。
「買えるんや…。じゃあちょっと(集めよう)…」って。
会場:(笑)
前田:なかなか、そうはならないですよ(笑)
江南:棚に飾ってたんですけど、友達が遊びに来るたびに「増えてへん?」って言われるくらい、やめ時がわからなくなっていて。ある時「何体持ってんの?」と聞かれて数えたら、たまたま108体だったから「煩悩の数だ、やめよう!」となって、ようやくやめられました。
前田:なんなんでしょうねそれ。
江南:今もそういうのずっとやってますよ。自分が気に入ったものを何個も欲しいと思ってしまう…癖(へき)?
例えば古着のTシャツでも気に入ったら同じものが無いかな?と思ってずっと探すんですよ。それで「見つけた!」って、自己満足するんですけど。
前田:それは絶対活きてますよね、ここ(THE KING OF GAMES)に。
江南:おもちゃとかそういうのが好きってのは活きてますね。もともとファミコンが好きだし。
前田:でも、ファミコンの本体はいっぱい買わないですよね。
江南:ファミコンの本体もいっぱい持ってます。
前田:ええっ!持っててどうするんですか(笑)
会場:(爆笑)
江南:ファミコンカセットも全種類集めていて、かぶっているのもたくさんあります。だから元々は誰かに見せるつもりもなくて、個人の収集癖だったんです。
それで15周年記念のときに、THE KING OF GAMESの世界展みたいなテーマで大きな展示をしようとなったので、「じゃあ、癖(へき)を出そう」となりました。
前田:こういう人が任天堂ライセンスを扱ってるんだなって、説得力がすごいですね。
江南:そういってもらえると(笑)
(参考)江南さんの癖(へき)を出した「THE KING OF GAMES 20周年展」の様子
ファンを裏切らないグッズ制作の秘訣
前田:エディットモードさんのオンラインショップでTシャツを買ったら、専用の段ボールで届いたんですね。中には、ステッカーや手紙なんかも入っていて、なおかつTシャツは箱に入っていて…。
前田:こういう体験というか、Tシャツを買っただけでこんなにワクワクできるってすごいなって思います。Tシャツを箱に入れたのはなぜなんですか?
江南:僕が通販を始めた当時はそこまでオンラインショップとかが普及していない時代で、対面式の接客しかしてなかったんですけど、(オンラインで)目に見えない人とのやりとりの中でもぶっきらぼうにならないように販売しようというのはありましたね。Tシャツだけが入っているよりも、箱に入っていたほうがテンションがあがるじゃないですか。
前田:お客さんが見えていたってことですね。
それから、江南さんのTシャツってめっちゃこだわりがすごいじゃないですか、コスト高めだなと思って。
江南:コスト高いですね。最初に作ったTシャツもかなりの版数を使っているんです。さらに重ね刷りをしたりして工程作業がすごいので、プリント屋さんに嫌がられるデザインではありますね(笑)
江南:昔のゲームって黒い背景にキャラクターがいるというのが多いんですけど、「ああ、そうそうこれだった!」っていう体験をして欲しいなと思っています。
僕自身も大人になってファミコンを久々に遊んだ時に、「ああこうやった!」とか「パッケージ今見てもいいなあ」とか、お店のショーケースでカセットを見ていた子供の頃のワクワクする気持ちとかを久々に思い出したりしたので、それをTシャツを経てよみがえらせたいというのがあるんですよね。
前田:昔味わったワクワク感をTシャツで。めちゃくちゃいいコンセプトですね。
前田:あの、任天堂ファンってめちゃめちゃ多いじゃないですか。そのファンたちを裏切っていない、むしろファンをよりファンにしているってのがすごいなと思っています。そのポイントってなんなんでしょう?自分(江南さん)自身がファンであることってのは分かるんですけど。
江南:そうですね、好きですねぇ。
あと、アパレルとしても成立していてちゃんと着られることですね。まだまだゲームTシャツの社会的地位が低いというのか、値段が高いと言われることも多いので、ただただイベントだけで着るものでない、というのは目指しています。
前田:こだわっていますものね。
江南:そうですね。特にオンライン販売だと自動的に届くみたいな印象がありますが、その背景にはしっかり人の手が携わって一枚一枚プリントされてお客さんのお手元に届いていますので、そこをきちんと伝える方法を模索していますね。
(会場からの質問):Tシャツとかグッズをデザインする時にどういうところから考え始めますか?
江南:THE KING OF GAMESに関して言えば、やっぱり自分が着たいものを作ることが一番ですね。あとは、自分がプレイしていないゲームのTシャツは作らないです。ちょっとでも遊んだことがないとバレちゃいますよね。
(会場):ああ〜!
江南:人に依頼された商品はまた別で、コンセプトを聞きながらやります、それでも割と自分を出すようにしてますね。あまり二案・三案と捨て案を出さず、僕はこれがやりたいです!って案を出します。ダメだったらやり直しますね。
前田:参考になりますね!
Tシャツは最高のコミュニケーションツールだ
前田:オリジナルブランドのTシャツも作っているんですね。これはTHE KING OF GAMES(KOG)のファンを作ったりする目的で?
江南:そうですね。まだ数は少ないんですけど、商品の幅も広げていきたいと思ってやってますね。
前田:僕、クライアントさんに感謝の気持ちを込めて自分の会社(株式会社NASU)のNASUって文字をプリントしたTシャツを刷って配っていたんですよ。あと、ステッカーをつくって配ったり。それってコミュニケーションツールとしてめっちゃいいなと思っていて。ステッカーコミュニケーション、Tシャツコミュニケーションを会社としてやってくのってどう思います?
江南:いいと思います。そういうところがもっと増えたらいいですね。Tシャツっていろいろな使い方ができますから。それ(着ているTシャツ)を見て欲しいって言ってくれる人もいますし。
前田:企業の会社案内、ウェブサイト、名刺。この並びにTシャツ、ステッカーが入ってもいいと思っているんですよ。デザインの仕事も増えるし、Tシャツ自体の価値も上がるかなと思います。
コミュニケーションツールとして、Tシャツ、ステッカー…もう一つあるとすればなんだと思いますか? THE KING OF GAMESさんは缶バッジも作ってますよね。
江南:缶バッジ作ってますね、バッジマシンで作れるので。それはオンラインで販売し始めた時に、Tシャツを買ってくれた人にできる範囲でおまけをつけてあげたいなというのがありましたね。
前田:Tシャツ、ステッカー、缶バッジ。コミュニケーションツール3種の神器ですね。
世界観込みでTシャツを買ってもらうために
江南:オープンオフィスという、オフィスを開放してグッズを買えますよっていうのを時々やってるんですけど、そこで買えるTシャツみたいなのも作ってますね。
前田:オープンオフィスはどれぐらいの周期でやってるんですか?
江南:次回はお盆あたりに開催予定ですが、基本は何ヶ月かに1回、連休のある金・土・日曜日とかですね。
(会場からの質問):去年、オープンオフィスに行かせていただきました。オフィスの一番奥に任天堂の祭壇みたいな、グッズがたくさんまつられている場所があったのですが、あちらもコレクションの一部ですか?
江南:そうですね。あれはもともと全部僕の私物で、段ボールに入れてオフィスにしまっていたんですよ。それでオープンオフィスを開催する時に、スタッフさんが段ボールの中のグッズを全部並べてくれて、それがすごく良かったんですよね。
前田:うんうん。
江南:そうしたらお客さんが写真を撮ってくれて、SNSや口コミで広がっていって、ちょっとずつお客さんが増えていった感じですね。で、僕が持っているものが多すぎて(笑)、それを放出していこうということで売り始めたグッズもあるんです。
前田:お店のワクワク感なんじゃないですか?いっぱいあるってのも。
江南:そうですね。僕は古着屋みたいなごちゃごちゃした感じのお店が好きだったりするんで、ごちゃごちゃ感みたいなものは出そうとしてます。そういう世界観込みでテンションをあげてもらって、Tシャツを買ってもらうのがいいかなと思っています。
前田:お客さんを見て、喜んでもらってをずっとやっているんですね。
江南:そうですね。結果そうなってますね(笑)
おわりに
江南さんのブランドが任天堂に公認され、ファンに長年愛されるのも納得!
まさに好きと癖(へき)の力を感じた江南さんのお話でした。
ぜひオンラインショップにて、そして現地(オープンオフィス)にて、THE KING OF GAMESの世界を実際に体験してみてください!
・エディットモードの公式ショッピングサイトはこちら
・オープンオフィスの開催予定は公式サイトのNEWS、もしくは公式Twitterをチェック!
江南さん、前田さん、楽しい時間をありがとうございました!
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執筆:ミッチー
写真(5月定例会):さなまる
写真(THE KING OF GAMES 20周年展):ミッチー
監修:浜田綾