「情熱高志」第8号 ー漫画で偶然を運命に変える ー
このマガジンは、デザイナーから漫画家に転じた「まえだたかし」が記す、前田デザイン室限定コンテンツ「たかしの世界」に加筆修正し、再編集した密着ドキュメンタリーレポートです。
〈前回までの道のり〉
これまでの活動を評価され、デザイナーとして一つの実績を成すことはできた前田。
だが、漫画家の道に歩を進め、あえて自らを崖っぷちに立たせた。
果たして、漫画家としても、夢を成すことはできるのだろうか。
***
2018年の暮れも押し詰まった週末。
前田は、東京にいた。
週明けはクリスマスということで、通り過ぎる人波と街全体が、何だか浮き足立っているように見える。
だが、すぐにそれは間違いと気づく。
周りが浮き足立っているのではない。自分にいつもと違う緊張感があるからだ。
これから二人の賢人と会う。
評論家/編集者の宇野常寛氏と編集者の佐渡島庸平氏。
いずれも、かねてより前田が一目置いていた人たち。
初対面でなくとも、緊張しないはずがない。
まずは、宇野常寛氏。
2017年12月に幻冬舎の編集者 箕輪厚介氏が、宇野氏の番組「HANGOUT PLUS」に出演したとき、彼は箕輪氏がやっていることを、すべて言語化した。
その明晰な頭脳に、前田はただただ衝撃を受け、それ以来、彼の言動に注目していた。
あれから一年が経ち、人生というのは不思議なもの、今度は、自分が彼の番組「HANGOUT PLUS」に出演することになった。
(「たかしの世界」より抜粋)
番組が始まると、研ぎすまされた言葉を、次々と繰り出してくる宇野氏を前に、前田は珍しく硬さが見られ、口数も少なかった。
だが、好きだったマンガなど、いろんな話をしていくうちに、しだいに硬さはほぐれ、いつもの前田に戻っていた。
百戦錬磨の宇野氏が、うまくリードしてくれたおかげなのかもしれない。
約2時間、途切れる間もなく話し続けた。
終わってみれば、その豊富な知見で手強い論客としてならす宇野氏が、最近の前田とその活動を絶賛していた。
(「たかしの世界」より抜粋)
前田は、あらためて、彼の聡明さに驚かされ、自分を高く評価してくれたことに、心から感謝した。
前田は、宿泊先のホテルへの帰り道、終わった安心感からか、心ここにあらず。
著名なオンラインサロンの多くが東京を拠点にする中で、東京以外を拠点にする150人規模のサロンが、ここまでの注目を集めている。
他のオンラインサロンを引っ張っていくようなポテンシャルを秘めており、彼らの動向には、今後も注視すべきだろう。
このような主旨の発言をしてくれた宇野氏に、私たちは、感謝に堪えないとともに、身の引き締まる思いがした。
宇野氏から思いも寄らぬ評価をもらった前田。
その興奮冷めやらぬ間もなく、もう一人の賢人 佐渡島庸平氏に会う。
多忙を極める佐渡島氏だが、今後の漫画家活動について相談するため、無理をお願いして時間をつくってもらった。
以前の情熱高志でもお伝えしたが、佐渡島氏は、前田のちょっとした発言や思いにも、適切なアドバイスをしてくれる。
一見すると、単なるアドバイスに見えるかもしれない。
だが、編集者から漫画家への編集が行われている視点で見ると、その奥深さが垣間見える。
前田は、決して感覚的なことを無下にしないが、ロジックも大切にするデザイナー。
だから、手を動かす前に、すべてを理解しておく。
(「たかしの世界」より抜粋)
そんな前田に、佐渡島氏が話してくれた言葉は、前田にとって金言だった。
(「たかしの世界」より抜粋)
この金言から、なぜ佐渡島氏が、漫画を描いていない前田に期待をかけてくれるのか、その理由が少なからず、わかった気がする。
(「たかしの世界」より抜粋)
クリエイティブを成すには、制作者が内面にもつ思いやイメージを昇華させることが必要。
一人のデザイナーとして、人として、積み重ねてきた経験や思いは、きっと漫画に役立つはず。
そこに気づくことができた。
これまでもそうだが、佐渡島氏との打ち合わせでは、必ず何かの気づきをもらえる。
今回も、深みを感じさせられる、貴重な時間になった。
前田は、賢人たちの言葉に突き動かされてきた自分を、あらためて振り返る。
賢人たちとの、つかの間の交流を終えた前田。
休む暇もなく、
2018年最後のトークイベントに登壇した。
「日本一オンラインサロンを一番使い倒している男。」
ふだん自分を称えるような、偉ぶる言動を好まない前田にしては、かなり振り切ったタイトル。
このような東京でのイベントは、今回で一区切りつくこともあり、あえて自分を追い込んだのかもしれない。
「前田高志です。
で、日本一のオンラインサロンをして、もう堂々と、この2日か昨日くらいで完全に日本一って言えるようになったんで自信持って言ってます。」
これは間違いなく、このイベント前に会った賢人たちと、「箕輪編集室・MVP」を受賞したことからの影響だろう。
この数日で、前田は多くの言葉をもらい、多くの気づきを得ることができた。
デザイナーとしての貢献を評価された「箕輪編集室・MVP」の受賞は、奇しくもデザイナーとして一区切りつけようとした矢先の出来事。不思議な縁を感じつつ、箕輪編集室と箕輪厚介氏に心から感謝した。特に箕輪氏は、自分に活動の場と多くのチャンスを与えてくれた、もう一人の賢人。強い自立心をもつきっかけになった。
宇野氏とは、これまでやってきたことの成果や、何となく感じていた思いが、緻密に言語化され、強い後押しもしてくれた。
前田と前田デザイン室の今の立ち位置を確認し、今後の方向性に自信をもつことができて、今後のための大きな励みになった。
佐渡島氏とは、描いていく漫画の方向性に、一筋の光明を見出すことができた。
特に漫画には、これまでよりもっと踏み込んだイメージを捉えつつある。
(「たかしの世界」より抜粋)
「偶然を運命に変える」
このテーマで描く漫画は、いったいどんな漫画になるのだろうか。
前田にも、偶然を運命に変えた原体験があったのだろうか。
思えば、偶然を偶然のままに、流してしまった経験ならば、私にもたくさんある。
例えば、学生の時、試験前に見ていた内容がラッキーにも出題されたのに、読み込みが甘くてうまく解答できなかった。
飲み会で気のあう人と、せっかく連絡先を交換したのに、そのうち連絡しようと思い流していたら、連絡が途絶えてしまった。
こんな話、どこにでもある些細なことだが、こんなふうに偶然のまま流して悔やんだことは、あなたにもあるのではなかろうか。
前田にも、同じような経験が、あるのかもしれない。
そんな前田が、偶然を運命に変える漫画を描くのであれば、ぜひ読んでみたい。
漫画家は、己の思いや経験を切り出して、作品に投影し、まだ見ぬ誰かに投げかける。
これは、モノづくりに関わる人ならば、何かしら心当たりがあることではなかろうか。
「共感」
それはクリエイティブの根っこの部分で、
決して忘れてはならないキーワード。
たかし、考えるな、感じろ!
思いや体験を、
皆で共感できるように。
描いて描いて、描きまくれ!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私たち「情熱高志」編集部は、これからも「漫画家 まえだたかし」に密着し、情熱をもって描く彼の姿を書き記していきます。
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次回の配信は、1月30日を予定しています。お楽しみに!
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