前田デザイン室3周年記念 定例会レポート
こんにちは。前田デザイン室36期の中本宏樹です。
3月5日に行われた前田デザイン室3周年を記念した定例会の模様をレポートします。
今回は室長である前田高志さんとゲストに箕輪厚介さんをお迎えして雑誌『サウナランドのデザイン』というテーマで開催されました。
登壇者のプロフィール
【箕輪厚介さん】
株式会社幻冬舎 編集者
オンラインサロン「箕輪編集室」主宰
株式会社エクソダス取締役
合同会社波の上商店 代表
株式会社CAMPFIRE チェアマン
2010年に双葉社入社、広告営業やイベント運営などに携わった後、編集部に異動。2015年に幻冬舎に移り、編集者として働きながら、東洋経済オンラインやアドタイで自身のコラムを持ち、オンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。堀江貴文イノベーション大学校で特任教授も務める。2017年10月、自身の会社として波の上商店を設立。2018年1月末、CAMPFIREと幻冬舎の共同出資会社、エクソダスの取締役に就任する。
2018年8月には自著『死ぬこと以外かすり傷』を出版、13万部を突破した。
2017年、NewsPicks Bookを創刊し編集長に。
わずか2年半で累計222万部を突破。
国内最大級のオンラインサロン・箕輪編集室を主催。
イベントが開催されるに至った経緯
前田デザイン室が3月1日に3周年を迎えました。3周年を記念して箕輪編集室と前田デザイン室の合同定例会として開催され、サウナ業界で話題となった雑誌『サウナランド』のデザインについてトークされました。
サウナランドとは
サウナランドは箕輪編集室と前田デザイン室の協力の下で作成された雑誌で「偏愛」「丸裸」「混沌」をコンセプトとした雑誌です。
クラウドファンディングを活用した自費出版でありながら、支援額が1千万円を超えるなど話題となりました。
雑誌を起点として、Web記事やYouTube、オンラインコミュニティ、イベントも連動していく雑誌2.0のかたちを目指したメディアです。
サウナランドを通して、「あーなんかどうでもいいや、好きに生きよう」という人が増える世界を目指して制作されました。
雑誌『サウナランド』の表紙
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箕輪さんが雑誌『サウナランド』のコンセプトやデザイン、クオリティのお話をたくさんお聞きできました。
前田デザイン室の室長である、前田高志(以下前田さん)との対談の様子の一部をお届けします。
サウナランドはクオリティを大事にした
箕輪:今回はテーマがサウナなので、クオリティで妥協すると、絶対だめだって思った。サウナの本で、クオリティが高い本って、まだないんですよ。そういう状態のジャンルで、今までと同じクオリティの高くない雑誌を作っても何にもならない。
本業で雑誌を作ってる人たちが見ても、「サウナ雑誌なのにこれ凄いよ」とか「金かかっているよ」とか「技術凄いよ」って思われたくて。もしかすると、逆に本や雑誌のクオリティが高いジャンルの中で、あえてチープなものを作ってみたら、それはある種提案になるかもしれない。でも、今回はそうじゃないので。クオリティが低いサウナ雑誌をオンラインサロンで作ったところで、世間の反応は「そうですよね」で終わってしまう。
前田:(笑) 。
箕輪:自主制作の雑誌なので、クオリティが低くても誰に責められることもないけど、それを見た人は「箕輪さん、趣味でやったんだね。お疲れ」って反応になっちゃう。だから、今回のサウナ雑誌には何よりもクオリティが本当に大事だった。
コンセプト次第
前田:今って、ブランド価値を高めていると思うのですが、その先に何があるんですか?
箕輪:結局、全部コンセプトだと思っていて、コンセプトさえ決まれば、そのレールの上には何でも乗る。例えば、NewsPicksBookも“自分をアップデートする”というコンセプトさえ決まれば、テーマとかやるべきイベントとかが「あれもやろう、これもやろう」みたいな感じで全部決まっていく。
サウナランドも“野良人間”みたいなコンセプトさえ決まれば、グッズだとかイベントごとがもう全部できる。この前、ちょっとだけ発表したんだけど、肉山さんという有名なお肉屋さんとのコラボで、食べ放題・飲み放題、サウナ入り放題、ほぼ無料みたいな店舗を作ろうとしてて。多分、実現はなかなか難しいけど、発想としては面白いよね。ダメ人間の溜まり場みたいな。
前田:いいですね。箕輪さんって、社会にメッセージを伝えたいっていうタイプではないじゃないですか? 本を作る時はいつもどんな感じのモチベーションでやっているんですか?
箕輪:毎回思うのは、「ふざけてやってたことが、こんな大きくなっちゃったって」こと。それは嬉しくもあり、めんどくさくもあるかな。
サウナだって、半年前に好きで入っていただけなのに、今では僕は「サウナの人」になっていて、サウナグッズを作ったり、サウナでビジネスするなら「まず箕輪さんに相談しておこう」みたいになってる。それこそ「しきじ」っていうサウナの聖地と言われる場所があるんだけど、今やサウナランドのポスターが貼られて、「あっ、箕輪さんだ」って声をかけられお店の方からお土産をもらったこともある。
ただふざけてサウナで「何かやろう」って思っていたのが、半年ぐらい経つだけでこんなに世界が一変して大きくなるのは毎回楽しい。小さい遊びが全国区になっていく瞬間。あーまたなっちゃったみたいな(笑)。
遊びだからやるというコンセプトだからできたデザイン
前田:今回コンセプトが一貫していたので、デザインが引っ張られて良くなったと思います。箕輪さんの中で、デザインはぶれてなかったですか?
箕輪:デザインはぶれてなかった。コンセプトが「偏愛」「丸裸」「混沌」って決まれば、全部の指示が一貫してくる。例えばTシャツ100枚のページを作るにしても、提供画像ではなくて1枚1枚撮りおろしして、デザインも1ページごとに作るというのが偏愛だよね。そういう言葉があれば、みんな納得して自分の中で“偏愛”って何だろうって考えて納得して、そのページをデザインしたり、ライティングできる。でも、そういうワードが無くて「妥協したら駄目だろう」とか「もっとこだわろうよ」とかだと毎回、それは人によって違うから謎の指示になってしまう。
でも、我々のコンセプトはこういう世界を作りたいから「偏愛」「丸裸」「混沌」だよって言って。例えば、インタビューでも青木真也のページに“こじき”ってでてくるんですけど、こじきって差別用語なので、出版物で基本こ〇きとかにするんです。でも、「今回、こじきは差別を表せているわけではないからこのままいけるよね」って言ったのもやっぱり丸裸ってどっちだろうってなった時に明確な差別表現なら削った方が良いけど、そうじゃないからこれは「このままいこう」って伝えました。それはコンセプトがあったからです。コンセプトもなく振り切らなきゃダメだろとかだと毎回わからない。
前田:そこで変な議論になって時間がもったいないですよね。
箕輪:逆に、Tシャツを提供画像だけで組んでしまうっていうのも別に不正解ではない。そういうコンセプトだったらむしろそっちの方が正解のこともあるから。何が正解かっていうのがない中でコンセプトを決めると、一番良いのはデザイナーさんなりライターさんなりがそれを自分で解釈して「自分ならこうしよう」と判断できるからクリエイティビティを限定しないこと。「俺はこういうコンセプトでやるからそれをあなただったらどうしますか」という風に投げれると「こうだと思います」ってできるみたいな。それは大事ですね。
前田:デザインする人は(その点を)めちゃくちゃ大事にしてますよ。こんなデザインなかなか無いですよね。
箕輪:それはやっぱりオンラインサロンとか前田デザイン室だからできる。前田デザイン室のコンセプトの『遊びだからやる』っていうノリじゃないと、多分どこかで「いや、500万円に対して仕事量を超えているので、無理です」とかなる。
仕事でやっていると、「箕輪さん、多分その要求だったら金額上げてもらえないと」とか「納期をどうにかしてください」とか言われてしまって。でも、オンラインサロンや前田デザイン室のコンセプトみたいに自分が楽しいからやっているとかだと、ある種の仕事を超える瞬間があって、とことんまで追求できる。
前田:もっとお金が絡むといろんなこと言われるんですよ。さっきの例でいうと、「ここを青色にして」とか。
箕輪:それは(お金を)払っているから?
前田:そうですね。そういう人と付き合うことになったら、それは仕事でやっているから前田デザイン室でやる意味はないかなって思います。
箕輪:確かに。なるほど。
お互いに競い合って良い雑誌を作れた
前田:(今回の雑誌制作は箕輪編集室と前田デザイン室お互いに)競い合っているところを感じましたね。
箕輪:そうかも。
前田:Discord(※ディスコード。ゲーマー向けのボイスチャット用アプリ。このプロジェクトでのやりとりの場所。)上で「あのページがこういうのだから自分たちはこう工夫しよう」だとか。もちろん、箕輪さんが何と言うかとかデザイン監修の戸倉さん何と言うかみたいなそういう面白さやゲーム性もあったと思います。
箕輪:そうですね。凄かったのは何よりもほぼオンラインで進めたってこと。
前田:うんうん。
箕輪:めっちゃ大変でしょう。一回、会った方が楽だよって。
前田:そうですね(笑)。
箕輪:オンラインでデザインの指示をするって超面倒だけど、やろうと思ったらオンラインでやり切れるって経験は、箕輪編集室も前田デザイン室も財産になったんじゃないかな。
前田:うん。
箕輪:どこかで一回(直接)会おうってなっちゃいがちだけど。
前田:そうですね(笑)。
箕輪:実際住んでいる所が遠すぎるのと、コロナもあってどうにかオンラインでやった。オンラインで雑誌を作ったところなんてあまり無いから、それは(制作する上で)大きかった。
トークの中で印象に残ったエピソード
対談の中で私が印象に残ったエピソードをご紹介します。
仕事でないからこそできた『サウナランド』
雑誌『サウナランド』は仕事でのプロジェクトではなく制作に参加した人が”楽しい”と感じることができたからこそ雑誌制作できたというエピソードを聞きました。
前田デザイン室のコンセプトでもある「遊びながら作っていく」という考えだからこそ作れたとも紹介されていました。
このお話を聞き、コンテンツを制作するうえでのモチベーション維持が非常に重要だなと感じました。
仕事ではお給料をもらっていますが、仕事である以上楽しいばかりだけでなく責任を伴います。
生活をするうえでお金は重要です。モチベーションよりも大事と考える人はきっと多いでしょう。
制作の一連の流れを知って、オンラインサロン内での積極的な行動の重要さと、さらに向上心を高めてたくさん動いて自分の存在を認知してもらうことの大切さを学ぶことができました。
私は前田デザイン室以外にもオンラインサロンに入っているのですが、
今後は前田デザイン室以外でも何かの記事制作やコンテンツの制作に積極的に関わっていきたいと感じた定例会でした。
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【お知らせ】
サウナランドは雑誌だけでなくWebでも記事を公開しています。
サウナランドWebは、雑誌にはない独自コンテンツを継続的に作っていくメディアで、偏愛・混沌・丸裸のコンセプトはそのままに、1記事ずつ丁寧に作り込むスタイルで記事を更新しています。
なるべく取材を行い、読者に寄り添いつつ、サウナや人を愛しまくってしまった記事を作って、サウナランドの新たなファン獲得や、既存ファンのさらなるサウナ愛の醸成につなげていきます。
また、箕輪編集室と前田デザイン室では入会者を随時募集しています。
もし、気になる方が居ればぜひ一度どのような活動をしているのか覗いてみてくださいね。
【箕輪編集室】
幻冬舎の箕輪厚介さんが主催するクリエイティブなオンラインサロン。
ライターや動画、PR、イベントなどを手掛けるクリエイティブチーム。関東や関西、中部など各地域ごとのエリアチーム。定例会や各イベントなどを通して成長できるコミュニティです。
【前田デザイン室】
元・任天堂デザイナー前田高志が率いるクリエイティブ集団。
提案型、受注はしない。仕事とは違ったものづくりを楽しむコミュニティ。
「おもろ!たのし!いいな!」をモットーに、世の中に新しいクリエイティブを大量投下しています。
毎月の定例会だけでなく、同時並行している様々なプロジェクトに自分のペースで関われる前田デザイン室。定例会のアーカイブも見られます!気になる方はぜひ覗いてみてください!
文:中本宏樹
バナー:Takahiro Kimura
編集:浜田綾