「情熱高志」第11号 ー たかしのむかし(たかし“と”漫画 編) ー
このマガジンは、デザイナーから漫画家に転じた「まえだたかし」が記す、前田デザイン室限定コンテンツ「たかしの世界」に加筆修正し、再編集した密着ドキュメンタリーレポートですが、今回は特別編です。
漫画家・まえだたかし。
2019年から本格的に漫画家としての活動を宣言した前田。
そんな前田を鼓舞し、応援しながら、私たちはこの「情熱高志」を毎週執筆している。
今や当たり前に感じている前田高志と漫画の関係だが、そもそも彼はどうして「漫画」という存在に惹かれ、心を奪われていったのか。
そういえば、私たち編集部も彼の漫画との出会いやきっかけを知ることは今まであまりなかった。彼の幼少期や、これまでの人生と漫画の関係性を。
漫画家としては、出発したばかり。
今のうちに漫画家としての原体験を聞いておこうじゃないか!
漫画家としての原点。
そして、漫画としてのこれから。
情熱高志・編集長の浅生が、前田のオフィス「NASU基地」にて、彼に話を聴いた。
この特別編は、今号と次号の全2回でお送りします。
***
たくさん漫画を読めることが、嬉しくてたまらなかった
ーーー前田さんって、いつから漫画読んでいたか、覚えてます?
前田:(週刊少年)ジャンプは、小学一年生の誕生日の時から買ってましたね。そこからかな。
ーーー小学一年生の時から? すごいなぁ。初めて買ったのがジャンプですか?
前田:そうそう。買っていたのもそうですけど、近くに住んでる親戚のお兄ちゃんにもらってたんですよ。ジャンプをごっそり「誕生日プレゼント」って、もらってて。今考えてみたら、もう読み終わったいらないやつですけどね(笑)。でも、それがめっちゃ楽しみで。
ーーーまとまった数を(笑)。でも嬉しいですね。ジャンプとかの週刊誌って結構分厚いじゃないですか? 巻頭から巻末まで全部読みます?
前田:読んでいくうちに、自分の好きなものだけ読むようになったかな。人気が出そうな作品は単行本で後から追いつく感じでした。
ーーージャンプ以外に読んでました?
前田:中学、高校の時はマガジンとか、サンデーも読んでたかな。ただマガジンは、漫画どうこうってイメージじゃなくて。
ーーーというと?
前田:女の子のグラビア見てる感じ。アイドルとか(笑)。
ーーーミスマガジンとかね(笑)。ジャンプだったら、黄金時代ですよね。小学校一年生の時とか、小さい頃はどんな作品を読んでました?
前田:「キン肉マン」(ゆでたまご)、「キャプテン翼」(高橋陽一)、あと「気まぐれオレンジロード」(まつもと泉)。
ーーー「ハイスクール奇面組」(新沢基栄)とかは?
前田:そうだ、それも!めっちゃ描いてましたね。僕以外もみんな描いてた気がする。
ーーーこの頃だと「ウィングマン」(桂正和)や「聖闘士星矢」(車田正美)も流行ってましたよね。
前田:「北斗の拳」も流行ってたかな。ただ僕、あんまり線が多い漫画は得意じゃなくて。
ーーーちょっと劇画のようなものですかね。そうすると「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)とかも読まないですか?
前田:ジョジョは三部で一気に人気が出てから、ようやく単行本で読んでみようかなあと思って読んだくらいですね。でも読んだら。びっくりして。こんなに面白いんだと思った。
ーーーなるほど。色々読む中で、自分の好きな作品が絞られていったんですね。前田さんはよくキン肉マンの話が出ますが、最初から読まれてました?
前田:当時のジャンプってもう話が結構進んでましたよね。だから、最初のギャグ漫画の頃とか知らなくて。
ーーーそうすると、読み始めた頃のストーリーは……
前田:超人オリンピック!
ーーーロビンマスクとかラーメンマンが出てきた頃の! 読むだけじゃなくて模写とかしてたんですか?
前田:めっちゃ描いてましたよ。キン肉マンは一番描いてた。ドラゴンボール出てくる前はね。
駄菓子屋での運命の作品との出会い
前田:ドラゴンボールは第一話の時に買ったんですよ。小学一年生の時だった。
ーーー第一話から。それは運命的ですね。
前田:その時のこと、完全に覚えてるんですよ。駄菓子屋で見て、初めて買ったんですよ。表紙買い、今で言うジャケ買いですよね。最初のシーンで「なんなんこれ」って思って。
ーーー僕もそのシーンは覚えてます!
前田:尻尾を川に垂らして魚をとるシーンね。あれは衝撃的だった。
ーーーキン肉マンの後に衝撃覚えたのがドラゴンボールですか?
前田:キン肉マンは「面白いなー」と思って見てたって感じ。でもドラゴンボールは「衝撃」だった。
ーーードラゴンボールの中で、好きなシーンとかセリフってありますか?
前田:たくさんありますよ。かめはめ波が出てきたシーンはすぐ思い浮かんだ。あとは、修行してるシーンが好きかも。他の漫画や映画でも、主人公が頑張ってるシーンが好きかも(笑)。他にもいろんなシーンが思い浮かぶけど、厳しい戦いの末に強くなることも、主人公が努力とか困難を乗り越えてるってことだから。主人公が努力しているのが好きなんだなぁ。
ーーー共感するんですかね。
前田:「はじめの一歩」(森川ジョージ)って読んでました? あれも、主人公の(幕之内)一歩が負けてからたくさん練習して、どんどん強くなっていくじゃないですか。気づいたら共感していて、高校の時はクラスのみんなで読み合ってた。一歩が千堂と戦った試合なんて、クラス中が興奮してた。
ーーー前田さんもテンション上がりました?
前田:上がりましたよ!その時に初めて「漫画ってそんなリアルになるんや」って感じたんだと思う。人が作ったものなのに。
前田:僕もこんな漫画、描きたいよね。リアルの世界を震わせるような漫画をね。
幼き日の漫画との出会い
面白くて、ただ読んでいたはずの漫画が、一つの作品が与えた衝撃をきっかけに、少しずつ前田の中で大きな存在へと変わっていく。
そして成長するにつれ、漫画から受ける衝撃は自分の中だけでなく、みんなと共感するものへと進化していった。
そして、「読む」存在の漫画から「描く」存在の漫画へ。
次号、特別編第二回は、「たかし”の”漫画」についてお送りします。
お楽しみに!!
***
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私たち「情熱高志」編集部は、これからも「漫画家 まえだたかし」に密着し、情熱をもって描く彼の姿を書き記していきます。
あなたも私たちとともに、彼のまんが道を見守っていきませんか?
「情熱高志」の次回の配信をお楽しみに!