ぬけだ荘の歴史 〜「一人では無理でも、みんなとなら」。現状から脱却する社会実験プロジェクトの始まり〜
オンラインコミュニティ・前田デザイン室(通称:前デ)では、現状に悩みや不満を持つメンバーがそれぞれのモヤモヤから「ぬけだす」ことを目的とした社会実験的プロジェクトを行っています。
プロジェクト名は「ぬけだ荘」。
モヤモヤを抱えたメンバーがバーチャルアパートメント「ぬけだ荘」の仮想住民となり、互いの現状や取り組みを曝け出しながら、一歩一歩、着実に「ぬけだし(=目的達成)」に近づいていく。そのプロセスをドキュメンタリーに追う、社会実験プロジェクトです。
今回は歴史編として、ぬけだ荘はどうして始まったのかについて迫ります。
プロジェクトの立ち上げから、ぬけだ荘のWebサイトができるまでのプロジェクト初期について、当時webサイト制作にディレクター、コーダー、デザイナーとして携わっていた3人のメンバーに当時の話を聞いてみました。
メンバープロフィール
はやぶさ
デザイン会社のディレクターとして、主に会社さんのブランディング、ウェブサイトの制作に従事。現在はぬけだ荘のプロジェクトマネージャー。プロジェクトの立ち上げ時にはWebサイト制作のディレクターを担当。
Twitter/note
みこま
広告代理店のデザイナーとして、webデザインやパッケージ・イラスト、コーディング作業を従事。プロジェクトの立ち上げ時にはWebサイト制作のコーディングを担当。
Twitter/note
ヒロム
病院勤務の理学療法士、デザインの講習会を実施。プロジェクトの立ち上げ時にはWebサイト制作のデザインを担当。
Twitter/note
「現状の自分から変わりたい」人達が集まった
——どうしてぬけだ荘というプロジェクトは始まったのでしょうか?
はやぶさ 2020年の4月頃、前田さん(室長)が当時の前田デザイン室のメンバーと話していて、「現状からぬけだしたい人が多い」っていう事実がわかったのがきっかけです。
そのあとに、前田さんが「ぬけだしたい人集まれ」というnoteを出して、現状に不満があり、ぬけだしたい人を募集するイベントやります、というのが始まりです。そうして立ち上がったのが、ぬけだ荘というプロジェクトです。
最初は“ぬけだし隊”という名前だったんですが、トキワ荘(※)のように「なにかの卵」の人達が集まる場所になったらいいね、という流れで最終的に「ぬけだ荘」って名前になったと思います。
※実在したアパート。手塚治虫や赤塚不二夫、藤子不二雄など、のちの著名な漫画家たちが同時期に暮らしていた。
——現状からぬけだしたいという人が多かったからイベントをやり、それがプロジェクトに変化したんですね。
はやぶさ プロジェクト開始当初は、現状からぬけだしたくて集まったメンバーと、Webサイト制作メンバーの募集という、2つの動きが走っていたかな。
まず、当時のリーダーが先陣を切って「こんな自分からぬけだしたい」という思いをnoteで公開しました。
それがきっかけで、みんなで「ぬけだし宣言を順番に書いていけば盛り上がるんじゃないか」という話になり、次の日は誰々さん、また次の日は誰々さんって、毎日リレー形式でつないで更新して公開して。最後に前田さんのnoteが出て、同じ日にWebサイトが完成するって流れでしたね。
——メンバーの結束力が強くなりそうな取り組みですね。オンラインサロン内のプロジェクトとして、webサイトを独自に作ることにしたのは、どうしてですか?
はやぶさ 理由としては、活動を広めるだった気がするけど……?
ヒロム 内にも外にも発信できるから、webページがいいっていう話になったんですよね。メンバーが新しく入ってきても見られますしね。メンバーのnoteを見て、「この人はこういうことを頑張っているから、助けてあげよう」という助け合い精神が生まれたらいいなって話も出てたので、「じゃあnoteをまとめて掲載できるwebページを作ろう」という流れになりました。
はやぶさ そうですね。それと、Webサイト制作自体をイベント化してプロジェクトを盛り上げたい、というのもありました。
ヒロム webサイトを制作する過程で、みんなも意見が出せるし、参加しやすいんじゃないかって。
はやぶさ オンラインイベント中に、話がどんどん決まっていったんですよね。
Webサイト制作について
ーーすごいライブ感のあるつくり方だったんですね! Web制作部隊のチームも、いくつかのチームがあったんですよね?
はやぶさ デザインチーム・コーダーチーム・ライティングチームの主に3つで動いててって感じかな。
みこま 多分、ライティングがいちばん大変そうだった...…。
はやぶさ ライティングは、えぐかったね(笑)。3人でやっていて、たまに僕含めみんなで話したり、プロのライターさんから助言をもらってたりしましたが、まあ決まらないっていう。
ひろむ 言葉って難しいですよね。言い方一つで全然印象が変わるし、なかなか答えが見えてこなかった気がします。
みこま 作って、戻して、作って、戻して(笑)。
はやぶさ ライティングだけ、公開までの時間が迫るなか、いつも3時間くらいミーティングしてましたね。それでも全然決まらなくて、たまに「ぬけだ荘とは、社会実験です」みたいに音読して、喋ったあとに「どう思います?」とかやってましたね。
——うわぁ…大変そう……。Webサイトのコンセプトづくりも大変そうですが、すんなり決まりましたか? 決めはどれくらい時間をかけたんですか?
はやぶさ コンセプトを決めるのに1カ月ぐらい使いました。
——そんなに……!
みこま 作りながら内部向けのサイトにするのか、外部に向けてのサイトにするのかの、目的のすり合わせが大変でした。最終的にぬけだ荘の参加メンバーが交流するようなページという役割だけじゃなくて、基本外部に向けてぬけだ荘プロジェクトを紹介するためのページという目的にしました。
コンセプトなどについてFigma上で作成していた
——ほかに、Webサイト制作でみなさんが大変だったエピソードはありますか?
ヒロム Webサイトに掲載されている「ぬけだ荘」の書籍の装丁のイメージデザインです。前田さんから直接フィードバックをもらって修正するというラリーを短期間で何度も繰り返しました。期限に間に合わせるために早く返さないといけないし、必死でした。
当時の装丁イメージ
みこま 私はコーダーチームだったんですが、コーディングは、1つのページを4分割して作っていたので、最終的にまとめる作業が大変でした。
初めのルール決めなどが曖昧で、それぞれのコーディングの仕方がバラバラになってしまい……。最後、私がまとめるときにクラス名とかコーディングルールを変えたりして作っていました。住民名簿のところも、時間かかりましたね。
サイトの住民名簿
ホームページは、ぬけだしの序章に過ぎない
——Webサイトの公開と同時にプレスリリースも出しました。オンラインサロンとしては珍しいことですし、外部発信のためのサイトだということが伝わってきますよね。
はやぶさ 前田デザイン室としても、大々的に出したかったコンテンツの一つだったかなと思います。
——ぬけ出したいっていう人はいるけど、集団でやる社会実験みたいなのは、あんまり聞かないですもんね。実際にこのページが完成したときの気持ちはどのような感じでしたか?
ヒロム 達成感……やり切った感がいちばんにくる感情ですかね。
みこま 怒涛でつくりあげたので、チェック期間もそんなに取れてなかったことへの心配が大きくて。数日間、いろんな方にいろんな機種でチェックしてもらったけど、リリースしてからも表示に問題がないかという不安のほうが大きかったです。
はやぶさ 二人と同じように、やり切ったなっていうのと、Webつくるのめちゃめちゃ大変だなって思ったんですよ。Webの知識が備わったのはもちろん、「こんなに沢山の人に動いてもらわなきゃできないんだ」という意識が変わったのはよかったと思いました。
一方で、プロジェクトの運用としては、完成と同時にこのプロジェクトを継続させなきゃいけない、これからどうしていこう、という焦りが同時に走りましたね。
——そうですよね。Webサイトをつくって終わりじゃなくて、そこからプロジェクトが本格的に始まるんですもんね……!
みこま サイトを作ってるときは、どうしてもそのことで頭がいっぱいになってしまうんですよね。でも運営の方が、「Webサイト作りがメインではないよ」という方向修正のアナウンスをしながら進めてくれてたのを、すごく覚えてます。いざサイトを作り終わると、これからの「ぬけだし活動」について話しをしてくれましたよね。
はやぶさ Webサイトを公開して終わりじゃなくて、ここからプロジェクトがやっと始まる、という感じでした。
(終)
「一人では無理でも、みんなとなら」
人は誰でも「もっと素敵な自分になりたい」という悩みがあります。一人一人悩みは違えど応援しあえる関係を作るために、ぬけだ荘プロジェクトは始まったのです。
前田デザイン室というコミュニティに留まらずより多くの人に伝えたい、という強い思いが込められて完成したWebサイト。「自分だけじゃないよ」と今路頭に迷っている人たちに救いの手を差し伸べていけるように多くの人に届いて欲しいです。
聞き手・原稿 くま
編集 郡司しう
バナーデザイン HAL
Special Thanks 高野隼、カナ、うえさま
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