「話すのもしんどい」竹村俊助、前田高志 対談
こんにちは!前田デザイン室30期コミュニティマネージャー枠のmanamiです。日々、コミュニティについて考えたり、動いたり、面白おかしく過ごしています。
前田デザイン室ではゲストの方をお呼びして、毎月定例会を行っています。
8月4日のゲストは、7月29日に『書くのがしんどい』を出版された竹村俊助さん(以下、竹村さん)!!!
竹村俊助(たけむら・しゅんすけ)/編集者、株式会社WORDS代表取締役
1980年岐阜県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本実業出版社に入社。書店営業とPRを経験した後、中経出版で編集者としてのキャリアをスタート。その後、星海社、ダイヤモンド社を経て、2019年に株式会社WORDS代表取締役に就任。SNS時代の「伝わる文章」を探求している。主な編集・ライティング担当作は『段取りの教科書』(水野学)、『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平、以上ダイヤモンド社)、『メモの魔力』(前田裕二)、『実験思考』(光本勇介、以上幻冬舎)など。手掛けた書籍は累計100万部以上。オンラインメディア「note」に投稿した「WORDSの文章教室」は累計150万PVを超える。
室長の前田高志さん(以下、前田さん)と竹村さんはお付き合いが長く、2018年に前田デザイン室で取材をしたことがあります。よかったらそのときの記事を覗いてみてください。
◆竹村さんの屋号「WORDS」のロゴができるまで。
今回は、いつもの定例会よりも早い開催、17:00のスタートでした。イベント数日前に前田デザイン室内で、質問を募集しました。
『書くのがしんどい』出版の狙い
前田:今日は、定例会のゲストに来ていただきありがとうございます。早速ですが本についてのお話を伺います。出版の目的としては、竹村さんを知ってもらうことですか? 竹村さんの最近の悩みでもある、弟子?社員?を探すってところも、あるのかなと思ったんですけど。
竹村:確かにそれもありますね。前田さんは、会社にして、社員を雇ってすごいなぁと思います。
前田:人が増えるとだいぶ違いますよ。
ラクさはそこまで感じてないですけど、圧倒的にサイクルが早くなりました。でもそれは、余計忙しくなる可能性も秘めていますけどね。
竹村:確かに。
出版の目的は、これをきっかけに書いてみて、力つけてみて、というメッセージを伝えるためですかね。本を読んだだけだと、なかなか文章は上手くなったりしないので。
前田:「上手くなったりしないので」って言っちゃうんですね。
竹村:本にも書いてますけど、テニスの教則本を読んでも、テニスが上手くできないじゃないですか。いかにこう、読まれない文章を、今後書けるかってところじゃないかと思うんですけどね。
竹村流、文章力UP”自分の主観のワナ”から逃れる方法
前田:竹村さんは、どうやって文章力を上げたんですか?
竹村:僕、どうかな......。人って、評価されるのが怖いじゃないですか。
本にも書いたんですけど、スキル、文法、表現とかよりも、自分の生み出したものが世間からどうみられるかが怖いから、踏みとどまっている人が多い気がして。僕の場合は、ツイートなのかな。140字いっぱいいっぱいで書いたりするんですけど、「あっ今回いい感じで纏まったなー」と思っても全然バズらなかったり、逆に肩の力を抜いて書いたら、”いいね” がついたりします。
前田:世間のフィードバックと照らし合わせて、試行錯誤しているってことなんですね。
竹村:そう。一昔前だと、テクノロジー的にできなかったのですが、最近はTwitterやnoteもありますしね。これらを活用すれば、フォロワーさんに身近な編集者となってもらうことができます。
前田:竹村さんがTwitterをやり始めたのって3年ぐらい前ですよね?
竹村:そうですね。会社を辞めようと思ってからのことなので。会社を辞めたい人は、こんな風に書くことから始めるといいかも。
前田:文章の書き方は出版社に入って、誰かに教わったわけではないんですね。
竹村:そう。上達方法で言うと、人の文章を直すのはいいかもしれない。人の文章を直すのなら、できそうでしょ?
デザインだと世界が違うのかもしれないけれど、「この線が曲がっていておかしいな」とか、「なんか可愛くないな」とか。文章も「読んでるけど、なんにも入ってこない」とか。「要するに、これが言いたいんでしょう」とか。そんな風に、他人の文章にイチャモンつけるといいかも。
自分一人で書いて(一人で)編集して(一人で)アウトプットをするって、すごい大変なことだなと、僕も思います。
自分の文章だと赤字を入れにくいです。この本も1年以上かかりました。編集担当は僕に気を使ってあんまりカットしてくれないので、320ページになっちゃった。他人の文章であればガンガン「ここ面白くない」って削れるんですけど、自分の主観のワナみたいなのがあるなと思う。
前田:人の文章を直すことで、わかるんですね。
竹村:そうです。服装も自分ではオシャレってわからなかったり、似合わないと思っていたものが似合ってたり、逆もまたしかりです。美容室に行っても「この髪型、似合いますよ」って言われても自分ではピンとこなかったりするので。
一人でやるなら、自分でまずは書いて、記憶が薄れた次の日の朝に見る。時間を置くことで客観視できるので、ちょっとわかりにくいなと思う箇所は、赤字を入れることもあります。
なるべく客観的にみて、一人二役で、著者と編集者をスイッチするのがいい。こういったサロン(前田デザイン室)があれば、仲間同士でやったりするといいですね。浜田さんとかライターさんにチェックしてもらったりするとよさそうです。
ここからは、前田デザイン室メンバーから集まった質問に答えていただきました。
Q1.文章の書き方がいいと、意識している人はいますか? 理由も併せて聞きたいです。
竹村:村上春樹さんですかね。本の中に例として出てきたかもしれないですけれど。数秒おきに、「えっ?」って思わせる表現が出てくる村上春樹さんの文章が好きなので、影響を受けている気がします。
あとは、編集者の柿内芳文さん(『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健著(ダイヤモンド社)などの編集を手掛けている)は親しいので、彼が編集された本を読んで、「飽きないように工夫しているのはここだな」と考えます。
Web系だと......糸井(重里)さんとかかな。ひらがな文体と呼んでいますが。糸井さんは絶対に、難しい熟語を使わないじゃないですか。やさしいことばで、でも深いことを言ったりするのは糸井さんのすごさですかね。
古賀史健さん(株式会社バトンズ代表、ライター。先述の『嫌われる勇気』を共著)もわかりやすい文章を書きますよね。すごいなと思っています。
Q2.編集やディレクションするときは、細かく赤入れしますか?それとも「こう言う風にして」ってあえて抽象的な指示をしますか?上手くできなくて悩んでいます。
竹村:僕もできないです......。
一番、ネックなところです。それができないから、結局自分で書いちゃう。もともと編集者なので、本来はディレクションして、書き直してもらって最終形にするのが仕事なんですけど、いろいろやっているうちに自分で書いてしまいます。それを許してくれる書き手じゃないとダメだし、許してくれない人は、そのまま記事を出しちゃいます。
前田:難しいですよね。
竹村:そうですね......。細かく赤入れするとしたら、「これを読んで、どうして欲しいの? 読み手に何を伝えたいの? どういう感情になって欲しいの? 」という問いかけをするかな。その上で「これだけは、伝えたいんですよ」って本人に言われたら、「じゃあ、それを一番前にもってきたほうがよくないですか」という伝え方をするかなぁ。
「読者はこう思う」を赤入れに書いてあげると、フィードバックになると思います。「わかりにくいと思われそうです」とか「冗長だと思われそうです」とか。
今、思いついたんですけど、こんな風に感情から逆算するっていうのは、ありだと思います。
Q3.書いたら面白いかな、と思う出来事がよくありますが、いざ文章にしようとすると手が止まります。そういうときがあるかどうかと、どう打開しているか伺いたいです。
竹村:ありますね。そんなときはメモしておいて、熟すのを待つんです。今、ネタで書こうと思っていることがあるんです。食事中の人いたら申し訳ないんですが、自分のうんこってクサくないじゃないですか。
前田:いや、クサいです(笑)。
竹村:え? でもなんか、「うぁ!くっさ!」って死にそうなのが出てくるときはないじゃないですか。
前田:嗅ぎたくなるやつですね?(笑)。
竹村:そうですね......。嗅ぎたくなるか、わからないですけど。おならでもいいや。自分のおならって愛おしいじゃないですか。でもこれが人のだと、仮に家族でもクサいじゃないですか。あれって、主観と客観に似ていると思っているんです。自分の書く文章って、何が悪いか、わからないんです。
前田:なるほど! むっちゃいい、その話!
竹村:ありがとうございます。でもこの話をツイートしたくても、うまくまとまらないんです。自分のうんこくさくない説だと、ちょっと下品かなぁって思ってしまって。
主観のワナみたいな話にしようかなって考えています。メモしていて、すぐ書けるときと、2〜3日かかるときがあります。自分の文章はよく見えるって書いたほうが伝わるかな、とか。
前田:この質問はあれか。書けないことを、どう打開してるかってことも聞いてくれてますね。
竹村:そうか......。どう打開しているかは、僕の場合、走っている間にまとまったりします。あと、寝たり。
これって話題を広げたいっていうよりは、まとまらないってことかな? それなら、音声入力で「こうこう、こういうことがあって」って、友達に話すみたいにしてメモをします。その後、できれば、紙にプリントアウトして、それだけを持って喫茶店に行きます。そうすると、他に余計なことを考えなくなるので、集中して整理できます。たぶん、普段は考えることが多すぎるから、まとまっていかないんだと思いますよ。
前田:考える時間を取るってことですね。
Q4.どのように集中力を保ちますか?
前田:幻冬舎 編集者の片野貴司さんからの質問ですね。
竹村:集中はできないもので、1日に2時間集中できればいいほうだと思っています。
僕、毎日大体11時ごろに上島珈琲に行って、昼の1時、集中できるときは2時ぐらいまで喫茶店にいます。仕事が始まって1〜2時間を集中の時間に決めて、そこに一番難しい仕事をするんです。午後はこうやって誰かとしゃべったり打合せに充てています。
集中できる環境を無理やり作るために、スマホは会社や家に置いて、ネット環境のない状況を作ります。Mac Book Airはネットが繋がっちゃうので、ポメラっていうミニワープロみたいなものに文字データを入れて喫茶店に持っていきます。例えば前田さんの原稿入れると、そのことしか考えなくなるので、すごく集中できるんですよ。
スマホを持って行くと、Twitterをみてしまうし、FacebookやLINEの通知がくるし、結局集中できないんですよね。
前田:集中できる環境を整えるってことですね。わかっててもなかなかできないので、すごいです。
Q5.目次の作り方にコツはありますか?本を作るとき、このような構成にするとよい、など竹村さんのセオリーがあれば教えてください。秘密だったらすみません。(古下頌子さん/編集者)
竹村:秘密ですね。
……うそです。秘密は別にないですけど(笑)。
どうしてるんだろう、目次のつくり方......。
文章は共感から始まって、発見があって、最後はしんみりってしてるんですけど、本も同じかもしれません。
”はじめに”、の導入で共感してもらって、1,2章ぐらいでドキッとする内容を書いて興味を引きつけ、最後の章でいい話にして終えるっていう形です。
『書くのがしんどい』の場合は、「書くのってしんどくないですか?」と共感してもらって、「その理由として、書くことがないとかいろいろありますけど」と、一個づつ覆して発見してもらい、最後は「書けば人生変わるよ」っていう、ちょっとシェアしたくなるような、ちょっと感動できるような話で終えるようにしました。
柿内さんも言っているんですけど、読後感が意外と大事です。
”はじめに”は集中して書くんですけど、最終章や、”おわりに”、は謝辞だけで終わったり、2章まで頑張ったのに、3章以降グダグダとかよくあります。
柿内さんは最終章で畳みかけるように書いて、最後は「この本よかったよ」って言ってもらえるようにすると話していました。
本を読み終わった後、「めっちゃいいから読んでみて」って言ってもらえるかをシミュレーションします。最初は頑張るんですよね。
前田:終わりよければすべてよし、ですね。
竹村:前田さんの本は、”おわりに”ってできてるんですか?
前田:文章のリライトは、片野さんがむちゃくちゃやってくれてます。
”おわりに”はまだないので、いまから作りこみします。
竹村:”おわりに”を、エモい感じにするといいですよ。これよかったっすよって言ってもらえるような。
前田:涙のシミとかつけようかな。
竹村:確かにありかもしれないですね(笑)。
構成も、さっきの「感情からの逆算」でやるといいですよ。
例えば、6章立てだと4章、5章あたりで読者は飽きてきます。2行ぐらいでいいと思うんですけど、『そろそろ飽きてきたかもしれないが、ここは大事なので今一度集中してほしい』という表現を入れるだけで、「飽きてきたけど読まなきゃ」ってなります。
前田:なるほど。ありがとうございます。これ、編集者さんからの質問だから、普段聞けない話でいいですね。
Q6.『食べやすい文章』が書けるようになりたいです。
竹村:『食べやすい』っていうのは、「読みやすい」「消化しやすい」ってことですよね? そうするためのノウハウは本に書いてしまいました。
食べやすいものってなんですかね? 豆腐とか? カレーとか?
文章でいうと、熟語を使わないとかかな?
ちょうどいい例があります。
雇用調整助成金のQ&Aのところなんですけど、何を言っているか、わからなくないですか?「助成金の対象になります」としか言ってないんです。これ、理由いらないんですよね。
これが『食べやすい』だと思います。
日常語で、「生産指標」って使わないじゃないですか。「売上」ならまだ使ったことがある。「売上とは違うんです!」と役所の人は言うかもしれないけど。僕の会社もまだ一年に満たないので、「要するに対象になるのか」が知りたいと思う。
だからこの例のように、「結論を言う。わかりやすい言葉で言う。いらないところは全部削る」を意識するといいかもしれないですね。
Q7.”素直に書いた”つもりでも、どこか”かっこつけた文章”になってしまいます。素直に書くために、まず、するといいことがあれば、教えていただきたいです。
竹村:うーん......。どうすればいいんだろう。僕もかっこつけた文章になりますが、素直に生きることですかね。前田さん、何かありますか?
前田:素直に生きるって、僕もそんな気がします。Twitterで文章を出すと訓練になるって、竹村さんも本に書いていますが、普通はさらけ出せないんですよね。
竹村:かっこつけてても、バレているんです。読む側は素直に受け取るので、素直に書いたほうが、伝わります。僕は、自分にそう言い聞かせています。
前田:いろんなところで見てきた、”かっこつけた文章”が出ちゃいますね。
竹村:そうなんです。素直な文章が書けるって才能です。LINE NEWSで活躍する嘉島唯さんとか、作家の岸田奈美さんとか、素直でおもしろいじゃないですか。岸田さんは素直に書けて、さらけ出せる人なのかなって思います。素直に、この本を読んで書いてみてください。伝わればいいので。
前田:今日はお話たくさん聞かせてくださり、ありがとうございました。
竹村:前田さんだと、リラックスして話せました。またお願いします。
おわりに
前田さんは『勝てるデザイン(仮)』を出版予定。
”書くこと”について、思考を巡らせているお二人の対話から生まれる”発見”がとても勉強になりました!
竹村さんが新たに運営を始められた『書くのが楽しくなるbot』も、是非ご覧ください。読むと勇気が湧きます!
竹村さん
貴重なお話、ありがとうございました!
文:manami
編集:遠藤良二、前田真里、浜田綾
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