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君は進化できるか?デザイナー新時代到来

トークイベントでは「デザイナー4.0」という、やや「2.0」ブームを皮肉ったタイトルをつけた。でも真意は「デザイナーは進化して行くべき」だというメッセージ。僕自身が固定概念にとらわれず進化して行きたいという気持ちだ。このトークイベントのあと、スタンダードブックストア社長中川さんが感想コメントをくれた。「このトークイベントの内容、形に残ってないの?」「西野さんや、〇〇さんが言ってることとすごく近い。絶対残したほうがいい」と言ってくれた。中川さんはトークイベントを毎日死ぬほど開催して来た人。そんな人にこんなコメントをもらって死ぬほどうれしかったのを覚えている。


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これは、18年間のデザイナー人生を終えるぼくが、20代の自分へ向けたメッセージだ。デザイン業界へのコンプレックスに苦しみ、もがくようにデザインの専門書を読み漁り、フリーランスになることを10年以上も恐れていたぼく。今から伝えることが、新時代を生きる若きデザイナーたちの背中を少しでも押すことができたなら。こんなに嬉しいことはない。


デザイン業界なんてものは溶けてなくなる。我が道を突き進め。

ゲーム業界にいたぼくは、デザイン業界に死ぬほどコンプレックスがあった。

ゲーム会社にも、良いデザインは重要だ。でも、自分たちが何に「命」を掛けているかという話で。デザインに「命」を掛けているのは、間違いなくデザイン業界だ。その時は若かったのとデザイン業界にいないというコンプレックスで、そう思い込んでいた。

2000年代はまだ広告も元気で、デザインブームだった。そんな中、ぼくはデザイナーとして置いてけぼりにされる感覚に陥っていた。デザイン業界に就職した大学の同期が広告で賞を取り、同じ世代のデザイナーが雑誌に載る。そんな姿を目にするたび、焦りばかりが膨らんだ。

転職することで、デザイン業界に飛び込もうとしたんだ。

でも実際は、デザイン業界なんてものはただの幻想で。昔は流行ったデザイン雑誌も、今ではほとんど見かけない。

今ぼくは、どこの業界だなんて全く気にしない。それくらい、色々なことをやってるから。

デザイン業界というと「紙」「広告」がメイン。でもぼくは「グッズ」や「空間」も作る。前田デザイン室では「出版」もする。むしろ、デザイン業界にいなかったからこそ、会社を辞めたあと吹っ切れたように挑戦できた。

雑誌制作未経験者が9割を占める『マエボン』が色んな常識をすっ飛ばして全国の有名書店に並んだことなんて、業界の垣根が溶けていることがよく分かる例だ。

デザイン業界にいたデザイナーは、会社を辞めた後はクライアントの繋がりで仕事をもらうことが通例。集客に力を注ぐ必要がない一方で、これだとクライアント側がどうしても「依頼してあげてる」スタンスになりがち。しかも、回ってくるのは誰でもやれる仕事だったりするから、ワクワクしない。

ぼくには、そんな繋がりが全くなかった。だからTwitterやブログを使って、集客をイチから始めた。「自分はこうだ」と発信すると、クライアントは「この人に頼みたい」と思って依頼してくれる。すると、いい仕事ができる。自分のデザインを求めてくれる人のためのデザインだから。

業界に、縛られるな。常識を、吹き飛ばせ。
我が道を、突き進むんだ。

フリーランスは怖くない、恐れるな

会社を辞める一番の不安は何かと聞かれると、「お金」と答える人が多い。かつてのぼくもそう。でも、ある時気が付いた。お金は、今自分の手元にないだけで、無くなるわけじゃないってことに。

ブログを始めてしばらくしたころ、渋谷でデザインセミナーを開いた。1人7千円で、定員15人。これが、一晩で埋まったんだ。その時は知り合いが来てくれたというのもあったけど、手応えは感じた。1ヶ月後に同じ場所で開いたとき、今度はブログでぼくのデザインに興味を持ってくれた人が来てくれて。その中から、3人もお客さんができた。

ぼくのお金は手元にないだけで、セミナーを開けば仕事は入ってくる。自分がお金に変換する何かを持っていることに気付いて、安心した。


大切なのは、背伸びしないということ。「良いことしか言っちゃいけない」「失敗してはいけない」「ちょっとでもよく見せたい」と思ってる人って、見てて分かるから。だから変ながんばり方をしてる人って、全然価値が上がらない。

人に合わせ過ぎるから、怖くなる。
変ながんばり方をすると、自分の価値は下がってお金は逃げていく。


ポイントは、がんばるのをやめて「自分を保つ」こと。すると「あなただから、仕事を頼みたい」という人が現れる。


自然体でいることこそ、ブランディングだ。
そのことに気付けたなら、もうフリーランスは怖くない。


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✔効率的なデザインの上達方法
✔デザイナーが、アートディレクションを身につけることの意義
✔どういう人物が伸びるのか?

一つでも気になる!という方は、ぜひお付き合い頂けると嬉しいです。

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効率的なデザインの上達方法を伝授する



18年間のデザイナー人生で、試行錯誤の末たどり着いた効率的なデザインの上達方法。それが、この3つだ。

1.型を真似る
2.「なぜそれが良いのか」を言葉にする
3.一点突破の道を選ぶ


1.型を真似る


まずは、良いと感じた「デザインの型」を真似てみよう。パーツの関係性や構造に着目して、自分のデザインに応用するんだ。


「パクるみたいで嫌だ」という人もいるけど、そうじゃない。

前提として、デザイナーはアート作品を作ってるわけじゃない。目的を達成するための手段として、デザインするんだ。アートとデザインは混同されがちだけど、全くの別物。かといって丸パクリはもちろんダメ。型を応用することは大切だ。

どんなデザイナーでも、自然と「良いな」と思うデザインに影響を受けている。斬新に見えるデザインも、既存の型の組み合わせであることが多い。だったら最初から良いと思うデザインを集めておいて、その中で一番良い型を選んで使う方が効率的だ。

2.「なぜそれが良いのか」を言葉にする


「良い」と思えるデザインに出会ったら、ファイリングする。そして何に対して「良い」と感じたのかを、言葉にしてまとめよう。


すると「良いデザインのポイント」が頭の中にストックされて、デザインするとき「これで行こう」と即座に思い出せるようになる。見た目だけじゃ気付かなかった「良い」と感じるデザインの共通点も見つかるかもしれない。

水野学さんが言うように「センスは知識」で決まる。まさに、デザインとは引き出しの量と選択だ。


ぼくは若いころ、この言語化をあまりしてこなかった。何度か始めたことはあったけど、三日坊主で終わってしまう。具体的には「自分が良いと思ったデザインをファイリングする。」これもめんどくさくなってすぐにやめてしまった。


もし、若いころからコツコツ続けられていたら。デザイナーとしてもっと高みへ行けたかもしれないと、後悔してる。

3.一点突破の道を選ぶ

ぼくに完全に向いてなかったのは、WEBデザイン。2000年代にWebデザインの波が来た時、教科書パラパラめくりながらhtmlやflashを作っていたことがある。でも、どうしてもコードを書くのが苦手で。本当に向いてないと思った。

だからぼくは、アートディレクター一点突破の道を選んだ。WEBデザインは、できる人に任せてしまおうと決めた。

新しいことをやってみるのは大切。だからこそ、決められることもある。


でも向いてないと分かったら、さっさと切り替えてしまおう。

デザイナーは、アートディレクションを身につけろ


デザインの価値の最大化をする、アートディレクション。


デザインをかっこよくするのか、かわいくするのか。シャープにするのかシュールにするのか。目的のために最適な世界観を選んで、全体のクオリティを上げていく作業のことだ。


自分がアートディレクターになりきってこの過程を考えながらデザインすることで、デザイナーのレベルは一気に上がる。

アートディレクションの目線を持つと、企画力が磨かれる。実際、良いデザインが出てくるかどうかは「企画」によるところが大きい。作っている本人が楽しめないと、良いものはできないからだ。


デザインも企画もできるようになると、仕事の幅はさらに増える。どこにでも企画が出せるようになる。採用されることで、心からその仕事を楽しむことができる。


アートディレクションを身に付けて、自分の価値を最大化しよう。

The こういうやつが伸びる


任天堂、大阪芸術大学、専門学校、箕輪編集室、前田デザイン室。たくさんのクリエイターを見てきたぼくが思う「一番伸びる」タイプ。


それは、何にでも興味を持って、すぐやる人。


結局は、何でもやってしまった者勝ち。やったら勝てる。みんなやらないだけで。柔軟性と行動力を持って、躊躇せずにやってみる。そこで「違うな」と判断したら、止めればいい。

ぼくが昔マネージャーをしていた、任天堂のデザインチーム。その中で一番優秀で、今も活躍してるのがこのタイプだ。

元・任天堂社長の岩田聡さんも、かつて同じことを言っていた。


ぼくが入社1年目のとき、当時役員だった岩田さんが教えてくれた「優秀なクリエイターの条件」。それは「何にでも興味をもち、好奇心が旺盛」であること。このタイプが、いずれ優秀なゲームクリエイターとして活躍すると。


当時は「なるほどな」と聞いていた。
18年間のデザイナー人生を経て、全くその通りだと確信してる。


時代は変わっても、この本質は変わらない。
新たな時代に進化し続けるために。

躊躇せず、動くんだ。

おまけ:手紙

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本日はスタンダードブックストア にお越しいただき、誠ににありがとうございました。

本来『マエボン』の刊行記念でのイベントでしたが、ぼくのわがままで無断で「さよならデザイナー引退記念」のイベントにしてしまい、浜田さん、スタンダードブックストア中川社長、すいませんでした。

『デザイナー4.0』


会社員としてのデザイナー、副業したり、Youtubeをやってみたり。フリーランスになってからは。ブログをやり、Twitterをやり…そしてオンラインサロン。僕はそうしてきました。

最初からデザイン会社にいたら、今の行動にはなっていないでしょう。
もがき苦しんだ。悩んだよ。

今日何が言いたかったかというと「固定概念にとらわれず、恐れず、進化せよ」ということ。『デザイナー4.0』は5.0でも6.0でもいいんです。「時代にあわせて絶えず進化していこう!」というメッセージです。


クオリティを求めた20代…。何かを探した30代…。
そして、「前田デザイン室」にたどり着いた40歳。


『マエボン』をみんなで作って「俺がやりたかったのは、これだ!」と確信し、達成感を感じました。


気付いたらいろんな進化を繰り返し、たどり着き、今のぼくになりました。


正直、デザイナーとして、今ノってます。
デザインをもっとやりたい気持ちがあります。


でも、漫画の道へいきます。きっと、後悔するから。


このままだと、ぼくの身近な人は「ほんとは漫画家になりたかったんだよね」って何回も聞かされることになる。会社を辞めるまで10年以上かかったくらいだから。佐渡島さんに声を掛けられるくらい大きなきっかけがないと、動けないんです。


デザイナーを引退して41歳で漫画家になる。はっきり言って絶望するくらい下手くそです。でも、漫画だってデザインだ。デザインは得意なんだ。


「デザイナー5.0」へ。


みなさんもぼくといっしょに進化していきましょう。


あらためて本日は平日のお忙しい中、ありがとうございました。モデレーターの浜田さん、いつもありがとう。中川さん、この場に立てて光栄です。この機会をくださり、本当にありがとうございました。


まとめ

1.溶けて無くなる業界の垣根
①デザイン業界に縛られるな
 やりたいなら、やれば良い。今はそれができる時代だ。
②自分を求めてくれる人のデザインを
 ありのままの自分を発信することで、自分のデザインを求めてくれるクライアントから依頼が来る。これが、良い仕事につながる。
2.フリーランスとお金の不安
①お金は今手元に無いだけで、別の場所にあると思え。
②自然体でいることが、自分の価値を上げる方法
③お金と交換できる「価値」が自分にあると気付けたら、フリーランスは怖く無くなる
3.デザイン上達への近道
①次の3つをやってみる
(1)型を真似る
(2)言語化する
(3)一点突破の道を選ぶ
②アートディレクションを身に付ける
デザイナーは、自分の担当するデザインだけでなく、アートディレクターになったつもりで、全体を見て考えてデザインすること。
4.進化系デザイナーになるために
好奇心と、すぐにやる積極性。これこそ、将来性の素養。


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スタンダードブックストア心斎橋は4月7日で閉店。それにともないマエボンのお取り扱いも終了しました。中川社長は今、新しい店舗に向けての準備をしているようです。

中川社長、新しいお店ができたら、またそこに置いてもらえるような本を作りたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

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▼前回の記事はコチラ▼
選ばれるデザイナーになるために

テキスト:杉本まゆ
構成・編集:谷下由佳
編集長:谷下由佳
写真:杉元恵子
バナー:たなか
監修:前田高志浜田綾


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