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【座談会】ずっと読まれる進化系イベントレポートの作り方。

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「新時代を生きるデザイナーのための教科書」をテーマに走り続けてきた『前田が行く』シリーズ。もともとは、よく見る“普通のイベントレポート”になる予定でした。ある悩みを解決するために今のスタイルに進化させたところ、632スキを獲得した記事まで誕生し、長く愛される本のようなコンテンツへと成長したのです。今回は特別編として、座談会で語られた制作の裏側をお届けします。

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(左から:前田デザイン室室長・筆者 前田高志/前デ出版リーダー 浜田綾/『前田が行く』編集長 谷下由佳/デザイナー たなか



あえて速レポの逆を行く。もどかしさから生まれたのは"本“のような読みものシリーズ。

谷下:前田デザイン室の雑誌『マエボン』が全国の有名書店に置かれたことをきっかけに始まった前田さんの全国講演。これらを記事化した『前田が行く』シリーズを企画したのは浜田さんでした。よく目にするイベントレポートとはまた違う切り口で、新しい試みでしたね。

この企画は、どのようにして生まれたのですか?


浜田:そもそも前田さんのトークイベントは、毎回内容が違います。だから、これを記事にすればいいのでは?と考えました。


これは個人的な理由ですが、書店のイベントは私もモデレーターをさせてもらうことがあったため、自分で速報レポートが書けないことを歯がゆく感じていました。だから、即座には出せないけれど、後から読んでも面白い読み物に変えようと思いました。


実際は対談形式だったりモデレーターがいますが、前田さんの一人口調で本のようなコンテンツにしたらおもしろいんじゃないかと。そこから『前田が行く』がはじまりました。


前田:イベントレポートより、読み物コンテンツとして作って正解だったね。その場の雰囲気を伝える体験レポートより、読者が持ち帰られるものがあるから、結果いろんな人が読んでくれる


浜田:要は「速さ」か「深さ」だと思っています。どちらかに振り切った方が読まれますよね。前田が行くの場合は「深さ」ですね。


編集者の異なる記事。一定の質を保つために大切にしている2つのこと。


浜田:最初の記事は私が書いて、2回目からは谷下さんに編集をお願いしました。すごくざくっと「こんな感じで〜」と伝えて。それで、本当に同じ感じで書いてくれました。当時も普通にすごいと思いましたが今はさらにすごいと感じます。身内で褒めあうのもあれですが…。


前田が行くは編集者が違う時もあるのですが、一定の質を保てているなと感じます。その辺工夫はありますか?


谷下:1つ目は、必ず「1記事1テーマ」と決めることです。


要は、記事の軸をガチッと決める。もちろん、トークイベント自体毎回しっかり練られていますし、それぞれテーマもあるのですが、その中でもっと絞ります。

2時間〜3時間のトークを文字起こしすると、だいたい3万字くらいになります。結構膨大です。それを最終的に、4000字〜5000字にまとめます。しかし困ったことに、話が全部おもしろい。だから、ついあれもこれも入れたくなる。そう言って全部拾ってしまうと、読んでいて疲れる文章になってしまいます。イベント会場で聞く2時間がどんなにあっという間でも、読むとなるとまた違いますから。

だから最後に全体を通して軸から浮いてる部分を見つけたら、おもしろくても涙を飲んで削除します。川で水が美しく流れるように、余計な岩を取っていく感じです。飽きさせない工夫は必要だけれど、それが読者のストレスになってはいけない。デザインと似てますね。


2つ目は、本人になりきる努力をすること


トークをただ文字にしたものには、話手の声色も、表情もありません。だから、もっと深くておもしろい話のはずなのに、あるべき温度が伝わらない気がして。


だから、前田さんの過去のツイートを何年もさかのぼったり、ブログやnote、取材記事を読んだりして、自分を可能な限り前田さんに近づけます。「この言葉の裏には、どんな体験があるんだろう?」「前田さんは、どんな言葉を過去に使ってきた?」など、とにかく深掘りします。


その思考回路をもって表現にスパイスを入れてみたり、話を加えたりします。これを数カ所やるだけで、ぐっと深みが増すんです。


編集者の方々にとっては基本的なことだと思うのですが、そこを徹底的に意識してきましたね。


「デザインが絶対上手くなる方法」はなぜバズったか?

浜田:何回かやっていくうちに『デザインが絶対うまくなる方法』バズって前田が行く自体が知られるようになりましたね。


谷下:あの記事はすごい反響でしたね。まず、もととなった鹿児島トークイベントが前田デザイン室メンバーの間でも「これはすごい」と話題になっていて。



この回を担当してくれた砂糖塩さんも、書き起こしの時点で「これはすごい」と大興奮しながら書いてくれていました。


浜田:実は彼女は、これがはじめての編集だったんです。どうしたらよいのか分からないと相談を受けて、最初の方だけ書いて同じようにやってみてと伝えたら、いい感じでまとめてくれました。


谷下:最初に記事を読んだとき、これは確実に「読まれる」「神回になる」と思いました。まず、タイトルにものすごい力がある。王道ど真ん中で、読者が欲しているものそのもので。


この記事のタイトルは、トークイベントと全く同じものを使っていますよね。企画自体にも強いこだわりを感じましたがいかがでしょうか。


前田:地方でのトークイベントはこれが2回目だったんだけど、秋で土日となると各地でイベントが重なるから集客が大変で。だから、なんとしても有益情報にするために極端なコンテンツを入れた。「ぶっちゃけデザインは文字が9割」とか。集客しやすくするために振り切ったね

振り切った記事にするためのコツはあるのか?


浜田:よく記事はタイトルが命とかいいますし、私も日頃から書く仕事なので分かっているつもりでしたが、この記事はまさにタイトルの威力を思い知りました。もちろん中身もいいんだけど、タイトルが分かりやすくいいだけでこんなに変わるんだなと。


谷下:そこから、記事をアップする前にタイトルをすごく練るようになりましたね。


浜田:そうそう。だから以降は谷下さんがまず記事をあらかた作ってくれて、前田さんと私とで議論してあーでもない、こーでもないをたくさんやってタイトルを決めるようになったよね。


その甲斐あってか有料化してからも長く読まれるコンテンツになりました。


前田:この時は佐渡島さんの編集ブートキャンプで「記事はタイトルを先に書く」「振り切ったタイトルをつける」って習ったばっかりで、それを実践した。


浜田:それを聞いた時、驚きました。まずは中身を書いて後から付けがちなので、先にって発想がなかったです。


谷下:私もタイトルは最後かと思ってました。


前田:それって、なりゆきにしかならないから。


谷下:耳が痛いです…。確かに、振り切ったタイトルを先に決めてそれを軸にしてしまえば、文章もそもまま振り切った方向に合わせていけますよね。


独特な空気が印象的なバナーデザインはいかにして生まれたか?


浜田:前田が行くの目印となっているのは、たなかゆうりちゃんのイラストですよね。これはこのnoteのタイトルを『前田が行く』に決めたあたりでゆうりちゃんにお願いしようということになりました。確か前田さんからだったと思います。ちょうどその頃雑誌マエボンを作っていて、その中で彼女が描いた前田さんのイラストがすごく素敵だったんですよ。




前田:
のんびりしたゆるさ、不思議な空気感がとてもよかった。


浜田:
前田が行くのイラストを作るにあたって、意識していることはありますか?


田中:前田さんが「裸の大将」みたいな感じでとおっしゃっていて、内容も全国各地で行われたトークイベントの事なので、「旅感」を大切にしました。また、マエボンでのイラスト制作で、「かわいい!」「ほっこりする」という言葉をいただいたので、そのテイストを全面に出しました。

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(当初の4つのパターン案)


浜田:あたかみのあるイラストはもちろん、フォントもとても素敵です。有名ビジメス書の装丁を多数手がけた戸倉さんも褒めていましたよね。


前田:ゆうりちゃんの作ったフォントをはじめて見たとき、それが他にない、良い意味で流行にのっていない世界観で、さらに良いと思って。


前田:このフォントは、今回はじめて作ったの?


たなか:フォントはもともと前田デザイン室の岐阜合宿で作りかけてた名刺がありました。ウラサンで前田さんにバナーのラフを見てもらった時に名刺も渡したら「この方向いいんじゃない?」と言ってもらえました。


前田:あー!あの名刺か!

ユーリ名刺

(現在のフォントの元となった名刺)


たなか:
もともとはもっと丸い字でタイトルを書いていて。締まりがないところを変えていって、今の形になりました。


『前田が行く』が歩む道

浜田:これから、どうする?


谷下:このシリーズのコンセプトは「新時代を生きるデザイナーのための教科書」。だから、もっとたくさんの人に届けたいという思いはありますね。もっと読まれるように、それこそタイトルや目次をリライトしたり。


浜田:書籍とか別のものになると嬉しいよね。まだまだ長く読まれたい。


たなか:私はコンテンツの顔になるバナーを制作できてとても嬉しくてありがたいし、サロン内でもこのバナーで知っってくださった方もいらっしゃるので、これからも魅力的に見えるバナーを作っていきたいです。


前田:僕は、今後前デメンバーの誰かが「〇〇が行く」をやったらいいなって思ってる。「ユウリが行く」でもいいやん。


浜田:なるほど!


谷下:まさに、前デメンバーのブランド強化!


浜田:前田デザイン室のメンバーが自分でセミナーや講演をやるようになったら、それをスピンオフとして書いていくということですね。


前田:そう。


浜田:やっぱり前田さん、天才。


谷下:これからのメンバーの活躍と前田が行くの成長、楽しみです!


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(ZOOM座談会の様子)



▶︎▶︎前田が行く』マガジンはこちら


編集:谷下由佳
バナー:たなか
監修:前田高志浜田綾


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