「情熱高志」第12号 ー たかしのむかし(たかし“の”漫画 編) ー
このマガジンは、デザイナーから漫画家に転じた「まえだたかし」が記す、前田デザイン室限定コンテンツ「たかしの世界」に加筆修正し、再編集した密着ドキュメンタリーレポートですが、今回は特別編です。全2回でお届けします。前回に続く、後編です。
前編は、こちらです。
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自分の中で漫画という存在が”読む”ものから”描く”ものへと変わった。
そして、前田は言った。
「リアルの世界を震わせるような漫画を描きたいよね」
デザイナーから漫画家へ。
その覚悟の中で、彼が漫画家として目指す道とは。
彼だからこそ描くことのできる、漫画の世界とは。
自分の描きたい漫画がわかった。
ーーー今まで色々な漫画を読まれてきて、面白い漫画、好きな漫画、色々あったと思います。前田さん自身が描きたい漫画はどのようなものですか?
前田:今まではどんな路線でいきたいか聞かれても「そこはまだ決めてないです」って答えてたんですよ。
でも、漫画家として少しずつ動いていく中で、自分がどういうものを描きたいか、わかってきました。
ーーー考えるだけでなく、実際に手を動かすことで気づけたのですね。
前田:うん。自分が描いたことでもそうだし、色々な人の漫画を見ることで、自分のことがわかってきました。
それで「あー、やっぱり少年漫画やな」って自分自身、理解できましたね。
ーーー少年漫画ですか。それは幼い時から好きだったものを、自分でも生み出したい、っていうことなのですかね。
前田:んー。単純に好きというか、元々自分の中にあるものからじゃないと生まれてこないんですよね、漫画って。
僕が今まで感じたこと、つまり学生時代や会社員時代とか、今まで生きてきた中で体験したことからしか、「自分だけが描ける漫画」は生まれてこないんです。
説明が難しいんですけど、佐渡島さんがおっしゃるには「型から入っている」状態だったみたいです、僕がそれに気づくまでは…。
ーーー「型から入っている」とはどういうことですか?
前田:それまでの僕は「キン肉マン"みたいな”」「ジャンプ"みたいな”」漫画を作りたいって、言ってたんです。
つまり、何かモデルになるものがそもそもあって、言ってしまえばそれを無意識のうちにマネしたようなものを作ろうとしていたんですよね。
ただ、佐渡島さんが求めているもの、僕が目指すべきものは「僕にしか描けない漫画」だった。
ーーー前田さんだからこそのオリジナリティ、っていうことですかね?
前田:そうそう。体験したこととか考えていること、まずはそれを自分の中から世界に向けて出していくことが大事なんやな、って気づかされました。
出すことで普段、自分が何を感じているか、何に動かされているかが少しずつ自分でも見えてくるんですよ。
その中から編集がついて、設定とかを作っていけばいいって言ってもらったんです。
いきなり自分の漫画を描くっていうより、自分がどういうところに感じて、何を考えているのかっていうことを発信していく。
それから「自分にしか描けない漫画」を見つけられるといいんだ、と教えてもらいました。
ーーー自分自身の個性や感性に気づくところから始まるんですね。これまでに何か気づくことができたことは、ありましたか?
前田:僕、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年 監督:ロバート・ゼメキス)が大好きなんです。
コンテンツを作る上で、メッセージが伝わるエンターテインメントを目指したいなって思うんですよ。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいに、見終わったり、読み終わった後に、「自分で未来を切り開いていく」みたいな。
それを佐渡島さんに話したら、「それは漫画だけじゃなくて、色々なことに言えると思うよ」って教えてくれて。
ーーー前田さんが歩んできた人生だからこそ、伝えられるメッセージがある、と。
前田:これまでどんな人生だったかなって振り返ってみて、その上で何を伝えたいかを自分なりに考えてみたんですね。そうしたら分かったんです。
僕はこれまで、どんな人生でもまず受け入れて、その縁を自分の力で運命に変えてきた、って。
だから、それをメッセージとして伝わるようなコンテンツを作りたい、って考えられるようになりました。
そのために、自分の体験を脚色して、何らかのシーンに置き換えることができれば、読者に伝えられるんじゃないかな。
それをどんな漫画として生み出すのかは難しいんだけど、そんな気づきを得られたことは、佐渡島さんとお話しできたからこそだと思いますね。
僕は、何にだってなれる
ーーー佐渡島さんとの出会いもそうですが、これまでの色々な巡り合わせがあったからこそ、今の漫画家への挑戦がありますよね。
前田:今まで色々なことをやってましたからね。漫画以外のこともやってましたし。
ーーー漫画以外と言えば、弓道をやられていたんですよね。
前田:小学校の時はサッカーも少しやってましたよ、キャプテン翼の影響で。
弓道は高校の3年間ですね。高校で何か新しいことを始めようと思って。
他の部活は全国レベルで、とても初心者が入れるようなものじゃなかったんだけど、弓道だけはそこまでレベルが高くなかったんです。
ーーー弓道では、大学へ推薦入学の誘いもあったようですが、その道へは進もうと思わなかったのですか?
前田:うん。弓道の先生が「君たちはなんでもなれるじゃない。総理大臣にだってなれるじゃない」って言ってたんですよ。それを聞いて、先生は自分の人生を後悔してるんやと感じて。
だから、自分の好きなことやろうって、その時、思ったんです。
ーーーそれが美大進学に繋がり、漫画家への道に繋がっているんですね。
前田:絵や漫画はずっと好きで、ノートの端に描いてたりしてたけど、それを周りには言えなくて。
漫画家にはなりたかったけど、漫画を見せなあかんのが嫌やなーって思って漫画家はやめたんです。
でも、とりあえず美大に行こうって。
とにかく絵に関われればいいかなと思って、美大に行くことにしました。それが仕事として、デザインに繋がっていったんですよね。
ただデザインをやりながらも、漫画の可能性には惹かれていたんです。
作品一つから、自分の世界が広がって、グッズやアニメ、映画にもなったり、色んな人と繋がるじゃないですか。クリエイティブとして面白そうだなと。自分は漫画を描かないけど、プロデューサー的な感じで作りたいなと思ってました。
でも、やっぱり自分で描きたかったんですよね。それに改めて気づいて、正直に周りに向けて声に出して言うことができた。
だから、僕は自分の人生を後悔しないように、これから漫画を描いていこうと思います。
漫画との出会いから、これからの漫画への想いまで。
まえだたかしの漫画のルーツを、今回のインタビューで知ることができました。
幼い頃からの夢への挑戦。
困難に向かって自らの人生を動かす姿は、まさに漫画の主人公のようです。
今は予想もつかない困難が、これからの自分に次々と降りかかってくるかもしれません。
しかし、その困難を突破すればするほど、漫画の主人公は強くなっていくはずです。
漫画家・まえだたかし。
彼が一人の漫画家として、最高のストーリーの主人公となれるよう、私たち編集部はこれからも応援し続けます。
負けるな、たかし!
頑張れ、たかし!
描いて描いて、描きまくれ!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私たち「情熱高志」編集部は、これからも「漫画家 まえだたかし」に密着し、情熱をもって描く彼の姿を書き記していきます。
あなたも私たちとともに、彼のまんが道を見守っていきませんか?
「情熱高志」は、平成が終わっても続きます。
次回は、いよいよ令和時代を迎え、新たなスタートです。お楽しみに!