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才能とアイデアを育てる敏腕編集者

前田デザイン室の才能達を室長が掘り下げる「前田が訊く」企画。

第7弾は、フリーランスの編集者として活躍している“しげちゃん”こと重光 風歌(しげみつ ふうか)さんです。

「生きたデザイン」に出会って


前田
:前田デザイン室に入ったきっかけは?


重光:前田さんと仕事がしたいと思ってですね。


前田
:ありがとう。嬉しい。去年セミナーにも来てくれましたもんね。その時に初めて出会ったんだよね。

重光:そうですね。渋谷のセミナーに、前田さんに会いたくて行ったのが初めての機会でした。

前田:僕からするとしげちゃんは、ものすごくありがたいお客さんだったというか(笑)。セミナーって会場が静かになりがちだけど、しげちゃんはそんな中ですごくこっちを見て反応してくれた。

重光:緊張してましたもんね?

前田:東京でのセミナーがまだ2回目とかだったんだよね。だからそんな中であれだけ反応してくれたのは嬉しかったから覚えてる。それで、一緒に仕事をしたいと思ってくれたと。


重光
:そうですね。そもそも前田さんを知ったきっかけは、運営の浜田綾さんのブログなんです。ブログマーケッター・松原順一さんのコミュニティの中で浜田さんのブログを知って、その中のデザインが「生きてるな」って思ったんですよね。

前田:最初の接点は僕じゃなくて浜田さんなんだ。


浜田:浜田さんのブログの中で前田さんを知って「なにやら、不思議なパワーがあるな」と思って前田さんの作品をウォッチするようになりました。ちょうど前田さんのお仕事のスピードが早くなって、どのように仕事をするかを短期間で見る事ができて「なるほどなるほど」と思って。普通のデザイナーとの差を感じたと言うか「これがアートディレクターなんだな」と。

前田:そうなんだ。どこが違うって思ってくれたの?

重光:考えとか視点が圧倒的に違うな、と。それでFacebookで友達申請した時にメッセージを送りました。そうしたら「今度東京でセミナーやるので来てください」って仰ってくださって。これは「絶対行くべきだな」って自分の勘が働いて、セミナーに行くことにしました。もしセミナーに行っていなかったら、前田デザイン室にも入っていなかったと思います。


前田:すごいつながりだね。


重光:私、石橋を叩いて渡るタイプなので、自分が必要であるとか相手が必要としてくれてるっていう確信が持てなければ、簡単にコミュニティに入ることはしないんです。でも、前田デザイン室に対してはその確信を持てた。だから、入ることができたんです。

クリエイティブを求めて


前田
:仕事は何してるんだっけ?


重光:今はフリーランスの編集者をしてます。デザインは経験がないので、少しずつ勉強していければな、と。


前田
:編集者のフリーランスって結構いるんですか?


重光:結構いますね。出版社の編集の方から依頼をされることもあるし、あとは自分で企画を持ち込んで編集までやったり。やり方は色々です。


前田:じゃあ書籍とかもやってたの?雑誌とか。


重光:そうですね。新卒で入った会社が雑誌の出版社だったので。でも、そこではあまり仕事をさせてもらえなかったんですよ。当時の編集長は女の人には仕事を振らないって考えがあったみたいで。


前田
:あー、昔の慣習みたいなものですかね?


重光
:そうかも。そういうこともあって、単行本のベンチャー企業に転職しました。そこでは色んな印刷会社から仕様や見積書をもらって「この仕様だとこれくらいの金額がかかる」っていうのを調べたりして。写真集、刺繍、美術など、本当に色々なものを、箱を作るところから調べたので勉強になりましたね。


前田:それが前田デザイン室のクリエイティブ制作にも生きている感じなんだね。

重光:その会社では予算にあまりこだわらずに本を作る部門の仕事もやらせてもらえて、絵本だけど表紙が全部箔押しとか、普通では出来ないこともチャレンジさせてもらえたんです。「この仕様がいつか生きるだろう」っていう意味で。その経験は自分にとって大きかったです。


 編集者をしていても、ずっと文庫の編集部にいると、文庫の決まった仕様には詳しくなるんですけど、他の知識が身に付かない。でも私は決まったことだけじゃなくて、新しいもの、冒険するようなアイデアを出して行きたかったんです。


ちょうどインターネットが出始めた2000年くらいの時で、出版業界の景気が悪くなって来た時期でもあったし。自分で考えて本を作りたいと言う想いは強かったですね。

形にこだわらないアウトプットを


前田:具体的に前田デザイン室で何がしたい?本を出したいとか?

重光:それは全然思ってません(笑)

前田:え?全然?(笑)

重光:本は好きだけど、本に限らず何か自分の考えているものを形にできればいいなって。結果的にアウトプットが本という形が一番良いなら、今までの経験が活かせるからいいなとは思います。私の場合は頭の中にアイデアは結構あるものの、そこが磨かれていなくて。

前田:それで「1日1アイデア」をやってるって感じなんだ。



重光:そうです!色んな考え方を持っている人がいるので、その人たちと一緒に考える、色々な人の考えを取り入れながら良いものにしていく。その中で私はマネージャー的な立場になれたらいいなって。

(過去に作成した「焼印」もきっかけは重光さんのアイデアからでした)

「おもろ!たのし!いいな」のアイデア


前田:今出してくれてるアイデアについてちょっと思ってたんだけど、今やり方から入ってるやん?あれ、逆の方がいいかなと思ってて。

重光:逆?

前田:うん。やり方は書かずに「こういうの作りたい」みたいなのだけでいいかな(笑)。しげちゃんがやろうとしていることからすれば、やり方から発想をしない方がいい気がする。そうなると、1日1アイデアはめちゃくちゃしんどいねんけど(笑)。

重光:発想の仕方が分かんないんですけど、前田さんはどうやってるんですか?

前田:うーん、僕はどうしてるかな。こんなん世の中にあったら面白いかな、みたいな。相手の反応とか。こんなん今まで無かったなとか。シチュエーションを変えるとか対象の人を変えるとかじゃないかな。

重光:なんかもっと自由でいいんですね。

前田:うーん、めちゃくちゃでいいと思いますけどね。

重光:でもそれが、人を惹き付ければいいんですよね。

前田:うん。

重光:今までの本の仕事でも、実現できないものは出しても無駄みたいな考えに押さえつけられてきたから、実現性とか解決方法が前提のアイデアになっちゃうんですよね。自分でもそれはつまらないなって思ってました。

前田:うん。分かります、分かります。「こんなん出しても絶対売れへんやん」って、そういうのでもいいんですよ(笑)。そういうのを前田デザイン室でやりたいと思ってるんで。「なんかくだらねえなあ」みたいな。例えば僕がこの前思ったのは、ガチャガチャみたいなん作りたいなって。

重光:絶対売れないガチャガチャ(笑)

(まさか、それが後の『UN-CHA』へ繋がるとは・・・!)


才能を見つけるとワクワクが止まらない



重光
:私、クリエイターの人と働くとワクワクするなってところがあって。考え方が似ているなと思うのは、スタジオジブリの鈴木敏夫さん。

前田:あー、鈴木さん。宮崎駿さんの才能を発掘して、世に広めて出したのはあの人ですもんね。

重光:あの方も出版社出身、紙出身なので似たような考えがあるなって。色々なお話を聞くとワクワクしますよね。面白い人の横にぴったり貼り付いて「先生これ書いてください」「これ物語になりますよ」みたいな、その瞬間がたまらなく好きなんです。私、人の良いところを見つけたり、その人の特徴を掴むとか、正確にその人の輪郭を掴むみたいなものが好きですね。

前田:良いポイントを、情報を、たくさんの情報の中でいいところをピックアップしていくのが編集じゃないですか、多分。僕のイメージ(笑)。だからそれが編集者なんだなって感じがしましたね。

重光:人と人を繋げるのが好きだし、得意なのかも。今働いているシェアオフィスでも、人を繋げるボンドのようなこともしてますし。

前田:ボンドいいですね。名前「ボンド」にしたら良かったのに。

重光:やだやだ!(笑)


***


人の良いところを引き出す優しい心のアイデアウーマン、重光さん。
才能を発掘し繋げる編集者として、今後ますます活躍が期待されます!


聞き手・カバー画像デザイン:前田高志

テキスト・編集:大久保忠尚 

編集:タニシタユカ

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