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“マンガの発行部数=勝てるではない” 佐渡島&前田の考えるクリエイターの『勝てるデザイン』とは

SNSで気軽に自分の作品を発信できる今、いいねの数で、作品の勝ち負けを決めていませんか?

「勝てる」は人によって違う。そう話すのは、3/17に『勝てるデザイン』を出版した前田デザイン室室長の前田高志さん。

株式会社コルク代表・佐渡島庸平さんのYouTubeチャンネル『水曜日の佐渡島』で、「勝てる」の定義や、クリエイターに必要な「デザイン」について対談しました。

クリエイターにとっての『勝てるデザイン』とは何か、イベントの一部をレポートします。
全編聞きたい方は、ぜひ対談動画をご覧になってください!



対談者プロフィール

前田デザイン室室長・前田高志

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2018年、「おもろ、たのし、いいな」をコンセプトのオンラインコミュニティ、前田デザイン室を設立。 2018年、雑誌『マエボン』、2019年自身の集大成となる書籍『NASU本 前田高志のデザイン』を前田デザイン室として出版。 前田デザイン室でのコミュニテ作りの経験を活かし、2019年10月よりNASUの新事業としてコミュニティ事業を開始する。2021年3月17日に『勝てるデザイン』を幻冬舎から出版する。

株式会社コルク代表・佐渡島庸平さん

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1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。
週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。
著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。



“数字が取れれば勝ちなのか?”徒競走に順位がつかない時代のクリエイターの「勝てる」とは

佐渡島:毎週『水曜日の佐渡島』をやっていると、ありがたいことに1000人とか聞いてくれる。これって結構すごいことなんだよね。講演会で1000人聞いてくれるってめちゃくちゃすごいんだから。
なのにYouTubeと思うと、1000再生より1万再生、1万再生より10万再生の方が「勝ち」だって気づいたら思い込んじゃっているんだよね。

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佐渡島:本当はそうじゃない。孤独に創作活動をしている人が「あ、これでいいんだ」って自分の創作に立ち戻る。そうやって立ち戻ったクリエイターが50人のうち、2、3人が僕と一緒に仕事をしてくれたら、僕にとっては勝ちなんだよね。

なのにしょっちゅう再生回数がないとダメなんだという気持ちになって失敗しちゃうことがあるんだよね。

じゃあ漫画家にとっての勝てるって何だろう?

前田:僕も考えました。売れることなのか、愛を増すことなのか、捨てられないことなのか……。目的がやっぱり違いますよね。

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佐渡島:そうそう。漫画ってさ、単行本が何部売れているかわかるから、順位づけができちゃうんだよね。

発行部数で順位づけするのは、単行本が売れてる漫画家の方が、単行本が売れていない漫画家より偉いって価値観。年収の高いサラリーマンの方が、年収の低いサラリーマンより偉いって話と変わらないよね。

今の時代って、学校の徒競走で順位を決めないとか言い出したじゃないですか。10年、15年前に聞いた時は「いやいや、順位を決めたっていいじゃないか。徒競走まで順位をつけないのはおかしい」と思っていました。

でも、昨日の自分よりいいかどうかを比べるだけで、他の人と競わなくてもいいなとも考えるようになってきて、徒競走に順位をつけないに違和感がない時代が一気にきてる気がするんです。

そう考えると、漫画家1人1人が自分の「勝てる」の定義を言えるのって超重要ですよね。



“セミナーでの衝撃的な一言がキッカケ”前田さんの考える勝てる定義と、勝ち方

佐渡島:前田さんは、自分の「勝ち」をどう捉えていますか?

前田:やっぱり「心を掴む」というところにたどり着いていますね。

30歳前くらいにとあるデザイン関係のセミナーに参加したんです。その時に環境問題の事を語る人が呼ばれていて、「グラフィックデザイナーはゴミを作っている」って言われました。

その衝撃で落ち込んだりもしたんですけど、僕がデザインをやめたところでデザインは世の中からなくならないし、ゴミが減るわけでもない。

じゃあ捨てられないデザインを目指そう!と思ってずっとやってきた。捨てられないデザインというところが「勝てる」ところかもしれないですね。

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佐渡島:「捨てられない」って定義は超いいですね!

というのも、自分の経験上、世の中には知識が整理されている本がいっぱいあるわけですよ。知識の整理という点だったら、Wikipediaに負けちゃうかもしれない。つまり、知識だけで勝負するほうがゴミになっちゃう感覚がある。

じゃあどうしたらゴミにならないのか?僕は自分のエピソードを入れるようにしていて。自分のエピソードがあれば、少なくとも「佐渡島らしさ」は出る。

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作家の人に本を書いてもらう時も「あなたの過去の経験、あなた特有の経験にリアリティーがあれば、それだけで価値がある」と思っています。まあ個人的なエピソードの面白さで評価されるの、知識が評価されるより怖いんだけどね。

前田:まさに、この本は僕特有の経験ーーパーソナルなところを書いていますね。というか本の内容がほとんど僕の経験。だから、怖いです。「僕がこう思っている」が評価されるかどうか、怖い。怖いのめちゃくちゃ分かります。

僕の本の表紙、著者名がめちゃくちゃでかいじゃないですか。

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前田:著者名が大きいのは、パーソナルな僕のデザインの考え方って意味もあるのかなと捉えています。『勝てるデザイン 前田高志』。〇〇のデザインって本、実は過去にないんですよね。

佐渡島:いいじゃないですか!名乗りをあげてきましたね。

この本が、前田さんの主義主張をデザインではなく、言葉で伝えてくれるじゃないですか。

過去の作品の「こういう感じで作ってください」って言われるより、「この本の中に書いてあるこういう感じのことをしてほしい」って頼まれて作成する方が、デザイナー冥利に尽きません?

前田:いやーまさにそれも一つの狙いですね。今もデザイナー・前田高志の思想を知った人からの依頼でデザインをやらせてもらっています。

それが一番心地よくて一番いい仕事につながる、僕にとっての『勝てるデザイン』だと思います。

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“前田さんは在り方自体が勝てるデザイン化されている”伸びるクリエイターも持っている資質

佐渡島:前田さんのNASUでの仕事が始まりだしたところで、『勝てるデザイン』で自分の思想を表にバンと出す。その思想に集まってきたクライアントと、代表となるデザインを残していく。

将来、自分の知識を整理したデザインの本を出すって流れが前田さんにも待っているかもしれませんね。

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(勝てるデザインの中表紙:今までのクライアントと作った代表作)

前田:2冊目は実は動き出しているんですが、それはまた全然違くて。

佐渡島:へえ。今度はどんなコンセプトなんですか?

前田:鬼フィードバックって言って、デザインを鬼のようなラリーで磨いていくってやつですね。基本は前田デザイン室内でやっています。

(Twitter上で行われた鬼フィードバック)

佐渡島:フィードバックを、するのと受けるの、お互いにどうやったら上手くなりますかね?
僕、フィードバックを受ける上手さってあると思っているんですよ。自分の性格より、される側のタイプによってどんなフィードバックが放たれるか決まっていると思っていて。

クリエイターが伸びるためにはフィードバックされやすい体質になるのが第一歩だと思っているんですよね。

前田さん:なるほど。フィードバックしてもらうためにやっていることありますね。

僕はフィードバックをして欲しいなって人には、広告業界でトップクリエイターの人の話をしたり、自分が意識高くやっているんだってことを伝えてました。
「僕はもっと上にいきたいんです」ってそんなストレートには言っていないですけど、相手も知ってくれると思うので。

事前に伝えておくとあえて厳しいことを言ってくれたり、この人だったら言っていいかなとか思ってもらえる気がしますね。

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(前田さんの鬼フィードバックが始まったエピソード。)

前田:例えば佐渡島さんと同じ会社に言っているなら、佐渡島さんと同じ時間に会社に言って、一緒にいる時間を増やす、で、そこで自分の意識とかを伝えるかな。

佐渡島:移動時間合わせるはね、ありますね。出張の時に横に座る人、座らない人がいて、そういうのが5年後、10年後に効いてくる。

前田:この話、初めて佐渡島さんに会った時僕言いましたよ!

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佐渡島:しましたっけ?

前田:一緒にきてたインターンの子に対して、もったいないな〜って言った気がします。「2時間半も佐渡島さんを独占できる機会なんてないじゃない!」って。

遠慮しているのもあると思うんですけどね。僕も以前、みんなでご飯食べるときに佐渡島さんの真ん前が空いてて、なんで座らんのかな〜って思ったときがあります。……まあ僕は座りましたけどね。

佐渡島:そう考えると、前田さんは在り方自体が勝てるデザイン化されている気がします。

前田:すでに推薦文いただいてたのに、さらに推薦文をもらった感じ!ありがとうございます!

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(佐渡島さんがくださった推薦文)



漫画家に大事な色彩センスが学べる『勝てるデザイン』

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佐渡島:最後ちょっとだけ、本の目次も含めて紹介してもらっていいですか?

前田:まずこの本、400ページくらいあるんですよ。しかも初版特典ーーもうあんまりないと思うんですけど、僕の会社のNASUで作ったオリジナルフォントをプレゼントしてます。

あともう1つの目玉が、巻末にある勝てるワークって言うのが15個入ってまして。ぼく、大学受験で一浪するくらい、優秀じゃなかったんですよ。

その時にやっていた色彩センスを身につけるためにやっていたワークを載せさせてもらってます。この色彩ワークのおかげで、学年で2位を取ったこともあるんですよ。

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佐渡島:これはあれですね。デジタルで発表してくときって、モノクロからどんどんカラーになっていくから、じつは色彩学ばないといけないんだよね。

漫画家ってアシスタントのときに、トーンの削り方とかは教えてもらったりするけど、意外に色彩って漫画家本人が塗ってて、アシスタントに教えないんですよ。美大出身の人は少ないから、色彩について一回も学んだことがなくて、直感だけの方も多くて。

だから、このワークちょっとやるだけでもすごい漫画にも役立ちますね。

前田:いやめちゃくちゃおすすめです。絵の具で塗る行為の何がいいかっていうと、頭の中で想像してからつくるんですよ。パソコンだとそれができなかったりするから、経験値の量が、質がぜんぜん違うんですよね。

(色彩ワークの例)

佐渡島:一回のアウトプットの途中に起きてるインプットの量が多いんですね。
いやあもうね。色んな新人漫画家がいい絵を見つけてきて、そこから色をスポイトで取ってきて自分の絵に使うってしていて……。

再現性は少ないから、長期的には不安定だなと思っていたんです。

前田:うんうん。色って組み合わせなんです。だから隣り合っている色でどう感じるか、全体としてどう感じるかっていうのを塗りながらつかんでいく。この課題だけでも、この本の価値はあると思ってます。

佐渡島:やっぱり漫画家にも役立つ本だなぁって思うので、ぜひ本を買ってみてほしいです。では本日はありがとうございました!



ライター:じゅんじゅん
書き起こし:たまこ郡司しう
バナー作成:ひさこ
編集:浜田綾

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