オンラインサロンで雑誌を作ったら奇跡が起きた
自費出版の雑誌が、有名書店でベストセラー本の隣に並ぶ。夢みたいでしょ?でも、本当の話なんだ。ぼくらの作った雑誌「マエボン」がそれを証明した。この「奇跡」はいかにして起こったのか。その仕組みについて、今から話をする。
熱量の爆発が、リアルな場所まで届く時代
マエボンは今や、青山ブックセンター本店さんをはじめとして、銀座や代官山の蔦屋書店さんなど、数々の有名書店に置いてもらってる。しかも、落合陽一やホリエモン、箕輪厚介、前田裕二といった超大物ベストセラー本の隣に。
見ての通り、マエボンの表紙には内容の説明が一切ない。ただ、オリジナルキャラクターの「童心くん」がニヤリとしているだけ。
どうしてこんなおかしな雑誌が、こんなにすごい場所に置いてもらえたと思う?それは、オンラインサロンが作った雑誌だからなんだ。
噛み砕いて説明すると、こうだ。
そこにはまず、熱量の爆発があった。ぼくはクリエイターストレスって呼んでるんだけど、前田デザイン室を始めるきっかけになった悶々とした気持ち。「こんなの作りたいな」「でも、忙しいからまた今度にしよう」っていう。それがバンッとはじけた。
そこに「絶対に作り上げる」っていう全員の覚悟が加わって、異常な熱狂の渦になった。それがSNSで拡散されて、リアルな場所まで届いたんだ。前田デザイン室は当時100人。その熱量だけでもSNSはワァッとなるんだけど、それだけだとまだ小さい。
幻冬舎・箕輪厚介のオンラインサロンにぼくがいて、そこで得た信頼がこの熱量を一気に拡散してくれた。箕輪さんから、信頼のお裾分けをもらったんだ。ぼくや前田デザイン室だけの力だけじゃ、ここまで来られなかった。
オンラインサロンだから生まれたモノ作りの形
それはもう、異常な制作環境だった。
企画1カ月で、制作1カ月。この短期間で、やり切らなくちゃいけない。会社の同じ部屋にいても大変な作業を、だ。しかも、みんな本業や学校があるから作業時間もバラバラ。職種も年代も価値観もスキルもバラバラ。そんなメンバー40人が、一冊の本を作り上げる。しかも、全部オンラインでやり取りして。さらに、メンバーの9割が雑誌制作未経験者。編集長でさえ、雑誌の基本用語をイチから学んだんだ。
こんな異常な環境下でも、ぼくたちは制作を進めることができた。
どうしてだと思う?
みんなが、それまでの自分の枠を超えて挑戦したんだ。「データ間に合わない!」とかピンチの時も、何度もあって。でも、その度に助けてくれる人がいた。不思議と出てきてくれるんだ。ライターの人が足りなさすぎて、神プログラマーの人がまさかの文字起こしをしてくれたりね。
雑誌を作るチャンスって、そういう仕事に就かない限りなかなか無い。オンラインサロンの強みっていうのは、自分の枠を超えて、色んな体験ができるっていうところ。職種も、ライターじゃ無い人がライティングしていたり、デザインやったことない人がデザインしていたりする。
こういうのって、仕事じゃないからできること。会社のがんじがらめの仕事だったら、みんな倒れてしまうし、完成しなかった。
お金ではなく「信頼」が回る世界
オンラインサロンでは、お金じゃなくて「信頼」が回る。
さっきマエボンがリアル書店まで届いたのは、箕輪さんの信頼のお裾分けだって言ったのもそう。
マエボンで、ぼくたちは普通の雑誌と同じように広告枠にも挑戦したんだ。15万円を2枠。ポンポン売れる金額じゃない。しかもおまかせ広告で、細かい仕様は受けかねますって。だから本当に売れるかなっていうドキドキがめちゃくちゃあった。
売れるようになったきっかけは、青山ブックセンター本店の方が「東京では、当店でぜひ!」と言ってくれたこと。
その周囲のアンテナ感度の高い方々がツイート、リツイートしてくれて、流れが変わった。コピーライターの中村さんが買ってくれて、その後日レタッチャーの大谷さんも買ってくれて。
ぼくたちの作る広告の価値を、青ブクさんの信頼が広げてくれたんだ。
青ブクさんから始まって、次に銀座蔦屋書店さん、スタンダードブックストア心斎橋店さん、代官山蔦屋書店さん。あとは、Book Lab Tokyoさん。名古屋だとロフト内のジュンク堂さんまでが、マエボンを置いてくれるようになった(今も、取扱店は次々と拡大中)。
しかもこの度、大阪で一番大きな本屋さん、梅田紀伊國屋書店でも置いてもらえることになった。箕輪さんが「青山ブックセンターでは置いてるのに、なんで紀伊國屋に置かないの?」って言ってくれたらしい。かっこよすぎでしょ。箕輪編集室メンバーが箕輪さんの本の販促で紀伊国屋さんと密に関わっていて、それで関係性がすごく良かったから、その信頼をぼくたちが受け取れたんだ。
信頼がぐるーっと回って来た感じ。
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✔マエボンが生んだ、さらなる現象
✔唯一の「失敗」とは?
✔マエボンの事例から見る「未来の出版」とは?
さらなるマエボン現象を知りたい!という方は
ぜひお付き合い頂けると嬉しいです。
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新しい書店のカタチ
なんと、個人書店もできた。
前田デザイン室の1人に、冗談で「50冊買って」ってツイッターで言ったら「買います!」って、本当に買い取ってくれたんだ。
今彼は、個人で手売りしてくれてる。何の収益にもならないのに。なんだか悪くて、こっとんってあだ名の子だから「こっとん書店」ってロゴを作ってあげて。
特典で、ぼくが描いた漫画もつけますよってして。
メンバーも彼を応援したくてイラストをツイートしたり、販促用のバナーでこっとん書店を目立たせたり。
すると、彼からマエボンを買いたいという人がどんどん出てきた。リスクを取った分、こっとん君にはそうやって信頼が蓄積されて行くんだ。
さらにこの度、札幌のこうみよしはる君も個人書店に名乗りをあげてくれた。
ほんと、新しい時代が来たって感じ。
財産になる、出会い
マエボン作りを通して、ぼくたちの世界は広がった。ここで得た数々の出会いは間違いなく、ぼくらの財産になる。
インタビューをさせてもらった佐渡島さんなんて、もう3ヶ月くらい先までスケジュール埋まっている人。なのに「2週間後にインタビューさせて下さい」ってお願いしたら、速攻で「良いよ」って返事をくれて。で、その時間が朝の8時から。その時間しか取れなくて、ねじ込んでくれたらしい。
しかも、前田デザイン室の高校生クリエイターGO君のTシャツを、このインタビューのために着てきてくれて。前にぼくがGO君から買って、佐渡島さんにプレゼントしたやつ。優しくない?その後、NHKのドキュメンタリー「約束」に出演した時もこれを着て出てくれたんだ。
マエボンのクラウドファンディングも支援してくれて。でも、自分では「支援したよ」って全然言わないの。それでいて、さらっとクラファンの値段設計についてアドバイスまでしてくれる。
そうやって、インタビュー後も何かと気にかけてくれるんだ。
もう、I love サディ。
早速、新しいプロジェクトにつながったものもある。うまい棒だ。
ぼくと、GOくんがコラボして作ったオリジナルうまい棒をマエボンで紹介しているんだけど、その掲載許可を企業に取るという作業があって。
そしたらなんと、そこの社長が会いたいと声をかけてくれた。ぼくたちのことを「絶対おもしろいことやってる人だ」って思ってくれたみたい。
話してみたらすごい意気投合して「前田デザイン室でうまい棒を扱って何かやりましょう!」ってことになった。
すごく面白そうでしょ。
他にも、もう書ききれないくらいの出会いがあった。みなさんとは、マエボン後も素敵な関係が続いてる。
本当に、マエボンが紡いでくれた出会いは大きいんだ。
純粋な支え合いと、絆の成長
メンバー同士の絆も、ものすごく深まった。
経験の有無やスキルの差は当然あるから、その中で教えあったり。同じコーナーのデザイナーさんとライターさんで連携したり。クオリティを上げるために、Zoomっていうテレビ電話でやり取りしながら支え合ったんだ。
入稿データを作るための説明動画もわざわざ作って、マメでしょ。しかもBGMまでついた遊び心満載の。
仕事だと、納期やクオリティもあるからできる人が「もうやるわ!」ってなりがち。でも「今後のために入稿データ作るの自分でやってみる?」って声かけて、分からないところは教えてあげて。教えてもらった人は、今度は自分でできるようになるよね。
それに本当のデザイン会社なら「このページは俺がやる!」とか「なんなのあのデザイン、ヤバイだろ」ってなっちゃうこともあると思うんだ(ちょっと悲しいけど)。マエボンの場合は、本当にみんなただ楽しく純粋に「もっとこうした方がいいよ」ってきれいな感じがした。
どんなに追い込まれた場面でも、自然と笑いがこぼれて来てね。
過酷さすら、楽しむように。
本当の家族みたいだなって。そう思ったよ。
失敗しなかったことが、失敗
ぼくが今、振り返ってみて失敗と思うこと。
ちょっと出来すぎたかな。手前味噌なんだけど、出来すぎた。本当に、もっと失敗しても良かったと思ってるぐらいで。空きのページがあったら、勝手にぼくの絵を入れて「ここは間に合いませんでした」って書くぐらい。そこまでやっても良いと思ってたから。
そうしないと次が大変よ、これ。これを超えないといけないと思っちゃうでしょ。マエボン次は派手に失敗しようって言っていて。全部失敗作にしようかなって。ピントがボケてたり、ズレてたり、もうなんか印刷も全部ずれてはがれているとか(笑)。
これ面白くない?マエボン2は「失敗」がテーマ。
チャレンジして失敗したい。
すると、回を重ねるごとにどんどん良くなっていくっていう成長のストーリーもできるし。
オンラインサロンが作る未来の出版は、明るい
前田デザイン室は、これからもデザイン会社の真逆を行く。
新しい時代に向けて、サロン内で「前デ出版」というユニットも立ち上げた。まだ会社とかにはなってないけど、もしかしたらなるかもしれない。
今は「前田案内」というのを、春に向けて制作中。ぼくの作品集や考え方が全部入った本。本当は出版社から声が掛かるのを待ってたんだけど、一向に来なくて…。
いや、実を言うと話は1回来たんだ。でも、なかなか上手く行かなくて。オトナの事情がある中で、理想通りのものを出版するっていうのはなかなか難しいことなんだ。
だから、自分たちで勝手に出すことにした。
2019年も、CAMPFIREのコミュニティフェスティバルに向けて漫画本を作る。ジャンプみたいなやつ。ぼく、漫画家だからね。あと、マエボン2も。
モノ作りは本当に楽しい。色んな出会いもある。成長も。
オンラインサロンが作る未来の出版は、明るい。
ここでなら、奇跡だって起こせるんだ。
まとめ
手紙
みなさまへ
今日はご参加いただきありがとうございました。
マエボンを作ったことで前田デザイン室はいろんな人に知ってもらえるようになりました。同じ価値観をもった仲間が増えました。おもしろい人が自然と集まって来てくれる。これが出版か。
出版は誰でもできます。
コミュニティを巻き込むことでスケールして色んな人にリーチすることが可能です。ロマンのあるアクティビティです。 ただし、企画・デザイン・ライティング・編集・印刷・広報・販売・配送などとにかくやることが多いです。全てを自前でやらないといけないことがたくさんあるけれど、コミュニティで楽しく支えあえばいい。
雑誌をひとつ作るのは死ぬほど苦しい。
でも苦しみは時間とともに楽しみに変わる。
自分の作ったものは一生のポートフォリオです。自信になります。力になります。
ぼくら前田デザイン室が実証した。
「出版の力は大きい。」
みなさんも雑誌を作ろう。
あらためまして、今日参加してくださった皆様、この機会を作ってくださった銀座蔦屋書店さん、本当にありがとうございました。
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「俺みたいになるな」~41歳デザイナー、やっと見つけた最強の生き方~
テキスト:砂糖塩、杉本まゆ、杉元恵子
構成・編集:谷下由佳
編集長:谷下由佳
バナーデザイン:田中優里
タイトル:前田高志
アドバイス:浜田綾
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