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ぬけだ荘 住民座談会 〜行動デザイナーと妄想デザイナー。正反対のふたりが目指すもの〜

オンラインコミュニティ・前田デザイン室(通称:前デ)では、現状に悩みや不満を持つメンバーがそれぞれのモヤモヤから「ぬけだす」ことを目的とした社会実験的プロジェクトをおこなっています。

プロジェクト名は「ぬけだ荘」。

モヤモヤを抱えたメンバーがバーチャルアパートメント「ぬけだ荘」の仮想住民となり、互いの現状や取り組みを曝け出しながら、一歩一歩、着実に「ぬけだし(=目的達成)」に近づいていく。そのプロセスをドキュメンタリーに追う、社会実験プロジェクトです。

今回お話をうかがうのは「何者かになりたい」という共通点を持ち、ぬけだし活動をおこなってきた、ちりぺさんとかまちさん。

プロのデザイナーとして活躍されているおふたりが、ぬけだしたかったもの、目指すものとは?


(インタビュアー:リチャ)

座談会メンバープロフィール

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ちりぺ/DTPオペレーター(主にエディトリアルデザイン)
過去に約50冊の装丁と組版を担当。デザインの力をさらに磨くべく、前田デザイン室に参加。アイコンキャラのLINEスタンプ「きいろいかたまりの愉快な生活」発売中!
Twitternote/ぬけだしテーマ「やりたい事がなくなった自分からぬけだしたい」

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かまち/フリーランスデザイナー
Jリーグの東京ヴェルディをこよなく愛するベテラン。「デザインやイラレの知識ならこの人に聞け」的な存在。
Twitternote/ぬけだしテーマ「妄想だけからぬけだしたい」

動けない理由と、動かない理由

ーーぬけだ荘プロジェクトに入ったきっかけと、ご自身のテーマについて教えてください。

ちりぺ もっと成長したいけど、やりたいことがなくなっちゃったな〜と思っていたタイミングでぬけだ荘が始まったんです。だから「やりたい事がなくなった自分からぬけだしたい」をテーマにして参加しました。

20代、30代って人生の成長期なので、次から次へとやりたいことが見つかってたんですけ ど、ここ最近はやりたいこともやり尽くした感があって。
なんか停滞してたんですよね。

ーー成長するために、ぬけだ荘に入居されたんですね。向上心が素晴らしい……!

ちりぺ 挑戦することで成長してきた人生なので現状が物足りないというか、これでいいのかなと思っていて。

ぬけだ荘に参加して、いい刺激や気づきをもらえたらいいなっていうのが入居の理由ですね。

ーーこれまでどんな挑戦をされてきたんですか?

ちりぺ 大学を卒業して最初に就職したのが、ボディケアとかリフレクソロジーの会社だったんですけど、とくにそういう仕事がしたかったわけじゃなくて。

途中で「やっぱりデザインがやりたい!」と思って、スクールに通って技術をつけたんです。

今の会社に入って新聞のオペレーターをやりながら、8年くらい前から本の装丁デザインもするようになって、今に至るって感じです。

ーー素晴らしい。挑戦のたび成長して今があるんですね。

かまち 本の装丁うらやましいです!

私がぬけだ荘に参加した理由も、プロジェクトの告知ページに「ぬけだし活動をまとめた本を作る」って書いてあったからなので。
住人にならないと作れないと思って、ぬけだ荘に入りました。

ーーそうなんですね!じゃあ、ぬけだしテーマは参加してから決めた感じですか?

かまち そうなんです。テーマを決めて宣言note書いたり、活動したりしなきゃいけないのも入ってから知って(笑)。
そこで初めて「私は何をぬけだしたいんだろう」って考えて。それで決めたテーマが「妄想だけの自分からぬけだしたい」です。

ーー具体的にどんな妄想かって、聞いても大丈夫ですか?

かまち noteにも書いたことがあるんですけど、いっぱいあるんです。
雑誌のデザインもしたいし、動画編集もできるようになりたいし、作ったLINEスタンプは爆売れ……とか(笑)。

ーーすごくポジティブな妄想でいいですね!その妄想を叶えるために、これまでに何かチャレンジされたことはあったんですか?

かまち チャレンジしてきたことは……あんまりないかもしれないですね。
私は今のところ前デで最高年齢なんです。でもこれまでとくに不満もなかったし、目標もなくダラダラやってきて。
妄想しているだけでも楽しかったので、それで満足しているような感じでした。

ーーちりぺさんは動きたいけどやりたいことがなくて、かまちさんはやりたいことがあっても動かなかったという感じですね。同じグループだけど、正反対で面白いです。

かまち ずっと今の感じが続いてくのも悪くないと本気で思ってました。
でもぬけだ荘で頑張っている人たちを見て、本当にやりたいことを思い出したんです。
私、絵を描きたかったなって。

ぬけだ荘がくれた「自分に向き合うチャンス」

ーーぬけだしテーマが決まってからは、どんなぬけだし活動をされたんですか?

かまち 絵を描きたかったのを思い出したので、イラスト用のインスタを作りました。

毎日更新っていうのは難しいけど、iPadを毎日いじるようになっただけでも大きな変化だと思ってます。

買っただけでほとんど使ってなかったので(笑)

描きたかったもの描いたり、いろんな人のイラストを見たりして「私のイラスト、まだまだ全然ダメだな」と思いながらも頑張りました。
ぬけだ荘っていうきっかけがなかったら、ここまでやらなかったと思います。
 
ーー具体的に行動を起こしていて素晴らしいですね。ぬけだ荘プロジェクトに参加したことで「やらなきゃ」という気持ちになった感じでしょうか?

かまち やらなきゃというか、やりたくなった感じですね。ぬけだ荘メンバーのみんなが頑張ってるのに影響を受けました。
「金持ちデザイナーと貧乏デザイナー」というイベントで前田さんに興味を持って、勢いで前デに入ったんですけど……。
じつは私、もともとコミュニケーションがすごく苦手なんです。
働いていたのも小さい会社でデザイナーも2〜3人しかいなかったし、仕事もひとりで完結するものばかりだったから、コミュニケーションをとる必要がない環境にいたっていうのもあって。

ーーぬけだ荘に入って、コミュニケーションへの苦手意識ってなくなりましたか?

かまち いきなり得意になったわけではないですけど、チームを組んだり、誰かと話しながら進めたりっていうのが新鮮で楽しいです!

ほかの人の考え方とか目標を知るのも、いい刺激になってます。みんなのnoteとかを読んでいて、しっかり言語化できていてすごいなぁって思ったり。

言語化とか深掘りって私の人生になかった言葉なので、みんな毎日こんなにいろいろ考えて、それを言葉にして発信してるって本当にすごいことだなって思います。

ーー自分のやりたいことや考えを発信するのは、ちょっと勇気がいりますよね。

かまち だから今、この座談会もちょっと恥ずかしいんですよ(笑)。
でも、こうやって言語化して自分の考えを整理するのも、いい機会だなと思って。
せっかくだから参加してみました。

ーーたしかにインタビューって、これ以上ないくらい自分の考えを発信する機会ですよね(笑)。ちりぺさんはやりたいことがない自分からぬけだすために、どんな活動をされましたか?

ちりぺ 私はまず、やりたいことを見つけるために自己分析をやってみました。

前田さんも「クリエイティブって自分が何者かわからないと発揮できない。だから自己分析は大切」とおっしゃっていたので。

占いをやってみたり、やりたいことを100個書き出すワークをやってみたりして、引っかかったところを自分で深掘りしました。

ーーぬけだ荘の企画でやった「やりたいことや夢を100個書き出すワーク」ですか?

ちりぺ それです!めっちゃおしゃれなのに面白い人になりたい、旅人になりたい、エッセイストになりたい、キャラクターを作りたい、ライブハウス作りたい…とかバーッと書き出しました。

顔に筋肉つけたいとかもあったな(笑)。

やりたいことが見つかっていない状態だったので、半分くらいしか書けなかったんですけど。それでもいろいろ書いているうちに見えてきて。

ーー自分に改めて向き合うと、自分でも知らなかった願望とかも出てきますよね。

ちりぺ そうなんですよね。このとき一番初めに書いた「めっちゃおしゃれなのに面白い人になりたい」っていうのが、すごく自分のなかで引っかかって。

私がやりたいのはこれなのかもって気づきました。

思えば昔からずっとファッション誌を読むのが好きだったし、エディトリアルデザイン(雑誌や書籍など出版物に適用されるデザイン)が好きだったから、今は本の装丁デザインもしているし。

ーーちりぺさんのテーマが「やりたい事がない自分からぬけだしたい」だったから、もう目標達成してますね!スピード感がすごいです。やりたいことが見つかってからは、どんな活動をされたんですか?

ちりぺ まずはマンツーマンのファッション講座を受けました。
ファッション観とか似合う・似合わないとかを会話しながら深掘りして、ファッションのキーワードとかコンセプトを決めてもらえるんです。

その講座でもらったアドバイスとか、いただいたレポートとかを参考に自分でさらに深掘りして分析してみて。

そういう過程をツイートしてると前デのメンバーが反応してくれるので、そういう交流も楽しかったですね。

ーーぬけだすための挑戦って個人でやると孤独になりがちですけど、挑戦から交流が生まれるのもぬけだ荘の良さですね。

ちりぺ そうですね。そこから話が広がって「ファッショニスタトーク」というイベントもできたり。

ファッションはもともと好きだったけど、ぬけだし活動で改めて向き合ってから、しみじみ好きだなぁって思う機会が増えました。

トライアンドエラーで「なりたい自分」になっていく

ーーぬけだし活動をしてきて、現状としてどれくらいぬけだせていると思いますか?

ちりぺ 「めっちゃおしゃれなのに面白い人になりたい」っていう目標ができて「やりたい事がなくなった自分」からはぬけだせました。
そこに向かってぬけだし活動をしてきて、どれだけ達成できたかっていうと…40%くらいかな。

かまち 私はゼロです(笑)。目標を掲げて、ぬけだし活動も一応してみたけど、とくに現状は何も変わってないしなぁと思って。

ーー活動したんだからゼロってことは絶対ないですよ!

かまち うーん、そうか。でもまだまだ口ばかりのところがあって、あんまり動かないから……。低めにしておきます、3%にします(笑)。
でも私の場合、前デに入ったこと自体がぬけだし活動になっているんですよね。コミュニケーションが苦手で、何かやろうと思っても妄想で終わってばかりだったので。

ーーぬけだ荘プロジェクトは終了しますが、引き続きやっていきたいことや今後の目標はありますか?

かまち 母が地方にひとりで住んでいるので、いつかは私も一緒に暮らしながらデザインの仕事をしていきたいです。
東京はすごく好きなんですけど、地方ならでは、地方だからこそのデザインっていうのもすごい好きで。土地を生かしたモチーフのデザインとか。
全国に拠点を持って、それぞれの土地のデザインを手がけるデザイナーになりたいです。

ちりぺ 私はファッショニスタになるのが目標ですね。

かまち かっこいいー!

ちりぺ アホらしいですよね(笑)。みんな真面目な目標なのにすみませんって思ったりもするんですけど。

ファッションのことを考える時間が、今はすごく楽しいんです。好きな服、似合う服の区別も、まだちょっとわからないんですけど、知れば知るほど面白くて。

ーー知れば知るほどわからなくなるってこともありますよね。

ちりぺ 本当にそうですね。だからあんまり考えすぎず、これ好きだなぁと思ったらとりあえず買っちゃうことにしました(笑)。

それで似合わなかったとしても、いい経験だなと思うし、失敗しながらやっていくほうが、私には合っていると思うし。トライアンドエラーでファッショニスタを目指します!

かまち 私はとにかく、動かないから動きます(笑)。

ただ、私はすぐに興味があっちこっち行くので、よく「最初に言ってたことと違う!」みたいなことがあるんです。

どんどん脱線して、目標と違う場所に着いちゃったり。脱線していく自分も、結構好きだったりするんだけど(笑)。でもちゃんと、掲げた目標のところに行ける自分になりたいな。 

ーーときどき脱線しても、戻りつつチャレンジしていければいいですよね。

かまち そうですね。ただ「チャレンジするのに年齢は関係ない」ってよく聞くじゃないですか。

たしかにチャレンジはできるんですよ。でもそれを叶えるとか結果を出すとなると、やっぱりちょっと年齢って関係あると思っていて。

だから脱線はほどほどにして頑張りたいです(笑)。

ぬけだしパワーをくれた優しい交流

ーー最後に、ぬけだ荘プロジェクトの感想を聞かせてください。

ちりぺ ファッションが好きだってことに改めて気づけたのは、ぬけだ荘のおかげです。

自分に向き合う機会ってなかなかないので、本当にいいきっかけでしたね。
いろんな人のファッション情報を知るのも楽しくて、それでコミュニケーションが広がったり。

7年くらいずっと作りたかったLINEスタンプを作れたのも、みんなが後押ししてくれたおかげです。気にかけてくれる人の存在が本当に力になりました。

ぬけだ荘、前田デザイン室のみんなに感謝しています。

かまち 最初に前田デザイン室に入ったとき「私みたいな年齢の者が入ってよかったのか?」と思ってたんです。

まあ入っちゃったし、ひっそり楽しもうと思ってました。でも前デのみなさんは年齢関係なく自然に接してくれるので、本当に嬉しくて、楽しく活動させてもらってます。

思い切って入会してよかったなって、いつも思っていて…。あ、これだと前デの感想だな(笑)。

ぬけだ荘がなかったら自分の気持ちに向き合ったり、言語化とかもしてなかったと思います。自分がやりたいことをやってみる、とりあえず行動に移すっていう、いいきっかけになりました。

みんなのぬけだし活動にも刺激をもらえて、もっと頑張ろうって思えたし、感謝してます!

人生はいつだって成長期にできる!

何かに挑戦したかったけれど、やりたいことが見つからなかった、ちりぺさん。
やりたいことはあったけれど、考えるだけでも満足できていた、かまちさん。


ちりぺさんはやりたいことを見つけて動き始め、かまちさんは妄想を実現するために動き始めました。

常に挑戦していたい、成長していきたいという姿勢がとてもかっこいいですね。
人生はいつだって、自分次第で成長期にできる!

素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

聞き手 リチャ
原稿 なりり
バナーデザイン HAL
Special Thanks 高野隼、カナ、うえさま

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