カワグチマサミ & まえだたかし 漫画家対談【前編】
昨年の12月、前田デザイン室のZOOMイベントにて漫画家のカワグチマサミさんとまえだたかしさんが漫画対談を行いました。その時の対談の様子を再構成してお届けします。
「隙あらばイラストレーターになるためにゲームしました」の人ですね?(まえだ)
まえだ:カワグチさんに最初に会ったのは、2018年の3月くらいですかね?
カワグチ:そうですね。生の前田さんに会ったのは、それくらいに時期ですね。
まえだ:生のって(笑)。3月にクリエーターで集まった飲み会がきっかけですかね? 実は、その時の様子を少しだけ前田デザイン室内でライブ配信したのでアーカイブで動画が残っているはず。
(確かに、動画が残っていました。)
カワグチ:ええっ、そうなんですね。その時酔っていたので、あまり覚えていないなぁ(笑)。
まえだ:確か、僕が漫画の名前を間違えて言ってしまったような気がします。
カワグチ:そうそう。前田さんが「ああ、『隙あらばイラストレーターになるためにゲームしました』の人ですね」って(笑)。
(正解は、「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました。」)
「逆や!!」
って、初対面なのに前田さんにツッコミをいれました(笑)。
まえだ:(笑)。
あれはもう、完全に天然でした。まぁそんな出会いでしたね。
「パトロンになってくれ。私が成功したら、あなたも儲かるよ!」と言って結婚しました(カワグチ)
まえだ:カワグチさんは漫画家さんで、僕も最近漫画家に転身したので共通点があるのかなと思っています。小さい時に「絵が上手い」と言われてきた人は、漫画家に憧れた経験がみんなあるんじゃないかな。
カワグチ:デザイナーさんや建築の人とかに「漫画描きたかった」って言われたことがあるので、多いなぁと感じますね。
まえだ:「漫画家になりたかったけど、挫折した」とかね。
カワグチ:ですねー。でも私からすれば「いや、もっとすごい仕事してるやん!」って言いたくなります。
まえだ:いやぁ、漫画家が一番すごいよ。
カワグチ:ありがとうございます。でも、私はまだ無名ですから。
まえだ:いやいや、全然無名じゃないと思うけどね。カワグチさんは「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました」(以下「隙あら〜」)でブレイクしたの? どういう経歴なのかを知りたくて。あの漫画を読めばわかるけどね。
カワグチ:はい。「隙あら〜」に描いてある通りなんですけどね。漫画を描き出したのは2014年くらいからので、遅いんですよ。
まえだ:2014年ってことは、けっこう最近だよね。
カワグチ:はい。「漫画家になるのは難しそうだけど、イラストレーターならなれそうだな」と思っていました。学生の時からアメブロでブログを書いていて、フリーランスになって出産した後に趣味で日常の一コマを絵日記として描いていたんですよね。そしたら、コミックエッセイの依頼がいきなりきたんです。漫画を描くようになったのは、そこからですね。
まえだ:結婚したのはいつ?
カワグチ:2011年ですね。
まえだ:そのタイミングで会社をやめたってこと?
カワグチ:そうですね。2009か2010年くらいに会社をやめています。そこからフリーでがんばっている時期がありました。旦那さんとはパトロン的な感じで結婚しまして(笑)。
まえだ:パトロンって(笑)。
カワグチ:いや、本当に「パトロンになってくれ。私が成功したら、あなたも儲かるよ!」と言って結婚したんです(笑)。
まえだ:(笑)。
旦那さんはクリエイティブ系のお仕事をしているの?
カワグチ:建築の仕事をしています。現場の方で設計の計算とかしているみたいです。元々は、ゼネコンで大工さんや職人さんと作る側だったので。
まえだ:そうなんだ。じゃあ、コミックエッセイの依頼がきたときに「この仕事がやりたかったんだ!」って思ったの?
カワグチ:漫画の仕事は、ずっとやりたくて、営業もしていたんですけど依頼がこなかったんですよ。出産育児で2-3年はしっかり仕事ができなくて。営業しかけたブログを始めた頃に、声をかけていただきました。出産前の妊娠中に結構営業していたので、1.2年後に身を結びましたね。
まえだ:いろんな出版社に電話する営業をしていたってトークイベントしてたよね? あ、noteにも書いていたかな。
カワグチ:はい、noteですね。
まえだ:あとYouTubeでも見たような。
カワグチ:ああ、私がクリエーターの仲間と開催しているユニット「柿プロ」の1回目のイベントですね。
まえだ:あれ面白かったよ。前田デザイン室の人も見た方がいいと思う。営業の仕方参考になるし。
カワグチ:ゲスい話も全部しましたから(笑)。ちなみにあの動画は、だいぶカットしているんですよ。
まえだ:じゃあ実際は、もっとゲスかったんだ(笑)。
カワグチ:はい、とはいえ本当のことを話しただけなんですけど、周りからは「ゲスい」と言われました(笑)。
でもね、お金の話って本当は全然ゲスくないと思うんです。クリエイターとして生きていく上で大切なことですから。
高校時代に聞いた言葉が、二人の進路を決めた。
まえだ:漫画は小さい時から描きたかった?
カワグチ:とにかく絵を描いて生きていきたいと考えていました。
まえだ:一緒。
カワグチ:「好きなことだからやっていける」とバイト先の店長が言ってましたけど、休みがなくノイローゼ気味でした。
その時に「一生働かないといけないんだから好きな仕事をしないとしんどいよ」って言われました。私は隙あらばゲームをしたかったので「じゃあフリーランスになろうかな」と高校生ながら思いました(笑)。
「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました。」
第1話より一部引用
まえだ:「隙あらば」の言葉の選び方がおもしろいよね。
カワグチ:本当に絶え間なくゲームがしたいんです。
まえだ:僕も高校生の時に、先生の言葉がきっかけで絵の方向に進もうと決めたの。「君たちはいいなぁ。なんでもなれる。今からなら総理大臣にだってなれる可能性がある。」て言って。その先生がすごく後悔してそうな感じで言うの。
「NASU-note」
デザイナー前田ができるまで【高校生編】より一部引用
今から思えばその感じは演技だったのかもしれないけど(笑)。「もっと自由に職業ややりたいことを選んでいいんだよ」っていうメッセージなのかなって今はそう思う。そこで僕は「この人みたいになりたくない」と思った。
カワグチ:わかりますわぁ(笑)。
まえだ:僕は高校の時は弓道をやっていて、大学はスポーツ推薦で入れることが決まっていたんです。
カワグチ:すごい!モテそう。
まえだ:すごいよ。ハートに撃つよ!!
カワグチ:へぇ。
まえだ:へぇって(笑)。
でもその先生の言葉を受けて、スポーツ推薦で大学に行くのをやめようって決めた。母親はすごく反対したけど、「絵の大学に行く」って決めた。結果一浪したけど美大に進学した。だから高校の時に将来の進路を志したって僕と同じだなと。
学級問題になるような人を傷つける絵しか描けなかった(カワグチ)
まえだ:じゃあ、高校時代にイラストレーターになろうとして、そこからどうしたの?
カワグチ:私の場合は、人を傷つける絵しか描けなかったんです。学級問題になるくらい。
まえだ:ネガティブなところを強調しちゃうってこと?
カワグチ:そうなるのかな。
「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました。」
第1話より一部引用
カワグチ:だから芸大もみんなに止められて。そもそも芸大の学費は高いし、博打だなとも思ってしまったんです。イラストを使う広告や出版の業界の知識を勉強しようと思って大学は社会学部でマスコミの勉強をしていました。学費が安かったのもありますけど。
まえだ:そうなんだ。じゃあ大学の時点ではクリエイティブ系ではなかったけど、どこからそうなったの?
カワグチ:大学に入って、マスコミ業界で有名な落ち武者みたいな教授に出会いました。その教授が「漫画を描け」と言ってくれたり、専門学校を紹介してくれました。
その専門学校の個性的な先生たちが「イラストとデザインはセット」や「デザインの勉強して一生食べていける基礎を身につけなさい」とデザインについて教えてくれました。転職を繰り返しましたが、デザイン会社に就職しました。
まえだ:その辺は「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました」を読んでもらえれば具体的にわかるってことね。
カワグチ:そうですね(笑)。
まえだ:じゃあ漫画を描きたいっていつから思ってたの?
カワグチ:漫画はずっと描きたいと思っていました。小さいときから大好きでした。でも賞とかは獲ったことないです。
まえだ:賞って美術系の?美術の成績はよかった?
カワグチ:美術の成績はよかったけど、先生と仲良くしていたからです(笑)。掃除とかしてました。
まえだ:でも小学校のクラスの中で「絵が上手い」=まさみになってた?
カワグチ:「変な絵いつも描いているな」みたいな感じだったと思います。
まえだ:変な絵?どういうこと(笑)?何を描いていたの?
カワグチ:面白い人を見ると、顔を描きたくなるんです。虫っぽい先生だったら虫に見立てて描いたり。
まえだ:天才じゃない?それって。だって僕と箕輪さんのトークイベントの漫画見て衝撃受けたよ。掴み取るポイントがすごく面白かった。
カワグチ:ほんまですか?ちょっと大げさにしちゃうんですよね(笑)。
「隙あらばゲームしたくてイラストレーターになりました。」
箕輪厚介×前田高志「死ぬカス」トークイベントのレポ漫画より一部引用
まえだ:大げさではあるけど、あってる。僕と箕輪さんのテンションの差とか。素晴らしいよ。
「変人」って言われるのは「こんにちは」みたいなものです(カワグチ)
まえだ:カワグチさんの場合、漫画を見て漫画を描くよりも、独自のものを描くのが得意だったってことだよね。
カワグチ:そうなりますかね。そうだ、先日ホリエモンの漫画コンテストをやっていて、ネームまで考えてたのに時間がなくて出せなくて残念でした。「トリエモン」っていうホリエモンの顔をした人面鳥と女子大生の恋愛漫画を描く予定だったんです(笑)。
まえだ:(笑)。
発想が面白いなぁ。
変人って言われたことある?
カワグチ:変人なんてまだいいですよ。「こんにちは」みたいなものだと思ってます。中学生の時に先生から「星へ帰れ」って言われたこともありますから(笑)。
それがショックで、一番最初のブログのタイトルは「星に帰りたい」でした(笑)。そこでずっとデス絵を更新していました。
カワグチ:でも前田さんも変わってますよね。
まえだ:いやぁ、俺は普通だと思った。
カワグチ:そうかなぁ。普通じゃないと思います。ただ、なんかクリエーターの中では珍しいと思います。破天荒な人たちに好かれませんか?箕輪さんとか。
まえだ:そうかなー。別に箕輪さんに好かれているわけではいからね(笑)。
カワグチ:トークイベントはとても距離近かったじゃないですか。落ち着くんだと思いますよ。
カワグチ:私もそうなんだけど、突っ走るタイプの変わり者は落とし穴があったら落ちるというか。クリエイターの人には多い。前田さんは落ち着いているけど、秘めている感じの人にすっと惹かれる。前田デザイン室の人も前田さんのそういう魅力に惹かれていると思いますよ。
まえだ:ああ、それ言われるよ。「のんびりしているのに熱い」とか。
カワグチ:ギャップですね。そこがいいんだと思いますよ。
まえだ:そっか、そういうことだったんだ。嬉しい(笑)。
後編へ続きます。
後編は、漫画の話がメインになります。
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