前田が訊く_横ちゃん

「クリエイター」として前田デザイン室で力を試してみたかった

前田デザイン室の才能達を室長が掘り下げる「前田が訊く」企画。今回は7月の定例会で生対談が実現しました。

立候補してくれた2名のうち今回はフリーランスの動画クリエイターとして活躍している“横ちゃん”こと横山 将明 (よこやま まさあき)さん編をお届けします。


「クリエイター枠で入りたい」と決めていた

(写真右が横山さん)

前田:前田デザイン室に入ったきっかけを教えて。


横山:去年独立した際にTwitterを始めました。「独立したクリエイターはとりあえずTwitterをやっておくといい」という話を聞いたことがあったので。最初はTwitterのことを全然わかっていなかったから、デザイナーさんを見つけたらとりあえずフォローしてたんです。そうする中で前田さんを見つけてチェックしてました。マエディ(前田さんの愛称)、年齢も僕と同じなんですよね。


前田:そうなんだよね。


横山:だから最近タメ口にさせてもらってます(笑)。


前田:具体的にどういうツイート見てくれてたの?


横山:ロゴの制作過程を前田さんが書いてるブログだったかな。おじさんの顔のロゴだったような…。


前田:
ああ、「Father Log」のロゴだ!


横山:僕もデザイナーだけど、ロゴはあんまりやってこなかった。「ロゴを作る人の考え方を知れるからすごいなぁ」と思っていたんです。そうしているうちに前田さんが「前田デザイン室を作る」とツイートしていたので「これは面白そうだ!」と感じました。


前田:そうなんだ?嬉しいな。


横山:
でも1期の最初の10人には、人気すぎて入れなかったんですよ。

(3月1日当時の二人のやりとりツイートを発見!)

前田:そうだったん?数日後にアンバサダーを10名募集したやん?そこで入ろうとは思わなかったの?


横山:
はい、「クリエイター」として入りたかったんです。だから4月のクリエイター枠募集を待って入りました。
でも今の前田デザイン室の感じだと、クリエイターしかものを作れないって感じじゃないから、どっちでもよかったのかもしれない(笑)。だって現に今回の定例会でお披露目した「VIEW」のプロジェクトリーダーの小蕎さん、アンバサダーですもんね。


前田:
そうだよね(笑)。


横山:ただでも「クリエイターで入りたい」っていう意思は強かったから、それでよかったと思ってます。



前田:そういうの嬉しい!横ちゃんの言う通りで前田デザイン室ってクリエイターとアンバサダー分けて募集してるけど、実は違いがあんまりなくて。だけど今の横ちゃんみたいに明確に「作りたい!クリエイターとしてがんばりたい!」って人の気持ちを知りたくて分けてるの。心意気みたいな感じかな。


「インベスターZ」動画制作秘話

前田:前田デザイン室での横ちゃんの最近の話だと、コルクとコラボした「インベスターZ」企画で、ドラマの3話の放送に合わせた面白い動画作ってくれたやん?あれはどのくらいの時間で作れるの?



横山:
1時間です。


前田:めっちゃ早い!素材集めとか時間かかるんじゃないの?構成はふとした瞬間に思いつくわけ?


横山:
そうですね。この動画で言えば、朝シャワー浴びてる時に「今日金曜日だな。インベスターZのドラマの放送日や。」って思い出したんです。それと以前から「インベスターZ」登場人物の渡辺先輩のキャラクターが、ドラマだと女子になってたことが僕の中ではツボだった。だからどこかでネタにしたくて。そうしたら構想がぱっと思いついて。仕事もその時そこまで忙しくなかったから、動画を作りました。


前田:
すごい。


横山:いや、あれはでも動画の編集テクニック的に言えば、そこまで手は込んでないんです。頭とオチさえ決まってしまえば、あとはkindleを見ながら構成をその場で考えながら決めてました。ライブ感覚でやってましたね。途中でいいコマを見つけたら取り入れたから、最初に思い描いてたものとは違った仕上がりになったんですけどね。


前田:すごいなぁ。横ちゃんの動画で前作ってたやつ、コルクの佐渡島さんがおもしろいって言ってたよ。この動画も三田先生のアカウントからリツイートされてたよね。



横山:はい!おかげさまで結構評判がいいんです。嬉しいですね。


フリーランス必見!クラウドソーシング活用法

前田:普段はどういう仕事をしてるの?


横山:
圧倒的に動画ですね。


動画8割、グラフィック1.5割、0.5割謎の仕事です。


前田:
謎ってなに(笑)?


横山:オンラインで動画の先生したり、パワーポイントの資料作ったりしてます。


前田:そうなんや。どうやって集客してるの?


横山:住んでいるのが田舎だから営業って言っても大変で、クラウドソーシングメインです。クラウドソーシングは安いからよくないって思ってるデザイナーさん多いと思うんですよ。でも実際は案件次第なんですよね。高い案件もある。


前田:でもさ、クラウドソーシングのコンペって大変じゃない?


横山:大変ですよ。最初クラウドソーシング使い始めた頃は僕もコンペやってました。実績が欲しかったから、がんばってクラウドソーシング内の「プロ認定」に選ばれたんです。そこからはコンペほとんどやめました。そのあとは「プロジェクト」って方式があるので、そればっかりですね。プロジェクトは固定報酬なんです。


前田:
「プロ認定」されないとプロジェクトはできないの?


横山:いえ、プロ認定されてなくてもプロジェクトはできます。ただ認定されているほうが実績があるから仕事を取りやすいんです。
あとプロジェクトには報酬が安い案件ももちろんあるけど、そういうのは選ばないようにしています。「この値段以上じゃないとやりません」って提示してる。だからクラウドソーシングも使い方次第だと思ってます。


前田:そっか、それいい話聞けたかも。フリーランスになりたての人役立つと思うねん。デザイナーがクラウドソーシングを利用する=コンペのイメージだったから。それだけじゃないんやね。

親父の言葉がきっかけで仏具の仕事へ

前田:そもそもなんで動画作るようになったの?確か実家の仏具屋さんを手伝ってたんじゃなかったっけ?


横山:そうです。僕美大卒とかじゃないけど、アメリカに留学してるときデジタルハリウッドで動画や3Dの技術を学んだんです。AftereffectsやPremiereなど動画ソフトのことを知って、それで自分には動画編集があってるって気づきました。

帰国したあとは、不景気も合間ってか関西圏だとなかなか未経験でデザインの仕事ができるところってなかったんです。京都にあったゲームの下請け会社に就職しようかなって思った。でも時給800円くらいだったんですよ。「うーん。時給800円はローソンより安いやん。」って思って。

親父は、お寺の仏具に色を塗ったりする仏具彩色という仕事をやってたんですが、その時「お前800円で仕事するくらいなら仏具彩色の仕事手伝え!」って言われて。だから僕も「800円で働くくらいならやるわ!」って感じで手伝うようになりました。


前田:
仏具の仕事は、そこではじめてだったんや。


横山:そうです。継ごうと思ってやったわけじゃない。でも親父と一緒にお寺に行って仕事をするとクリエイター魂ってやつですかね、意外と楽しかったんです。昔はなんとも思わなかったのに。
具体的な仕事内容を言うと本堂の古くなった部分を修復したり、仏具に色を塗ります。お寺の修復とかリニューアルって100年単位でやるんです。受ける時も年単位でした。


前田:
そうなんや。じゃあ、僕の持ってるメタリック大仏の置物壊れたら、横ちゃんに修復してもらうわ、よろしく!


横山:(笑)


(心の)パンツを脱ぐ!動画を作るようになった理由


前田:それでどこから動画になるわけ?気になる。


横山:あぁ、そうですよね。
………僕もパンツ脱ぎますわ!
(「パンツを脱ぐ」=ありのままをさらけ出すの意味。田端信太郎著『ブランド人になれ!』参照)


横山:
このまま仏具の仕事を継いでもいいかな?って思った時期もありました。でも不景気の波がやってきた。お寺って檀家さんからの寄付で成り立って、不景気だと檀家さんが減っちゃうんですよね。すると修復もなくなる。それでこれ以上実家の仕事をやっててもしんどいって流れになりました。


前田:
それで?


横山:親父にも仕事探せって言われて。30歳の時くらいです。デザインの仕事をしたかったけど、就職先を探すのに苦労しました。デザイン会社で就職した経験がなかったから。


前田:デジタルハリウッドで学んだ経験あるのに?


横山:そうですね。学んだ経験はあってもブランクがありすぎるし、仕事の実績はないから。今みたいにTwitterで情報発信して仕事とるってやりかたもなかったですしね。そんな時、これ参考にしてもらったらいいけど、いや、よくないかな…。2チャンネルの書き込みで「フォトショップ使えたら、夜の世界では神扱いされる」ってことを知ったんです。


前田:ほう。


横山:僕滋賀県に住んでいて、滋賀には雄琴っていう歓楽街があるんですよ。あぁ………。これ今まで話してこなかったのになぁ。


前田:noteで記事になるけどいいの?



横山:いいです。そしたらやっぱり夜の世界では動画制作とかフォトショップとかものすごい需要があったんです。就職先も見つかって、そこで働く女の子たちのプロモーションビデオを撮ったりWEBページ作ったりしてました。


前田:面白そう。え?裸とかあるの?


横山:(笑)。裸はないですよ。ナイトビジネス界ってみなさんが思ってる以上にWEBの競争が激しいんですよ。そこで集客できるかにかかってますから。だから下手な話WEBの最先端を行ってたりするんですよ。だから最新技術を知れたり、競争の激しい中でやれて、ある意味面白かったです。
でも……。また初めて話すことなんだけど、勤めていた会社にいろいろあって業務停止になったんです。


前田:ええ!


横山:就職して3年くらいの時です。「そろそろやばい」って噂は会社内でもあったけど、まさかの事態でした。それで再就職を余儀なくされました。
次はパチンコの会社に就職しました。そこでは看板とかpopとかの仕事をやってましたね。でもそこも1年くらいでやめて。
次は携帯ショップの代理店です、その時37歳くらいでした。そこでチラシとかのデザインを3年くらいやってたかな。この会社に就職したときから「40歳になったら独立しよう」って決めていたんです。


前田:チラシってことは、印刷物もやってたんやね。


横山:そうですね。そこでDTP系を覚えました。だから僕学校ではあまりデザインを習ってないんです。


前田:30歳くらいから実践で一気に覚えたんやね。横ちゃんの話、ストーリーがあっていいね。


横山:身近な人以外では初めて話しました。


前田:でもさ、そういう経験は人として厚みが出てると思うんだよね。


横山:はい。美大出て、デザイン会社行ってっていう王道コースは歩んでないんだけど…。


前田:あんまり関係ないよ。よくそう言う人いるけどね。横ちゃんのスピード感とか対応力って実践で積み上げてきたものなんだなってよくわかった。すぐ対応できる柔軟性があるもん。


横山:
それだけひどい目にあってきたんです(笑)。


難しいことをわかりやすく伝える動画コンテンツを作りたい!

前田:今後やりたいことはある?


横山:教育系に興味があります。小学生って例えば分数の計算でつまずく子多いはずなんだけど、あれは教え方の問題だと僕は思うんです。そういうのを動画にしてはどうかなと。そしてそれをコンテンツにして発信する。そうして受注じゃなくて自分から仕事が作れたらいいなと思ってます。

前田デザイン室でやってるフリーランスの税金解説シリーズだってそう。


僕、1年前に実際つまずきましたから。3月で仕事もいそがしいのに確定申告で大変でした。でもフリーランスなら必ず必要になることですしね。そんな風に難しいものを動画で説明してわかりやすくしたいなって思ってます。


前田デザイン室では愉快な動画を作る人としてすっかり定着した横山さん。他には、こんなやってみたいこともあるようです。

今後がますます楽しみな動画クリエイターさんです。


■横山将明 さん

Twitter:https://twitter.com/Pankish21

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聞き手・カバー画像デザイン:前田 高志

テキスト・編集:浜田 綾

写真:木村 駿生

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